有賀泰夫の有望株リサーチ
●やまみ <2820> [JQ]
―上場により成長に弾みつくか?―
製造業の工場での製造方法は、同じ製品でも企業によって大きく異なることがしばしばあります。企業ごとの生産性向上の方向性が異なる上に、QC活動など従業員のアイディアによって工場ごとに進化していくため、それぞれの工場がガラパゴス化することで、長い年月では決定的に大きな差となって現れるケースがあります。
食品工場でもしばしば企業間で製造コストに大きな差が出ることがあります。しかし、消費者が買う食品の多くはブランド優先であることが多いため、製造コストが企業の収益性や成長性を左右する決定的な要因となって現れることはそれほど多いわけではありません。ただし、同じ食品でもブランドがそれほど重要な意味を持たない市場においては、生産性の差が競争力や収益性、成長性に極めて大きな影響を与えます。
典型的な例としてはハム・ソーセージ市場におけるプリマハム <2281> の例があります。同社は今から十数年前に倒産しかけた会社ですが、その切羽詰まった状況からその後の10年で工場の生産性向上に成功し、劇的な変化を遂げます。何と、第4位メーカーでありながら、この数年で最もシェアを伸ばし、最も収益性を高めています。
市場ではそのことにほとんどの人が気づいていませんでしたので、当コラムでは繰り返し同社株を取り上げ(直近:2017年8月22日)、株価も大きく上昇しました。
ハム・ソーセージは比較的大企業も存在する市場ですが、中小零細企業が多数乱立する市場においては、画期的な製造技術によって極めてローコストな製品を製造することで、しばしば大企業へ成長する例があります。代表的な企業は調味料市場におけるアリアケジャパン <2815> です。同社は中小零細企業が多いエキス市場において全自動化に唯一成功した企業で、いまや営業利益が100億円を超える大企業となりました。この銘柄もしばしば当コラムに登場しています(直近:2016年11月28日)。プリマハム同様にこの銘柄も大きく上昇しています。
さて、当コラムで初めて紹介する銘柄です。豆腐 は関連市場を含めて8000億円と巨大な市場ながら、中小零細企業が無数にひしめく市場です。その市場において全自動化に成功し急成長を遂げたのが、唯一の上場企業となったやまみ <2820> [JQ]という会社です。同社はこの10年で、年平均13%の売上成長と21%の営業利益成長を遂げてきましたが、上場によって成長スピードはさらに加速する可能性が高まっています。第2、第3のプリマハム、アリアケジャパンになる可能性を秘めた銘柄として注目されます。
(1月24日 記)
有賀泰夫(ありがやすお)
H&Lリサーチ代表。新日本証券(現みずほ証券)に入社後、アナリストとしてクレディ・リヨネ証券に転職。現三菱UFJモルガンスタンレー証券を経て、09年4月に独立して、H&Lリサーチを設立。ファンド向けアドバイスなどを行う。日本証券アナリスト協会検定会員。
株探ニュース