為替週間見通し:ドルは伸び悩みか、米朝対話への期待も米通商政策に対する警戒感残る
■ドル・円は一時107円05銭、米朝対話への期待高まる
先週のドル・円は反発。自由貿易の信奉者であったゲイリー・コーン米国家経済会議(NEC)委員長の辞任を受けてトランプ米政権は保護主義に一段と傾斜するとの思惑が広がり、週前半はドル売り優勢の展開となった。しかしながら、7日発表された2月の米ADP雇用統計は市場予想を上回る内容だったことから、利上げペース加速の思惑が浮上し、ドル売りは一服。輸入関税の導入をトランプ大統領に勧めていたロス商務長官は7日、「トランプ米大統領は金属関税で柔軟な対応を示唆している」との見方を伝えたことから、米通商政策に対する警戒感はやや低下し、ドル買いが活発となった。
9日の東京市場では、「トランプ米大統領が北朝鮮の非核化のため金正恩朝鮮労働党委員長と5月までに会談する意向」との報道を受けてドル買いはさらに加速。9日のニューヨーク市場では、2月米雇用統計で非農業部門雇用者数が市場予想を大幅に上回ったことから、107円05銭までドル高・円安が進行した。ただ、平均時給の伸びは市場予想を下回ったことから、インフレ加速の思惑は後退し、ドル・円は106円79銭でこの週の取引を終えた。先週のドル・円の取引レンジは、105円35銭から107円05銭となった。取引レンジ:105円35銭-107円05銭。
■ドルは伸び悩みか、米朝対話への期待も米通商政策に対する警戒感残る
今週のドル・円は伸び悩みか。トランプ米大統領と北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長との首脳会談は5月までに行なわれる予定だが、正式な日時や会談場所などは決まっていない。米ホワイトハウスのサンダース報道官は9日、「北朝鮮が具体的な行動を示さなければトランプ大統領は北朝鮮の金正恩委員長との会談は行わないと述べた」と発表しており、米朝首脳会談の実現については予断を許さない状況が続くとみられる。また、トランプ政権の保護主義的な通商政策に対する市場の警戒感は消えていないことから、リスク選好的なドル買いがさらに拡大する可能性は低いとみられる。
米国経済の回復基調やインフレ進行を考慮して、米連邦準備制度理事会(FRB)は20-21日開催の連邦公開市場委員会(FOMC)で0.25ポイントの追加利上げに踏み切る公算。13日発表の2月消費者物価指数(CPI)や14日発表の2月小売売上高など主要経済指標が市場予想を大幅に下回る内容でなければ、追加利上げを想定して短期筋などのドル売り・円買いは抑制されるとみられる。
ただ、トランプ大統領は年間8000億ドル規模に達する商品貿易赤字を削減するために、保護主義的な通商政策を継続するとの見方が多く、世界経済の成長を阻害するとの市場の懸念は払しょくされていない。ムニューシン米財務長官は9日「トランプ大統領が署名した鉄鋼とアルミニウムに対する輸入制限発動について、より多くの国が適用を猶予される可能性がある」との見方を示しているものの、猶予は短期間にとどまるとの見方もあることから、米通商政策に対する警戒感は低下せず、リスク選好的な円売りは当面抑制されることになりそうだ。
予想レンジ:105円00銭-108円00銭
《FA》
提供:フィスコ