ゼロから始める「株探」の歩き方 ― (10)損をしたくないなら、売買タイミングをチャートで分析しよう

特集
2019年12月13日 10時30分


「欲に負けずにチャートで機械的な売買を目指す!」

横山利香(ファイナンシャルプランナー、テクニカルアナリスト)

◆さまざまなオシレーター系チャート

「出来高」の右横には「カイリ率」があります。8回目の「大化け期待の有望成長銘柄をチャートで探そう」でカイリ率については簡単に解説しました。カイリ率は「移動平均カイリ率」のことで、チャートは折れ線で表示されます。

株価は一般的に、移動平均線に引き寄せられるように動く習性があります。そのため、株価が移動平均線から上下どちらかにカイリしたら、再び移動平均線に引き寄せられて動くことが多くみられます。移動平均カイリ率は、株価が移動平均線からどの程度離れているかを数値化して表したチャートです。つまり、移動平均線からどの程度離れているかを確認することで、株が買われ過ぎか、売られ過ぎかを分析するのです。

図2 買われすぎ・売られすぎの尺度となる「カイリ率」

買われすぎ・売られすぎの尺度となる「カイリ率」

「株探」の多機能チャートでは、日足チャートの場合には25日移動平均線、週足チャートの場合は13週移動平均線という具合に、上段のチャートで「赤色」で描かれている移動平均線をカイリ率の算出に利用しています。

なお、8回目でご説明しましたが、個別銘柄の「基本情報」のページでは、カイリ率は「目先 5日線」「短期 25日線」「中期 75日線」「長期 200日線」のそれぞれについて株価トレンドとともに記載されているので、投資スタイルに応じて使い分けることができます。

移動平均線カイリ率の数値は、「0%」を中心に上にプラス、下にマイナスで表示されます。0%よりプラスであれば、上昇基調で地合いが良いと考えられ、反対にマイナスであれば下落基調で地合いが悪いと考えることができます。カイリ率がプラスになってその数値が大きくなればなるほど株価は買われ過ぎと考えることができ、いずれはその状態が修正され、移動平均線に吸い寄せられて下落することになります。反対に、マイナスになってマイナスの数値が大きくなればなるほど株価は売られ過ぎと考えられ、いずれは移動平均線に吸い寄せられて上昇することになります。

一般的に、カイリ率は5%に近づくと株価は調整局面への転換に注意する必要があり、10%に近くなると買われすぎで天井が近いとされています。反対に、マイナス5%に近づくと株価は安値圏にあり反発が意識されるようになり、マイナス10%に近くなると売られすぎで底打ちが近いとされます。

ただし、これらは一般的な目安であり、銘柄によって天底で表れるカイリ率の数値は異なります。たとえば、株式市場が悲観的になり総売りの状態になれば、数値に関係なく売られることもあります。参考情報として、過去の天底の位置とカイリ率のプラス、マイナスそれぞれのピークの水準なども確認しておくとよいでしょう。

株価は上がれば下がり、下がれば上がるものです。この株価の習性を売買タイミングの判断に活かすことで、高値掴みを避けることができるようになりますから、必ず確認するようにしましょう。

次が「MACD(マックディー)」です。MACDは「Moving Average Convergence and Divergence」の略で、移動平均収束拡散指標とも言われます。MACDは2本の線で構成されていて、指数平滑移動平均が使われています。指数平滑移動平均は、過去の株価よりも現在の株価の方が影響力が高いだろうと考えて、直近の株価に重きを置いて計算したものです。短期と長期の指数平滑移動平均を使って計算されるのがMACD、それを移動平均したものがシグナルです。このMACDとシグナルの2本の線の位置で過熱感を見たり、クロスするタイミングで売り時や買い時を分析したり、2本の線の方向性を見ることで相場の強弱を判断することができます。

チャートをご覧いただくと、青色の線のMACDが先に動き、その後を追いかけるように緑色の線のシグナルが遅れて動きます。移動平均線と同じく、MACDがシグナルを下から上に突き抜けると「ゴールデンクロス」で買いサインになり、反対にMACDがシグナルを上から下に突き抜けると「デッドクロス」で売りサインになります。

図3 投資家に人気のオシレーター系チャート「MACD」

投資家に人気のオシレーター系チャート「MACD」

また、中央値をゼロ(0)とし、「ゼロライン」と呼びます。ゼロラインよりも上にMACDがある場合は株価は買われすぎ、下にある場合は株価は売られすぎと考えられています。さらに、MACDとシグナルの離れ具合(MACD-シグナル)を棒グラフで表示したものを「ヒストグラム」と呼びます。ヒストグラムが大きいほど2本の線が離れていること表しますので、カイリの確認に利用することができます。プラス圏にあるヒストグラムがピークを打ってゼロラインに近づけばデッドクロスが接近していることを意味し、逆にマイナス圏にあるヒストグラムが底を打ってゼロラインに近づけばゴールデンクロスの接近を意味します。ヒストグラムはトレンドの転換をわかりやすく視覚化したものです。

MACDでは、「ダイバージェンス」と呼ばれる現象にも注意する必要があります。簡単にいうとMACDは通常、株価が上昇すれば上昇傾向になりますが、株価と逆行するようにMACDが反対の方向に動くことがあります。この現象を「ダイバージェンス」と言います。

たとえば、株価が下落しているにもかかわらず、MACDが逆行して上昇する場合があります。これは直近の株価が安い状態が続いているために起こる現象で、一時的に反発して上昇する可能性もあります。逆に株価が上昇しているのに、MACDが逆行して下落する場合も同様です。ただし、ここでは詳しく述べませんが、ダイバージェンスにはいくつかのパターンがあり、それを見極めるのは初心者には難しいでしょう。また、ダイバージェンスが発生したからといって、天井打ちや底打ちが確定するわけではありませんから、その点には注意が必要です。

次ページ:パフォーマンスの確認も比較チャートなら簡単

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