米国株式市場見通し:経済指標に注目
トランプ大統領は、鉄鋼とアルミニウムに25%と10%の輸入関税を賦課する声明に署名した。北米自由貿易協定(NAFTA) の見直しで交渉を進めているカナダとメキシコへの適用は免除するほか、他の同盟国にも交渉余地を残したことで、全面的な貿易戦争に発展するとの懸念が解消している。今週は、欧州や中国からの報復措置の動向を注意しながら、来週のFOMCを控えて経済指標に一喜一憂する相場展開となりそうだ。
株式相場は、1月雇用統計やVIX(変動率)指数を巡る混乱で2月に大きく下落したものの、関税導入を巡る対立でコーン国家経済会議委員長が辞任しても、相場の下落が限定的であったことから、株式市場の堅調さが確認された。コーン氏の公認候補として数名が浮上しているほか、2月雇用統計も良好な内容となり、相場への懸念は少ないと考えられる。特に雇用統計では、非農業部門雇用者数は31万3千人と予想の20万人前後を大きく上回ったものの、平均時給の伸びが2.6%と予想を下回り、利上げペースの加速には繋がらないとの見方が好感された。また、米国と北朝鮮が5月までに首脳会談を行う意向であるほか、北朝鮮が核・ミサイル実験を控える姿勢を表明するなど地政学リスクが後退していることも追い風になりそうだ。
経済指標では、2月消費者物価指数(13日)、2月小売売上高(14日)、2月生産者物価指数(PPI)(14日)、2月輸入物価指数(15日)、3月NAHB住宅市場指数(15日)、2月住宅着工・建設許可件数(16日)、2月鉱工業生産(17日)などの発表が予定されている。1月は小売売上高や鉱工業生産が軟調だったものの、住宅着工が堅調だったことで、米経済は引き続き底堅く推移していることが示唆された。2月住宅着工・建設許可件数から住宅販売市場が活況となる春先の動向を見極めたい。
個別銘柄では、スポーツ用品小売のディックス・スポーティング・グッズ(13日)、投資会社のアルタバ(14日)、ディスカウントストアのダラー・ゼネラル(15日)、半導体のブロードコム(15日)、グラフィックソフトのアドビ・システムズ(15日)などの決算発表が予定されている。ブロードコムは同業クアルコムに対する買収提案に対する当局の審査が長期化する可能性が報じられており、今後の動向に注意が必要だ。
(Horiko Capital Management LLC)
《FA》
提供:フィスコ