3月決算企業の配当金支払開始、期待インフレ率の上昇【フィリップ証券】
企業は一般的に株主総会で余剰金の配当を決議し、総会後に配当金を支払うことが多い中、近年は総会決議を待たずに配当金を支払う企業が増えている。トヨタ自動車<7203>は定時株主総会が6/17に開催されるのに対し、期末配当金の支払い開始日は5/26に予定されている。デンソー<6902>は定時株主総会が6/18に開催されるのに対し、期末配当金の支払い開始日は5/29に予定されている。
報道によれば、2025年には、TOPIX(東証株価指数)構成企業が支払う3月期決算分の期末配当の総額が6月末までに10兆円を超え、ピークの6/30には1日で1兆8000億円規模が支払われたとみられている。5月下旬から6月末にかけて配当が日本株への再投資に回ることで日本株市場の需給改善が見込まれる。また、夏の賞与の支給は、国家公務員が6/30と人事院規則で定められ、民間企業では6月下旬から7月上旬に設定されることが多く、日本株市場の需給面でのプラス要因である。
一方で、多くのETF(上場投資信託)は7月の10日前後に分配金支払基準日を迎えることから、分配金捻出のための売り需要が発生し、需給面で上値が重くなる要因となりやすい。5月下旬から6月末にかけて需給が改善しやすい時期を投資好機とみる余地がある。
市場のインフレ期待を示す指標が日銀の物価目標である2%を大きく上回り始めたことが市場で話題となっている。新発10年国債から物価連動国債の利回りを引いて算出され、市場が見込む平均的なインフレ予想である「10年物のブレーク・イーブン・インフレ率(BEI)」は5/18に2.3%を超え、その後も高水準で推移している。これは米国債やドイツ国債の10年物BEIとほぼ同水準である。その背景には、原油高を受けて物価上昇圧力が高まる中、高市首相が補正予算編成を表明したことがある。「インフレ下の財政拡張」によって日銀がインフレ対応で後手に回る「ビハインド・ザ・カーブ」に陥るリスクが警戒され始めている。今後は利上げの有無だけでなく、利上げ幅も市場の焦点となる可能性がある。銀行株への追い風となりやすい一方、仮に0.25ポイントを超える大幅利上げが話題になれば日本株市場への想定外のショックとなるリスクがあり、夏場に向けて警戒を要するだろう。
物価上昇圧力の主な要因となっているイラン紛争とホルムズ海峡封鎖については、悲観的に考える必要はないだろう。トランプ米大統領の支持率が米国民の物価高への不満を背景に低下基調が続いていることもあり、与党の米共和党は11月の中間選挙に向けて米独立記念日(7/4)頃までに原油・ガソリン価格の沈静化が政治的に求められるだろう。仮に中間選挙で共和党が大敗した場合、トランプ政権は議会によってイランから撤退を求められる可能性が高い。
■トランプ米大統領の支持率低下~40%を下回り、中間選挙向けの対策が必要
J-REITは基本的に不動産賃貸業であり、テナントの契約期間が分散しテナント入れ替えや更新時の賃料上昇が収益に寄与するまで時間を要する。そのため、足元は国内長期金利の上昇加速による支払利息増加を賃貸収益で補うことができないとみなされ、J-REIT価格は年初以降、売りが優勢となっている。
大手不動産会社が2026年3月期に過去最高益を更新し27年3月期もこの傾向が続くと予想する中、J-REITは業績よりも金利上昇の悪影響が過剰に懸念され、予想分配金利回りや純資産(NAV)倍率から見て割安な銘柄もある。首都圏オフィスは不動産売却による含み益の実現化の余地もあり、潜在的な投資好機とみる余地は大きい。東証上場J-REIT58銘柄のうち5月・11月決算期は8銘柄である。

参考銘柄
UBE<4208>
・1897年創業の採炭を発祥とし1942年に設立。ナイロン樹脂や合成ゴム等の化学、セメントや石灰石等の建設資材、成形等の機械といった事業を展開し、それらに係る製造・販売を行う。
・5/13発表の2026/3通期は、売上高が前期比5.0%減の4623億円、持分法適用会社のセメント関連を含む経常利益が同67.7%増の375億円。持分法投資利益は2.0倍の154億円。事業別営業利益では樹脂・化成品(売上比率46%)が38%減の50億円の一方、機能品(同17%)が52%増の150億円。
・2027/3通期会社計画は、売上高が前期比4.9%増の4850億円、経常利益が同横ばいの375億円、年間配当が同50円増配の160円。中期経営計画で掲げている配当方針のDOE(株主資本配当率)目標に関して従来の2.5%以上から3.5%以上へ引き上げるとともに中計の進捗を踏まえて早期に4.0%への引き上げを目指すとした。低PER、低PBR、高配当利回り銘柄として見直し余地がある。
トレンドマイクロ<4704>
・1989年に基本ソフトウエア輸入販売で前身のロンローパシフィックを英国法人が設立。「ウイルスバスター」他コンピュータセキュリティ対策製品の開発・販売を日本・北米・欧州・アジア太平洋で展開。
・5/14発表の2026/12期1Q(1-3月)は、売上高が前年同期比9.4%増の738億円、営業利益が同3.7%増の155億円。統合セキュリティプラットフォーム「Vision One」を背景としたエンタープライズ(法人)向けが10%増収に加え、コンシューマー(個人)向けも全地域で伸長し5%増収と堅調に推移。
・通期会社計画は、売上高が前期比9.2%増の3015億円、営業利益が戦略的な先行投資の影響により同2.4%減の564億円、年間配当は未定。同社は4/16、法人向けブランド「TrendAI」で米アンソロピックのClaudeモデルを活用してAI(人工知能)システムの脆弱性の発見を進めるとした。エバ・チェンCEOはアンソロピックとの協働をテコに事業の変革を進めAI進化への対応強化を目指している。
平和不動産リート投資法人<8966>
・平和不動産<8803>をスポンサーとする総合型REIT。東京都区部の住宅とオフィスを主要投資対象とし、用途別では住宅が約50%、オフィスが約47%(2026年1月末)。継続的な物件入替えに特徴。
・1/17発表の2025/11期(6-11月)は、営業収益が前期(12-5月)比5.4%増の107億円、営業利益が同7.7%増の59億円、1口当たり分配金(利益超過分配金を含まない)が同2.6%増の3950円。期中平均稼働率が前期末比0.7ポイント上昇の97.8%、運用資産合計が同2件増の133物件となった。
・2026/5期(12-5月)会社計画は、営業収益が前期(6-11月)比7.7%増の115億円、営業利益が同10.1%増の65億円、1口当たり分配金(利益超過分配金を含まない)が同1.0%増の3990円。5/20終値で、2026/11期まで含めた会社予想分配金利回りが5.73%、投資口価格に対するNAV(純資産価値)倍率が0.93倍。平和不動産の開発力を背景に、安定的な資産入れ替えを行える点が強みだ。
日本航空<9201>
・1951年設立。公的資金投入と経営再建により2011年に会社更生手続を終結。フルサービスキャリア事業、LCC(ローコストキャリア)事業、マイル/金融・コマース事業、およびその他事業を展開する。
・4/30発表の2026/3通期は、売上収益が前期比9.1%増の2兆125億円、財務・法人所得税前利益(EBITに相当)が同26.4%増の2180億円。事業別売上収益は、フルサービスキャリア事業が9%増の1兆5874億円、LCC事業が10%増の1149億円、マイル/金融・コマース事業が11%増の2222億円。
・2027/3通期会社計画は、売上収益が前期比4.1%増の2兆950億円、財務・法人所得税前利益が中東情勢緊迫化に伴う燃油費増加見通しから同17.4%減の1800億円、年間配当が同横ばいの96円。航空燃油費の対売上収益比率(2026/3通期)は19.6%を占める。11月の米中間選挙を控えてトランプ政権がイランとの戦闘終結とホルムズ海峡の開放に向けた交渉を本格化させると見込まれる。
※執筆日 2026年5月22日
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