来週の相場で注目すべき3つのポイント:米中貿易摩擦、FOMC議事録、ファストリ決算
■株式相場見通し
予想レンジ:上限22300-下限21300円
来週は引き続き、米国と中国の貿易摩擦による緊張の高まりと、それを受けた為替動向に影響を受ける相場展開が見込まれる。米国と中国の間には通商政策面での定期的な会合システムがないことから、報道が突発に出やすいため。マーケットに与える影響が大きくなりやすくなっている。米中間の通商問題は落とし所がまだ見えず長期化する可能性もある。ただ、先週の日経平均は1日当たりの大引けベースの下げ幅が100円未満にいずれもとどまっており、貿易摩擦問題に対する耐性をつけ始めていることは確かだ。米中の高官発言に株安ショックで反応する局面ではなくなり、比較的冷静に反応する展開へ移行することが考えられる。なお、週末発表された3月の米雇用統計は、3月の非農業部門雇用者数が前月比10万3000人増と、伸びが市場の予想以上に減速した数値となった。
先週末のNYダウ急落を受けて、売りが先行するものの、売り一巡後は底堅い展開が予想される。貿易摩擦問題と為替の円高は引続きリスクファクターとして働き、フェイスブックなどソーシャルメディアが抱える問題は、米国市場で荒れると東京市場にも影響は出てくる。貿易問題を抱えた安倍晋三首相の17日からの訪米を控えていることも手控え要因として働く可能性もあり、積極的な買い材料が見当たりにくい。ただ、テクニカルと需給の両面では相場を陽転させる明るいデータも出てきた。
テクニカル面では、上値抵抗ラインであった25日線を明確に抜けた。同線を支持線に変えてくることから、節目の22000円が意識されてこよう。また、3月第4週の投資主体別売買動向で、海外投資家は12週連続の売り越しだったものの、現物ベースで見ると12週ぶりに小幅ながらも買い越しと、変化の兆しが見えている。物色面では、4月20日にマザーズに上場予定のHEROZ<4382>は人工知能(AI)を活用したインターネットサービスの開発会社で、前人気は非常に高く、この登場を控えて中小型株を中心とするAI関連への物色の強まりが予想される。
主要スケジュールは、日本では9日に2月国際収支、3月景気ウォッチャー調査、11日に2月機械受注、3月企業物価指数、12日には3月マネーストック、日銀地域経済報告が発表される。海外では、11日に米3月財政収支、3月開催のFOMC議事録、13日に中国3月貿易収支が発表予定となっている。一方、13日からは米企業の決算発表シーズンに入る。国内では、消費・小売関連を中心にした企業の決算発表も佳境を迎えることになる。日経平均寄与度が高いファーストリテイリング<9983>の決算発表を受けての株価の反応は関心を集めることになる。
■為替市場見通し
来週のドル・円は上げ渋りか。米国のインフレ関連指標が景気拡大やインフレ進行の可能性を示した場合、利上げペース加速への期待でドル買いが強まる可能性がある。ただ、トランプ政権の保護主義的な通商政策への懸念は残されており、金利上昇を意識したリスク選好的なドル買いは限定的となりそうだ。
注目材料は、10日発表の米3月生産者物価コア指数(PPI)や11日発表の米3月消費者物価コア指数(CPI)など米インフレ関連の経済指標か。特に、3月のコアCPIは2月実績を上回る可能性が高いと予想されており、市場予想を上回った場合は利上げペース加速の観測が広がりそうだ。
ただ、引き続きトランプ米政権の通商政策への懸念は残る。トランプ政権は、中国や日本をターゲットに鉄鋼・アルミ製品の輸入制限に踏み切り、中国が報復関税を決めたことで米中貿易摩擦が貿易戦争に発展することが懸念されている。米国家経済会議(NEC)のクドロー委員長は制裁の発動については慎重だが、なお動向が注目される。
■来週の注目スケジュール
4月 9日(月):景気ウォッチャー調査、独貿易収支、IMF世界経済見通しなど
4月10日(火):米生産者物価コア指数、米卸売在庫、フェイスブックCEO証言など
4月11日(水):機械受注、中消費者物価指数、FOMC議事録、北朝鮮最高人民会議など
4月12日(木):地域経済報告、米新規失業保険申請件数、ユーロ圏鉱工業生産指数など
4月13日(金):米ミシガン大学消費者信頼感指数、中貿易収支など
4月15日(日):北朝鮮金日成主席誕生日など
《TM》
提供:フィスコ