予断を許さない衆院総選挙、食料品消費税ゼロの功罪【フィリップ証券】
衆院は高市首相の判断を受け、1/23の通常国会の冒頭に解散された。解散時の衆院の党派別勢力は自民196、維新34で両党合計で230議席と過半数の233議席に僅かに足りない。「衆院解散を検討」の報道が出たのち、日経平均株価は上昇し1/14に5万4487円のザラバ高値を付けたが、高市首相による「サプライズ解散」に呼応するかのように、野党の立憲民主党と公明党が1/16、衆院選に向けて新党「中道改革連合」(中道)の設立届け出を行った。
市場は、若年層を中心とした高い支持率を背景に高市首相への信任を見込んでいる一方、報道各社や市場関係者によれば、衆院議員160人超が参加した中道が、強い組織票を武器に前回接戦で自民党が当選した小選挙区のうち数十の規模で逆転する可能性があるとの見方も有力だ。仮に総選挙で自民党が失速し高市首相が辞任に追い込まれれば政局は流動化し、今の自民党内における非主流派が中道に接近する可能性も否定できない。政局リスクが日本株投資への重しとしてのしかかってくることになりかねない。
与野党は、食料品の消費税ゼロに関し、自民党が2年間だけのゼロについて「検討を加速」、中道が「恒久的なゼロ」と違いはあるものの、ともに衆院選の公約として掲げている。財源の議論が曖昧な中で与野党の公約とされたことで、債券市場は長期国債・超長期国債への売りを加速。2022年9月に英国で発生した「トラスショック」を彷彿とさせるものとして、1/20には日本国債の下落が米国債市場にも波及し、ベッセント米財務長官が「日本側から市場を落ち着かせる発言が出ることを確信している」と異例の声明を出す事態に発展した。
食料品の消費税ゼロが実現すれば、食品スーパーやコンビニエンスストアへの追い風となる一方、外食店には逆風となる。弁当などの中食が有利となり、テイクアウト専門へと転換する外食店が増える可能性がある。外食店は仕入れコストの税額控除がなくなって消費税納税額が増えてしまう問題もあり、低利益率のままでは淘汰されやすくなるだろう。また、同じ店舗で持ち帰り品と店内で食事する場合の税率差が拡大することから、分かりやすさを重視して同一の税込み価格を採用する戦略の維持が困難になる。現在の軽減税率の扱いのように「食べる場所」で税率の線を引くことは、難しくなるように思われる。
主にAI(人工知能)データセンターによる超大量のメモリ消費を要因として半導体メモリー(主にDRAMとNAND型フラッシュ)の価格が急騰している。新しいメモリ工場の立ち上げに数年の期間を要することから本格的な供給増は2027年以降となる見通しだ。1987年に世界初のNAND型フラッシュメモリを発明したキオクシアホールディングス<285A>は、フラッシュメモリの世界市場シェアで約2割を占める。その恩恵を享受できるポジションを占めている。
■日経平均株価のダイバージェンス~株価上昇も11月以降の勢いは鈍化
ダイバージェンスとは「逆行現象」を意味する言葉であり、オシレーター系テクニカル指標が実際の相場と逆方向に向かって動いている状態を指す。日経平均株価の週次終値についても、14週間のRSI(相対力指数)との関係で2025年11月以降、顕著なダイバージェンスの状態が発生している。週次のRSIは過去14週間の上げ幅合計を、上げ幅合計と下げ幅合計を足した数字で割った値である。
RSIは一般的に「買われ過ぎ」または「売られ過ぎ」を判断するためのテクニカル指標で、70~80以上で買われ過ぎ、20~30以下で売られ過ぎとされる。1/16のRSI(14週)は66台であることから上昇トレンド転換に至る兆しは見えないものの、高値圏の保ち合い・横ばい相場に移行した可能性を見ておくべきだろう。

参考銘柄
大黒天物産<2791>
・1986年に前身「倉敷きのしん」を岡山県倉敷市で設立。食品中心のスーパーマーケット事業を主力とし、「ラ・ムー」や「ディオ」を展開。生産から物流・製造・販売まで一貫して行う製造小売業に強み。
・1/14発表の2026/5期1H(6-11月)は、売上高が前年同期比9.9%増の1561億円、営業利益が同37.6%減の29億円。1Hで13店舗を新規出店し11月末で店舗数が243店(26府県)に拡大。出店費用が嵩んだことや値上げタイミングを遅らせたこと、広告費増、先行投資による人件費増が響き減益。
・通期会社計画は、売上高を前期比9.2%増の3199億円(従来計画3129億円)へ上方修正の一方、1H業績を踏まえて営業利益を同31.7%減の67億円(同103億円)へ下方修正。年間配当は4円減配の35円と従来計画を据え置いた。成長拡大重視に伴う利益圧迫が懸念される一方、物価上昇に伴って同社のPB(プライベートブランド)商品の競合他社に対する価格面の優位性が高まっている。
TOTO<5332>
・1917年に現ノリタケカンパニーリミテド<5331>から衛生陶器事業を分離独立。温水洗浄便座「ウォッシュレット」やバス・キッチン・洗面商品が主製品。日本住設、海外住設、新領域の3事業を営む。
・10/31発表の2026/3期1H(4-9月)は、売上高が前年同期比1.8%減の3493億円、営業利益が同13.9%減の207億円。事業別営業利益は、日本住設(売上比率65%)が36%減の59億円、海外住設(同26%)が52%減の34億円、新領域(同8%)が「静電チャック」の伸長を受けて42%増の129億円。
・通期会社計画を下方修正。主に日本住設事業の不振により売上高を前期比1.4%増の7345億円(従来計画7535億円)、営業利益を同1.1%増の490億円(同525億円)とした。年間配当は同横ばいの100円と従来計画を据え置いた。半導体製造装置向け「静電チャック」はNAND型フラッシュメモリの製造に用いられる。データセンターの需要増に伴う先端半導体市況が追い風となっている。
ジャパンマテリアル<6055>
・1997年設立の半導体・液晶工場向けインフラ提供企業。製造工程に不可欠な特殊ガス供給装置製造および特殊ガス販売・サービスを主軸とするほか、画像処理事業、太陽光発電事業を営む。
・11/12発表の2026/3期1H(4-9月)は、売上高が前年同期比11.4%増の256億円、営業利益が同37.3%増の60億円。顧客企業の設備投資に伴い発生するイニシャル部門(特殊ガス供給装置製造、供給配管設計施工)、オペレーション部門(特殊ガス販売管理業務、技術サービス等)が堅調。
・通期会社計画は、売上高が前期比8.2%増の570億円、営業利益が同16.2%増の130億円、年間配当が同3円増配の27円。同社はキオクシアホールディングス<285A>を主要顧客とする。キオクシアの四日市工場や岩手県北上工場(建設中含む)の稼働拡大に合わせて倉庫を新設するなど供給体制を強化。NAND型フラッシュメモリ需要に対応したキオクシアの設備投資増強も見込まれる。
ライフコーポレーション<8194>
・1978年に清水実業(1956年設立)がライフを吸収合併。食料品販売を中心に生活関連用品・衣料品の総合小売業を営む。三菱商事<8058>の持分法適用会社で首都圏と近畿で集中展開する。
・1/13発表の2026/2期9M(3-11月)は、営業収益が前年同期比4.2%増の6594億円、営業利益が同8.5%増の192億円。主な部門別売上高は、生鮮食品が4%増の2779億円、一般食品が5%増の2883億円、生活関連用品が0.4%減の515億円。売上高販管費率が0.3ポイント悪化の32.1%。
・通期会社計画は、営業収益が前期比4.1%増の8850億円、営業利益が同1.7%増の257億円、年間配当が65円(株式分割考慮後で同10円増配)。食料品の消費税に関する衆院選の公約で、自民党は2年間だけゼロにすることについて「実現に向けた検討を加速する」と明記。立憲民主党と公明党が結成した新党「中道改革連合」は恒久的なゼロを掲げる。同社への追い風が見込まれる。
※執筆日 2026年1月23日
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