原油高トレンド「継続余地」は? 在庫減が支えるその“寿命” <コモディティ特集>

特集
2018年1月31日 13時30分

―行き過ぎた減産に懸念も、原油高求めるサウジの事情―

●原油高継続に余地も、強気筋が注視する米石油在庫

原油価格の上昇基調が続いている。世界的な石油在庫の減少傾向が価格を押し上げる構図に変化はない。1月の石油輸出国機構(OPEC)の月報によると、昨年11月の経済協力開発機構(OECD)加盟国の石油在庫は前月比1660万バレル減の29億3,300万バレルとなり、過去5年平均へ向けてさらに縮小した。過剰在庫の減少は明らかである。過剰な部分はまだ1億3,000万バレル超あることから、解消までには時間がかかるが、裏を返せばそれだけ原油高トレンドが時間的に続く余地があるということである。

例年、1-3月期は北半球の暖房需要が減少に向かう一方で、ガソリン消費が増える時期ではないことから、石油在庫が積み上がりやすい。この在庫動向は原油安となって反映されやすく、最近の原油高には調整の可能性がつきまとっているといえる。米石油在庫は世界の在庫動向の先行指標であり、米石油協会(API)や米エネルギー情報局(EIA)が発表する週報に身構えている強気筋は多いのではないか。米国の石油在庫はOECD加盟国全体の4割超を占めており、世界の在庫動向を左右する。

●史上最大IPOの成功が至上命題のサウジ

米国の石油在庫を視野の中心に置きつつ、産油国の動きにも目を向けると、今月21日にOPEC加盟国と非加盟国による共同閣僚監視委員会(JMMC)がオマーンで行われた。サウジアラビア主導で、2018年末まで協調減産を行うことを再確認し、昨年から根強くつきまとっている減産期間の短縮観測を牽制したほか、サウジのファリハ・エネルギー相は2019年以降も協調行動を継続することを示唆した。産油国の盟主であるサウジが公の場で協調行動の継続に言及したことは注目を引いたが、具体的な内容は今のところ全く示されていない。

行き過ぎた原油高を懸念して、協調減産期間を長期化すべきではないとの指摘は以前から存在する。イランは行き過ぎた原油高が米国のシェールオイル増産を刺激するとしている。ロシアも積極的には減産期間の長期化を支持していないと思われる。ただ、サウジアラビアはこの論調を制した。昨年末の合意に沿って、2018年末まで協調減産を続けるべきであると念を押し、シェールオイルの増産を懸念するよりも原油高を追求すべきであると表明したように見える。右肩上がりの株式市場に、右肩上がりの原油市場を添えて、国営石油会社サウジアラムコの新規株式公開で満足できる結果を得ることがサウジの目標である。協調減産が実を結び、原油高が実現していることから、さらなる原油高を目指すサウジに逆らう産油国はごく一部であるといえる。

1-3月期は季節的な需給や在庫の変動によって原油相場が上下する場面がありそうだが、「在庫減=原油高」の単純な構図が崩れる兆候は見当たらない。2018年は主要国の石油需要がさらに拡大する一方、昨年に続いて産油国が供給を制限する一年であり、上昇トレンドは安定するのではないか。シェールオイルの増産や、産油国の意見の隔たりを頭の片隅に置きつつ、シンプルな構図が続くのか見届けたい。

(minkabu PRESS CXアナリスト 谷口 英司)

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