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明日の株式相場に向けて=中東有事とAIが共鳴するリスクシナリオ

市況
2026年4月30日 17時30分

きょう(30日)の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比632円安の5万9284円と続落。マーケットは目先リスクオフの流れに転じている。イラン情勢のニュースフローにも目が慣れて、狼狽気味に右往左往することもなくなってはいるが、足もとでは重苦しいムードが漂い始めている。日経平均の600円あまりの下落幅は祝日前の28日とほぼ同じ。商いも連日で活況が続き、きょうは10兆円近い売買代金をこなした。ただし中身は真逆であった。28日は日経平均が600円を超える下げでも値上がり銘柄数がプライム市場の80%以上を占め、TOPIXはほぼ1%の上昇をみせたのに対し、きょうは値下がり銘柄数の方が76%に達しており、TOPIXは1%の下落で28日の上昇分をきれいに吐き出した。WTI原油先物価格が再び高騰し1バレル=110ドル台まで上昇、国内長期金利も29年ぶりの2.5%台と逆風が強い。中東問題を巡っては、日米欧いずれもトランプ・エフェクトの悪い部分がここにきて浮き彫りとなっている。

今から二千数百年前、中国戦国時代の只中に儒家として名を馳せた孟子は「春秋に義戦なし」と説いた。今回の中東有事は少なくともトランプ米政権にとって正義の戦いではなく、本音の部分でビジネスマンとしての損得勘定が先に立っている。

米国とイスラエルによるイランへの軍事攻撃に関して、イスラエルにすれば国家消滅という実存的な脅威を排除するためにイランを完膚なきまでに叩きたいという、いわば防衛本能に突き動かされたものであることは論をまたない。しかし、トランプ米政権としてはイランによる核開発を阻止するという大義名分はあるものの、実際は石油利権に絡む思惑が本丸である。イランがホルムズ海峡を日本のタンカーについては開放すると表明した際、その通行料に関し人民元での決済を条件に掲げたが、これは中国がイランを後方支援しているということを明確に示唆した。米国にすればペトロダラー体制を揺るがす由々しき事態に直面しており、ここはイスラエルの切実な思いに乗って、イランを屈服させるという手段が最良の選択肢として浮上した。その延長線上には言うまでもなく中国のエネルギー供給の動脈を切ることで、米中冷戦に勝利するという果実も存在する。

孟子は、春秋時代に正義の戦いなど存在しなかったと喝破するが、それはいつの時代も、そして現在も同じことが言える。アメリカ・ファーストの名のもとに「世界の警察」という看板を下ろしたトランプ米政権が、奇襲攻撃をかけてまでイランを潰しにかかったことは、地球の平和と安全を守るためではない。ロシアのウクライナ侵攻が悪で、米国のイラン攻撃が善という線引きに無理があるということにも既に世界は気付いている。中国が右に倣えで台湾有事に動き出しても、錦の御旗を掲げることが難儀な米国の立場は微妙である。

一方、経済的には原油価格の高騰を背景としたコストプッシュ・インフレが深化して、スタグフレーションの扉を押し開くことへの懸念が拭えない。FRBをはじめ世界の中央銀行は難しい舵取りを迫られている。常識的には利上げを優先するのがセオリーだが、それによって消費者マインドは更に冷え込むことになる。厄介なのは同じ時間軸で、進化したAIの活躍に伴い雇用機会が着実に失われていることだ。ホワイトカラーだけではなく、フィジカルAIの社会実装が進むことで肉体労働分野においても人的な需要は減退する方向にある。直近発表されたミシガン大学の消費者態度指数が1952年の統計開始以来最低を記録したという衝撃の事実は、かなり強烈な警鐘を鳴らしている。

ここに金融不安が重なると相場はおそらく崩落するであろう。現状はプライベート・エクイティ(PE)問題の連鎖で銀行経営に影響を及ぼすという可能性は低いとみられているものの、これはまだ全容が見えていない。かつてのサブプライム問題も最初は恐れるに足らずというのがコンセンサスであった。しかし、それは氷山の一角を見ていたに過ぎず、結局リーマン・ショックをもたらし、リスクアセットの総投げに発展した。PE問題はAIの過剰投資懸念の導火線となっていることも忘れてはならない。これまでは空売り筋の遠吠えとなって踏み上げ相場のステップとなってきたが、エヌビディア<NVDA>などで取り沙汰されたラウンドトリップ取引の綻びがどこかで崩壊の加速装置にスイッチを入れる。投資家は、本当のオオカミが来る場面を念頭に置きながら、眼前の強気相場を堪能するという、ある意味非常にハイレベルな立ち回りが求められている。

あすのスケジュールでは、朝方取引開始前に発表される4月の都区部消費者物価指数(CPI)が注目されるほか、同じく取引開始前に週間の対外・対内証券売買契約が開示される。前場取引時間中に3カ月物国庫短期証券の入札及び10年物物価連動国債入札が予定されている。後場取引時間中には4月の新車販売台数(自販連)、4月の軽自動車販売台数(全軽自協)が発表される。個別では、エムスリー<2413>、SBIホールディングス<8473>のほか、伊藤忠商事<8001>、丸紅<8002>、三井物産<8031>、住友商事<8053>、三菱商事<8058>の総合商社5社などが決算発表を行う。海外では4月の米サプライマネジメント協会(ISM)製造業景況感指数にマーケットの関心が高い。なお、中国、香港、韓国、台湾、フィリピン、シンガポールなどアジア各国の市場が休場となる。(銀)

出所:MINKABU PRESS

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