富田隆弥のチャート倶楽部 2018スペシャル <新春特別企画>

特集
2018年1月1日 11時00分

「前半高・後半安の乱高下、高値2万5000円挑戦」

●乱高下を想定

ここではチャート面から2018年相場を見ておく。世界的なカネ余り、株高に伴う資産効果、好景気、好業績など、ファンダメンタルズは株価上昇の条件が揃っていよう。だが、テクニカル的には日米とも過熱感を帯びている。

相場であるから調整を挟むだろうし、高所に伴う突風が吹くなら上昇基調に亀裂を入れるかもしれない。もし、亀裂を入れるなら、3兆円台に膨れている信用買い残と裁定買い残が解消売りに転じて相場を下押すことも考えられる。2018年の株式市場は乱高下の展開を想定している。

日経平均株価の年間の推移を大まかに述べると、新春に調整を入れ、4月~5月に2万5000円近辺まで上げ、年後半に調整を強めて1万7500円近辺まで下値模索となろう。タイムスケジュールや日柄も考慮するが、何はともあれ世界の屋台骨である「NYダウ」が大きなカギを握るだろう。

●調整を入れやすい新春

まず、1月相場から触れておこう。師走にマスコミや証券界が新年相場の予測を特集することもあり、投資家の多くは期待を膨らませて新年を迎えているだろう。だが、その浮かれた頭を冷ますように1月は調整することが珍しくない。

5年を経たアベノミクスだが、1月の日経平均を振りかえると2014年▲9.3%、2015年▲4.9%、2016年▲15.8%、2017年▲2.4%(いずれも1月安値の前年大納会終値比)と、大なり小なり調整を見せている。NYダウの1月を見ても、2017年こそ横ばいだが、2014年▲5.7%、2015年▲3.8%、2016年▲11.3%とやはり調整を入れている。

1月に調整する要因として「ヘッジファンドが売りから入る」ことが指摘されているが、師走だ、クリスマスだ、新年相場だと前年末に株高観測に浮かれた投資家が多く、その反動が新春に出やすいことも見逃せない。こうしたことから、この1月~2月は5%前後の調整(下値2万1000円台)を想定する。

ただし、中長期の観点からすると「目先筋の振るい落とし」「足場を固める」という意味で調整は悪いことでなく、チャートは“スピード調整”を経て後々に上昇することが多い。

もし、調整を入れずに1月に上昇するのであれば「節分天井-彼岸底」のパターンとなろう。その時は2月に高値2万4000円台もあり得よう。

●5月にかけて高値挑戦へ

3月から5月にかけては上昇を想定する。言うまでもなく、3月期末は配当取りのほか、企業や運用会社(投資信託、投資顧問など)が株価水準を意識するところ。また、4月8日に任期を迎える黒田日銀総裁は続投発表が想定され、それも好感されるだろう。その上昇の流れが「新年度」への期待につながり、5月まで上昇が続きやすい。

現在、日経平均は26年ぶり(1992年1月以来)の水準に来ており、次なる節(目安)は1991年当時の2万5250円~2万7270円で、5月前後にそこを目指すだろう。

ただし、4月下旬から5月半ばにかけて企業の決算発表がある。景気回復と円安効果で2018年3月期は好決算が相次いだが、来2019年3月期は人件費などコスト増が利益を圧迫し、増益率鈍化といった慎重見通しが増え、マーケットはそれをネガティブに捉えることも想定される。決算の出尽くし感もあって6月~7月の日経平均は高値圏でもみ合いとなろう。

●年後半は調整入りか、NYダウがポイント

年後半は調整入りをイメージする。翌2019年に消費税率引き上げがあり、景気や業績への影響が意識されるだろう。日経平均の下値メドは移動平均線などから2万1000円、2万円、1万9000円と1000円キザミであるが、カギを握るNYダウが調整入りするなら「同時株安」を誘発することから「1万7500円」模索もあり得るだろう。

では、NYダウを見ておこう。チャートは高値警戒の状態が続いている。2016年11月から始まったトランプ相場は1年で6993ドル高(39%)という急上昇ぶりだが、2009年3月リーマンショック時の安値6469ドルから見ると8年9ヵ月で1万8407ドル高(3.8倍)という大相場になっている。ここ1年間の日足も、過去9年間の月足も波動は三段上げや五段上げを描き、直近の上昇加速は「仕上げ局面」を彷彿させる。

NYダウのテクニカル指標はRCI(順位相関指数)が日足(13日92%、25日96%)、週足(13週95%、26週96%、52週97%)、月足(24ヵ月99%、60ヵ月91%、120ヵ月94%)ともに過熱水準にある。

テクニカル指標が過熱を示唆しても、25日移動平均線を下値支持として推移しているなら「上向き」の流れであるから、最高値をさらに更新してもおかしくない。だが、25日移動平均線を割り込むと「陰転」信号として要注意となる。過熱のテクニカル指標が軒並み調整に転じ、売りに拍車をかけることになる。いまのNYダウ(米国株)はそういったリスクを抱えていることは承知しておくべきだろう。

FRBはイエレン議長が2月3日で退任し、翌日からパウエル新議長が就任する。グリーンスパン議長はブラックマンデー、バーナンキ議長はサブプライム、リーマンショックと就任後に試練に遭遇したが、パウエル新議長にも試練が訪れる可能性はある。

未曾有の金融相場(マネーゲーム相場)で未曾有の高値圏にきている相場だ。利上げ、長短金利縮小、そしてトランプリスク(地政学リスク)など、何が調整入りのキッカケになるかは不明だが、調整に転じるならば「同時株安」を招くことから“試練”も未曾有のものとなりかねない。

私は年後半の調整入りを想定しているが、NYダウ次第で調整入りが早まる可能性も、遅れる可能性もある。だからこそ、チャートでは調整の入り口となる25日移動平均線や抵抗線など「下値ポイント」のチェックが怠れない。

◆注目株

注目株の選別もチャートを重視する。つまり、大きく上げたものは見送り、出遅れているものや、安値圏のもの、調整しているものに目を向ける。

まず、カネ余り、運用難という状況が新年も続くことから、ETF買いなどパッケージ運用が幅を利かすだろう。日銀のETF買いのほか、環境・社会・企業統治に取り組む企業に投資する「ESG投資」などが代表例だが、この関連では地球環境を意識している日本板硝子 <5202> に注目する。

好業績が注目されるのは当然だが、年初は決算発表の近い「12月決算」「1月決算」の企業が面白い。12月決算ではネット投票により地方が復調している東京都競馬 <9672> 、1月中間決算では上下水道工事受注が好調な大盛工業 <1844> [東証2]に注目。

テーマ・材料株ではタムラ製作所 <6768> を挙げておく。電子部品が好調で業績も順調、そして次世代半導体材料を内包しており将来性もある。

日経平均やNYダウが上昇基調を続けるうちは個別株も「買い」主体で構わない。だが、もし基調を崩すなら、注目株であっても一旦手放して「様子見」としたい。(2017年12月27日 記)

情報提供:富田隆弥のチャートクラブ

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