急伸「プラチナ」の上昇は続くか? “業界再編”後押しの可能性 <コモディティ特集>
―供給不足見通しで脱“売られすぎ”へ、南アフリカ動向にも注視―
プラチナ(白金)は2017年に軟調に推移したが、12月半ばの900ドル割れから急反発し、年明けに現物価格ベースで4ヵ月ぶりの高値1,018.60ドルをつけた。欧州市場でのディーゼル車離れや中国の宝飾需要減少などが圧迫要因となったが、年末にかけてのドル安に加え、パラジウム・原油の堅調が支援要因となって値を戻した。今回はプラチナが1,000ドル台で上値を伸ばせるかどうかについて検証する。
●2018年のプラチナは小幅な供給不足の見通し
HSBCによると、2018年のプラチナは5.9トンの供給不足が見込まれている。2017年の3.6トンから不足幅を小幅に拡大すると予想された。供給が限られていることや投資需要が増加する可能性があることが背景にある。また、2018年の平均価格は1,055ドルと予想された。前年の売られ過ぎの水準から価格が回復するという。
内部要因をみると、昨年12月はニューヨーク・プラチナの指定倉庫在庫が減少しており、実需筋の買い戻しが進んだ。また、ファンド筋の売り玉が昨年12月に過去最高を記録した後に減少しており、今回の急伸は買い戻し主導の上昇である。今後、上値を伸ばせるかどうかは供給不足見通しを背景に新規買いが入るかどうかに左右される。
ただ、需給のバロメーターとなるリースレート(貸出金利)を見ると、1ヵ月物は0.15%から-0.08%に低下しており、目先の高値をつけた可能性がある。一方、パラジウムと原油が上値を試していることはプラチナの支援要因である。パラジウムは供給逼迫、原油は需給均衡見通しを受けて堅調に推移しており、プラチナETF(上場投信)に投資資金が流入すると価格を押し上げる要因になるとみられる。
●鉱山業界の再編で供給減少の可能性
南アフリカのシバニェ・スティルウォーターは昨年12月、ロンミンを買収することで合意した。ロンミンは2012年のマリカナの悲劇(賃金交渉によるストライキと警官との衝突で多数の死傷者が出た事件)などをきっかけに問題を抱えていた。一方、シバニェは2015年にアングロ・アメリカン・プラチナムからルステンバーグ鉱山を買い取った後、アクエリアス・プラチナムや米スティルウォーターを買収した。今回のロンミン買収で世界第2位のプラチナ鉱山会社となる。今後のリストラで不採算部門が閉鎖され、供給減少につながると支援要因になる。
また、昨年12月に南アフリカの与党、アフリカ民族会議(ANC)の新党首にラマポーザ副大統領が選出されたことも支援要因である。スキャンダルまみれのズマ大統領に代わり、ラマポーザ氏が2019年の総選挙を経て次期大統領になる公算が大きくなったことで、南アフリカの政治・経済・社会情勢が良くなると考えられている。先行き期待から南ア・ランドが上昇しており、鉱山会社の生産コストを押し上げる要因になる。ただ、市場では低成長やインフレ、高失業率、政府支出拡大、国営企業の資本不足といった問題を解決するのは難しいとの見方もあり、今後の南ア・ランドの動向を確認したい。
(minkabu PRESS CXアナリスト 東海林勇行)
株探ニュース