ゼロから始める「株探」の歩き方 ― (32)総悲観の時も、熱狂に包まれた時も、株価は本来の企業価値を基準に動いている【市場マップ】

特集
2020年11月27日 14時10分

「ターゲットプライス」をトレードに活かそう

横山利香(ファイナンシャルプランナー、テクニカルアナリスト)

◆PER分布マップ、収益力を基に割高・割安を判断する

さて、「市場マップ」の「バリュー分布」では、「PER」「PBR」「配当利回り」の3つの項目が緑色で記載されています。ご覧になりたい項目をクリックすると反転し、白地と緑色の文字による表示に変わります。なお、「市場マップ」は終値ベースで提供されていますので、立会時間中は前営業日の姿を表したものとなっていることには注意が必要です。当日のデータは引け後に反映されますので、「市場マップ」のタイトル下にある「○年○月○日」の日付は必ず確認するようにしましょう。

まず「PER」の項目をクリックしてみましょう。「PER」は「Price Earnings Ratio」の略称で株価収益率を意味します。企業の収益力を基に株価の割高・割安性を分析する指標であり、後述するPBRや配当利回りとともに最も一般的に使われている投資尺度の1つです。PERは「株価÷1株利益」で計算し、単位は倍となります。計算式を見ておわかりのように、株価が1株利益の何倍であるのかを表します。一般にPERの値が大きければ大きいほど割高、小さければ小さいほど割安とされます。また、PERは1株利益や株価の水準によって常に変動するということを理解しておきましょう。

図3 8段階に色分けされた「市場マップ」のPER分布マップ

【タイトル】

PERの分布マップの上には、左端の「水産・農林」から、右端の「サービス」まで業種が並んでいます。業種名の赤色、青色はその業種別指数の上昇(赤)、下落(青)を表します。業種名の上にある「C」のアイコンをクリックすると、業種別指数のチャートが表示され、その業種がどのような推移を辿ってきたのかを確認できます。業種名をクリックすると、その業種の構成銘柄が現在どのような状態であるのかを一覧でチェックすることもできます。業種名の下にあるマップの棒状のエリアは、その業種に属する銘柄の株価指標の水準を表しています。これは「バリュー分布」の他の項目である「PBR」「配当利回り」でも共通しています。

PERの分布マップでは、PERに着目して各業種にどれだけ割高(割安)な銘柄が分布しているのかが一目でわかるように工夫されています。PERが割安の「5倍以下」から割高の「30倍以上」まで、濃い緑色から濃い黄色の8段階で濃淡をつけて色分けしています。緑(割安)はPERの数値が小さくなるほど濃くなり、黄色(割高)は数値が大きくなるほど濃くなります。

PERの分布マップ内の緑色や黄色の小さな四角形の上にマウスのポインタを移動すると、業種と市場、コード番号、銘柄名、株価、上昇・下落率、PERの値をポップアップウインドウで確認することができます(図4、ポップアップウインドウで表示される内容は市場マップの各項目によって若干異なります)。1つ1つの小さな四角が1つの銘柄に該当するわけです。この四角をそのままクリックすると、個別銘柄の「基本情報」のページに移動することもできます。

図4 PER分布マップのポップアップウィンドウ

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なお、グラフ中の赤い「×」は最終赤字を、グレーは業績予想が非開示であることを意味しています。「証券・商品先物」のセクターは、もともと経済情勢や相場環境など不確実性のある業種であるため業績予想を開示していない企業が多いのですが、2020年は新型コロナウイルスの影響を受けて業績の見通しが立てにくいこともあって他の業種でもグレー(業績予想が非開示)の企業が目立っています。

PERが低いほど株式益回り(PERの逆数)は高くなり、PERが低いほど期待できるリターンは大きくなります。PERの分布マップを見ると、業種によって緑が多い割安な業種と、黄色が多い割高な業種があることがわかります。では、PERの高い(割高な)業種を避けてPERの低い(割安な)業種に投資すればよいのかというと、話はそれほど単純ではありません。成長期待の高い業種や業態はPERが高めである傾向があります。テック企業やバイオテクノロジー関連などはその代表的なものでしょう。一方、成熟した業種や業態では投資家の成長期待は落ち着いたものとなり、PERは低めとなる傾向があります。このため、PERを用いる際には業種間で単純比較するよりも、一般的には業種内の同業他社と比較して割高、割安を判断します。PERは15倍以下が一般に割安とされていますが、このように業種によって基準が異なってくることには注意が必要です。

投資先を選別する際には、値上がりする可能性が高そうな銘柄を探すわけですから、企業が持つ収益力を基に割安な水準にある銘柄を選ぶことになります。市場マップでは業種ごとのPERの分布状況を押さえ、そのなかでどの銘柄が割高であるのか、割安な水準であるのかを一目で把握できますので、銘柄探しに活用することができます。

なお、個人投資家によっては得意とするマーケットが異なるでしょうから、左上に表示されている「東証1部」「2部市場」「新興市場」「全銘柄」で得意とする市場を選択した方がよいでしょう。

PER、PBR、配当利回りの詳細については、「(6)有望株発掘は業績評価が決め手!」で詳しく解説していますので参照してください。

次ページ:PBR分布マップ、純資産を基に割高・割安を判断する

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