横山利香「令和時代の稼ぎたい人の超実践! 株式投資術」―(23)下降・横ばいトレンドでのエントリーポイントと売買手法
◆下降トレンドでの基本戦略は「短期逆張り」
まずはトレンドについておさらいします。株価は常に上げ下げを繰り返しています。上昇するのか、それとも下落するのか、あるいは横ばいでもみ合いながら動くのか、株価が動く方向性のことを「トレンド」と呼びます。株価の方向性は通常、「上昇トレンド」「下降トレンド」「横ばいトレンド」の3つに分けられます。実際に売買する時には、株価がこの3つのトレンドのどれに当てはまるのかをまず考えて、そのトレンドに合わせた売買手法をとっていくことになります。今回は3つの中から「下降トレンド」を中心にみていきます。
株価が値下がりしていく下降トレンドの場合には、右肩下がりの動きが継続します。ただ、下降トレンドが発生している時に一番悩ましいことは、時々上昇を挟みながらも、大きな流れとしては下落していくことです。時々挟む上昇が大きければ大きいほど、「もしかして株価の下落は終わって上昇に変わったのかな?」などと考えてしまうものです。実際、先ほどの日経平均株価のチャートを見ても、時々上昇を挟みながら全体としては右肩下がりの推移を続けていたことがわかります。
このように株価が下落している途中で時々挟んでくる上昇のことを「リバウンド上昇」といいます。せっかくダイエットしたのにリバウンドして元に戻ってしまうのと同じで、せっかく上昇したけど、下落して元の流れに戻ってしまう動きを表しています。
このようなリバウンド上昇の場合には、「今は上昇しているけど、また下落して元の株価に戻ってくるのだから、短期の上昇で利益を確定しよう」という考え方になります。つまり、下降トレンドが生じている時には、リバウンド上昇しか期待できないので、トレンドに逆らって株を買ったら、短期で利益確定する「逆張り戦略」が値上がり益を狙える取引手法になります。
では、このリバウンド上昇と逆張り戦略を踏まえて、日経平均株価のチャートをもう一度見てみましょう。
図2 日経平均株価 日足
日経平均株価は、2021年9月14日に3万0795円まで上昇し、およそ31年ぶりの高値を付けました。その後もさらに上昇するかと思われましたが、11月に2万9960円、22年1月に2万9388円、2月に2万7880円という風に高値を切り下げて下落しています。
このように高値を切り下げて下落している場合には、下降トレンドが発生していると考えられます。そのため、21年10月安値の2万7293円で買ったら11月高値の2万9960円で、12月安値の2万7588円で買ったら22年1月高値の2万9388円で、1月安値の2万6044円で買ったら2月の高値2万7880円で売るという売買を行わなければなりません。もちろん、リバウンド上昇の始点であるこれらの安値でズバリ買うのは至難の業(わざ)であり、エントリーポイントとしては上昇リバウンドの初期段階を狙うことになります。
このように、リバウンド上昇をとろうと割り切って株を売り買いする取引手法が「リバウンド上昇狙いの買い」であり、逆張りの戦略ということになります。ただし、もっと短期間で見ればさらに細かい上げ下げを繰り返していますから、実際の売買では株価の動きに一喜一憂してしまい、こんなに長く保有することは想像以上に難しいと言えるかもしれません。
もう一度、日経平均株価のチャートをご覧ください。簡単に「横ばいトレンド」のケースについても触れておきます。
日経平均株価は22年3月安値の2万4681円で下げ止まるまで、高値を右肩下がりに切り下げる下落トレンドにあったとご紹介しました。その後、日経平均株価のトレンドには変化がみられます。底打ちから3月下旬の2万8338円まで上昇した後、6月に2万8389円の高値をつけています。この3月、6月の高値はほぼ同水準にありますが、2月に付けた高値2万7880円よりも高い水準に位置しており、高値は切り下がっていません。株価には3つのトレンドがあると述べましたが、この高値の動きからは「横ばいトレンド」=「もみ合い」が発生している可能性が考えられます。
「横ばいトレンド」の場合は、高値とその次の高値、安値とその次の安値がほぼ同じ水準に位置し、一定のゾーンで上昇と下落を繰り返すことになります。図2の日経平均株価のチャートを見ても、3月半ば以降は2万7000円を挟んで上値は2万8400円、下値は2万5500円処のゾーンで上と下を行ったり来たりしているという風に捉えられます。こうした「横ばいトレンド」の場合も、上昇が長期にわたり継続するわけではありませんから、下降トレンドと同じくリバウンド上昇を狙う逆張りの戦略で臨むことになります。エントリーポイントは、前の安値水準から反発をみせた場合、その初期段階で買いを入れて、想定されるもみ合いゾーンの上値を目標にリバウンドによる値上がり益を狙います。
一般的に、株価の下落が続くと、「あーあーあー、どこまで下がるんだろう?」などと考えて、気分が沈んでしまいます。こうなると、わざわざ株を買おうという気にはならず、どちらかと言えば高くなったら売ろうという気持ちになるはずです。だから、下降トレンドや横ばいトレンドの場合の上昇は、長く続かないリバウンド上昇になるのです。さらに、誰もどこが底で、どこが天井なのかはわかりませんから、上昇したらサクッと儲けを確保したいと考える人が増えてもおかしくはないでしょう。
もちろん、アベノミクス相場のように長く上昇が続く時もありますが、その上昇トレンドがいつ終わるのかは誰にもわかりません。下降トレンドにもかかわらず、上昇トレンドと同じように長期で保有を続ければ、保有期間が伸びるほど損失が膨らむ可能性もありますので、長期投資が正解ということでもありません。
株式投資では儲けることが正解なのです。勘や雰囲気に頼った売買や、一つの考え方に固執した売買を続けていては儲けを吐き出すことになってしまいかねません。その時々の地合いに合わせて右肩上がりに資産を築くためにも、トレンド分析を活用した売買手法とエントリーポイントをぜひ身に付けましょう。
株探ニュース