雨宮京子氏【“リスク回避”終息へ、戻り相場のメドと物色方向】(1) <相場観特集>
―強力な戻り足示現で、弱気相場からの離脱は秒読み!?―
米国を発信地とするリスクオフの連鎖も一巡し、東京株式市場は前週後半から急速な戻り足をみせている。週明け19日の日経平均株価は400円を超える上昇で、終始高値圏で売り物をこなし、一つのフシ目であった2万2000円台を回復した。3月相場を前に流れは変わったのか。マーケットの先読みに定評のある3人の市場関係者に今後の相場展開および物色の方向性について意見を聞いた。
●「2万2000円台を駆け抜ければ視界開ける」
雨宮京子氏(SBI証券 投資情報部 シニア・マーケットアドバイザー)
東京株式市場はひところのリスク回避売りの流れが一服し、リバウンド局面に移行している。2月14日のザラ場安値2万950円でとりあえず一番底を入れた格好だ。1月23日の取引時間中につけた高値2万4129円から2月14日安値までの3分の1戻しが2万2000円強の水準であり、これは直近の日経平均の26週移動平均とも一致している。リバウンド相場の要衝であるこの水準をクリアしてきたことは、買い戻しと押し目買いが戻り売りニーズを吸収できるレベルにまで、相場の体力が回復してきたことを反映している。
ただし、米国株主導で相場の歯車が順回転に戻っているとはいえ、為替の円高警戒感もくすぶるなか、ここから一段と戻りが加速するとも考えにくい。日経平均2万2000円台は今回の戻り相場において胸突き八丁のゾーンでもあり、真価を試されるのはここからだろう。
アベノミクス相場は日経225ベースのPERが14~16倍のゾーンで推移してきた。直近は円高による企業収益への影響を懸念して、この下限レベルを下回ったが明らかにオーバーシュート気味に売り込まれた。現在は予想EPSで1679円。円高デメリットを考慮して13.5倍で換算したとして、日経平均は2万2666円という数値が弾き出される。個人的にはこの水準が当面の着地点となるのではないかと考えている。そして、もしここを通過点に2万3000円台に乗せるような展開となれば、総論弱気相場からの決別ということになり、改めて上昇トレンドの色彩が強まることになる。
物色対象としては、値動きの荒い全体相場に惑わされず、チャート面で食指の動く好実態株に照準を絞りたい。まず、化学セクターではクレハ <4023> と宇部興産 <4208> に注目。クレハはシェールオイル・ガスの掘削機械部品向けPGAで、超低温分解品を開発している。また、宇部興はリチウムイオン電池用セパレーターや有機EL向け材料で高い競争力を持っている点に注目。
円高局面を追い風とする神戸物産 <3038> も面白い。月次売上高は好調を継続、配当を増額修正するなど株主還元姿勢も評価される。ソフト支援開発のシステナ <2317> も4000円台前半のもみ合いは狙い目だろう。クラウド関連の自社商材が好調で18年3月期はピーク利益更新、こちらも株主還元に厚く連続増配を計画している。さらに、好業績の日本M&Aセンター <2127> も最高値圏で強調展開が続きそうだ。第3四半期好決算を受け、通期業績見通しを大幅増額修正、中期計画で掲げていた来期の利益目標に前倒しで到達している。
(聞き手・中村潤一)
<プロフィール>(あめみや・きょうこ)
SBI証券 投資情報部 シニア・マーケットアドバイザー。元カリスマ証券レディ。日興証券時代は全国トップの営業実績を持つ。ラジオ短波(現ラジオNIKKEI)、長野FM放送アナウンサー、『週刊エコノミスト』(毎日新聞社)記者、日経CNBCキャスター、テレビ東京マーケットレポーター、ストックボイスキャスターなどを経て現在に至る。
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