半導体製造プロセス「後工程」がAI半導体で主役の座へ【フィリップ証券】
2025年4-6月の四半期決算と通期見通しの発表が相次いでいる。その中で、日経平均株価への影響が大きい半導体関連銘柄の動向に変化が見られる。生成AI(人工知能)の普及が進む中で半導体が一段と複雑化し、高性能の検査装置に強みを持つアドバンテスト<6857>はAI半導体需要の拡大を受けて業績を上方修正したものの、今年4月に付けた年初来安値から2.5倍以上に株価上昇しており、その反動もあって、上値が重い展開となっている。
半導体製造装置では、ウエハ洗浄装置で世界首位のSCREENホールディングス<7735>が営業減益となり、半導体製造プロセスの前工程に強い東京エレクトロン<8035>は半導体メーカーの設備投資計画見直しを受けて通期業績予想を下方修正。先端半導体のマスク欠陥検査装置を開発・製造し、EUV(極端紫外線)光源の市場を独占するレーザーテック<6920>に対し、半導体の技術ドライバーが先端露光技術からパッケージに移行し、EUV露光用マスクおよび関連装置の需要がピークアウトしているとの市場関係者の見方もある。
半導体製造プロセスで中核的な役割を果たす露光装置の分野では、微細化で最先端を行く「EUV露光装置」はオランダのASMLホールディング<ASML>が市場を独占してきた中、プロセッサーやメモリーといった複数のチップを一つに組み上げる「パッケージ」によって性能を高めようという動きが半導体メーカーの間で広がってきた。キヤノン<7751>は半導体を組み立てる「後工程」に特化した露光装置の販売を伸ばしている。
韓国SKハイニックスは先端半導体の「広帯域メモリーHBM」で強みを発揮している。HBMの組み立て工程では、稼働時の発熱の抑制のため、半導体チップを重ね合わせる際に封止材を注入する新しい技術を確立したことで量産を実現した。その際、封止材の素材や製造装置で強い技術力を持つ日本企業との協力が決め手になった。
高速・低電力な次世代コンピューティング技術として注目を集めている「光電融合」の実現は、電気信号を処理する半導体と光信号を処理する光学部品を一つの小さな基板上に実装するパッケージング技術「Co-Packaged Optics(CPO)」の進展が鍵を握っている。CPOの実装では、半導体チップの近くに光学部品が密集する中で光ファイバーと光学部品との接続に関する技術が課題とされている。具体的には、光ファイバーの位置合わせ(アラインメント)が難しい点、および、接続部が半導体チップの発熱の影響を受けやすい点である。住友電気工業<5802>は光ファイバーに「微小レンズ」を付けて位置ずれを許容・吸収しやすくする技術を持ち、米エヌビディア<NVDA>と光電融合ネットワークスイッチの開発で協業している。半導体後工程で使用される材料や装置で強みを持つレゾナック・ホールディングス<4004>は、熱に強く、位置ずれしにくい接着剤を開発している。
■上場インフラファンド5銘柄の動向~出力制御対応の系統用蓄電池が重要
上場インフラファンドは東証インフラファンド市場に上場する投資法人。再エネを中心としたインフラ資産に投資し、上場不動産投資信託(J-REIT)と同じ仕組みで収益を投資家に分配する。現在5銘柄が上場し、7/30終値で予想分配金利回りは7%台後半~8%台半ばである。
上場5銘柄について太陽光発電所の月次の発電電力量実績の対会社計画比を見ると、すべての銘柄が今年6月までの過去12ヵ月間で100%には達していない。冷暖房の需要が多い時期は会社計画を達成しやすいのに対し、需要が少ない時期には需給バランスを保つための「出力制御」の実施により予定通りの売電ができなくなる傾向がある。出力制御への対応として余剰電力を蓄える「系統用蓄電池」の導入が求められている。

参考銘柄
オリエンタルランド<4661>
・1960年設立後、千葉県浦安市舞浜で1983年に東京ディズニーランドを、2001年に東京ディズニーシーを開業。京成電鉄<9009>が筆頭株主。テーマパークおよびホテル等の経営・運営が主な事業。
・7/30発表の2026/3期1Q(4-6月)は、売上高が前年同期比10.3%増の1637億円、営業利益が同16.3%増の387億円。東京ディズニーシーの新エリア「ファンタジースプリングス」の稼働による効果に加え、テーマパーク事業では顧客単価が上昇。ホテル事業は宿泊収入を中心に25%増収だった。
・通期会社計画は、売上高が前期比2.1%増の6933億円、営業利益が同7.0%減の1600億円、年間配当が横ばいの14円。アクティビスト(物言う株主)の英投資ファンドが筆頭株主の京成電鉄に対してオリエンタルランド株の追加売却を要求していることが株価の重石となる可能性があるものの、足元の需給面では信用倍率(信用取引の買い残と売り残の比率)が7/25で2.18倍へ改善している。
日本碍子<5333>
・1919年に現在のノリタケ<5331>から碍子部門が分離独立。エンバイロメント事業(自動車排ガス浄化用等)、デジタルソサイエティ事業(半導体製造装置用等)、エネルギー&インダストリー事業(NAS電池等)を展開。
・7/31発表の2026/3期1Q(4-6月)は、売上高が前年同期比9.1%増の1664億円、営業利益が同34.7%増の237億円。事業別セグメント利益は、エンバイロメント事業(売上比率61%)が12%増の194億円、デジタルソサイエティ事業(同28%)が2.4倍、エネルギー&インダストリー事業(同11%)が赤字幅縮小。
・通期会社計画は、売上高が前期比1.7%増の6300億円、営業利益が同7.7%減の750億円、年間配当が6円増配の66円。エネルギー&インダストリー事業の1Qは、売上高が前年同期比33%増、セグメント損失が同▲17億円から▲9億円へ縮小。ナトリウムと硫黄を使うNAS電池(大容量・高エネルギー密度・長寿命電力貯蔵システム)の「エナジーストレージ」の国内蓄電所向け販売拡大が見込まれる。
近鉄グループホールディングス<9041>
・1910年設立の「奈良軌道」を源流とする。近畿日本鉄道の営業路線は大阪府、京都府、奈良県、三重県、愛知県に及ぶ。運輸、不動産、国際物流、流通、ホテル・レジャー、その他の事業を展開。
・5/15発表の2025/3通期は、売上高が前期比6.9%増の1兆7417億円、営業利益が同3.5%減の843億円。運輸業の鉄軌道部門における定期運賃改定、国際物流業における取扱物量増と販売価格上昇が増収に寄与した一方、国際物流業における運賃原価の高騰が響き利益率が低下した。
・2026/3通期会社計画は、売上高が前期比7.9%増の1兆8800億円、営業利益が同4.3%増の880億円、年間配当が10円増配の60円。同社の前期事業別売上比率は、運輸業が13%、不動産が9%、国際物流が46%、流通が12%、ホテル・レジャーが20%。営業エリアが屈指の人気観光地を擁し、インバウンドも堅調に推移。さらに、大阪・関西万博の盛況による業績への好影響が見込まれる。
※執筆日 2025年8月1日
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