訪日客需要にカツ! 躍動高へ向かう「ナイトエコノミー」関連 <株探トップ特集>
―インバウンド需要活性化の切り札、日本の“夜”が変わる―
ナイトタイムエコノミーが盛り上がりを見せ始めている。ナイトタイムエコノミーとは、いわゆる「夜の経済活動」のことで、夜間も営業する飲食店やエンターテインメント施設はもちろん、医療やインフラなども含まれる。日本でも居酒屋やレストラン、バーなどは諸外国に劣らず遅くまで営業しているが、それらの国と比較して、夕食を食べ終えた午後8時から深夜0時ごろまでのエンターテインメントが少ないといわれている。訪日外国人客の「夜に遊べる場所が少ない」との声も聞かれ、インバウンド 需要のさらなる活性化のため注目が高まっている。
●訪日旅行者1人当たり消費額は世界44位と出遅れ
観光庁は、2017年5月の第12回観光戦略実行推進タスクフォースで新たに掲げた柱の一つである「楽しい国 日本」の実現に向けて、観光資源の活性化に関する検討を行っており、その検討テーマの中で、ナイトタイムエコノミーを挙げている。その背景には、海外からの訪日客が増加する一方、その1人当たりの消費額が伸び悩んでいることが背景にある。
同庁によると、17年の訪日外国人の数は2869万人で、周知の通り5年連続で過去最高を記録した。また、訪日外国人旅行消費額も4兆4162億円(前年比17.8%増)となり、こちらも過去最高額を更新している。ただし、1人当たりの旅行支出は15万3921円で16年の15万5896円から1.3%減少しており、15年の16万7696円からは2年連続の減少となった。
世界的に見ても、旅行者1人当たりの消費額は大きいとはいえない。16年の実績で海外からの旅行者数(2404万人)は世界16位だが、旅行者1人当たりの消費額は世界44位に過ぎない。これを活性化させる策として、ナイトタイムエコノミーの強化が求められている。
●英国は「安心して夜遊びができる街」にお墨付き
一方、欧米を中心とした諸外国ではナイトタイムエコノミーに積極的だ。特に力を入れている英・ロンドンでは、ミュージカルは夜8時と遅めの開演が多い。美術館でも深夜0時近くまでイベントが行われているが、これを支えているのが、国が「安心して夜遊びができる街」にお墨付きを与えるパープルフラッグと呼ばれる制度だ。
これは、ナイトタイムエコノミーが繁栄していると認められる地域に対して付与を行う地域認定制度で、犯罪や反社会的行為の抑制、アルコールと健康対策、わかりやすい交通手段など7つの項目を総合的に評価して認定している。また、ロンドンでは16年に金・土曜日に限り地下鉄の24時間運行を開始しており、これを後押ししている。
日本の観光庁の資料によると、ロンドンの夜間市場は年間263億ポンド(約4兆円)の経済効果があり、125万人の雇用を創出しているとある。また、楽天 <4755> の三木谷浩史社長が代表理事を務める新経済連盟の資料では、英国の夜間産業は国全体の約6%の収入を生み出しているという。仮にこれを日本に当てはめると、約80兆円の収入を生み出すことになり、大きな経済効果の創出が期待できるナイトタイムエコノミーの振興が叫ばれるゆえんとなっている。
●バスが夜間の主力交通手段になる可能性
日本でも16年6月に風営法を改正し、これまで禁止されていた深夜0時以降の遊興が営業許可の取得により可能となったが、公共交通機関の終日運転などが整備されていないことから、ナイトタイムエコノミー市場の活性化を妨げているといわれている。
確かに、メンテナンスのことなどを考慮すると東京の地下鉄の24時間運行は難しいと思われるが、そこで注目されるのがバスだ。
自民党の「時間市場創出(ナイトタイムエコノミー)推進議員連盟」は昨年12月、中間提言をまとめたが、ここでも鉄道とともにバスの運行時間延長を提言している。バスが夜間の主力交通機関となれば、東京急行電鉄 <9005> 、京浜急行電鉄 <9006> 、阪急阪神ホールディングス <9042> 、南海電気鉄道 <9044> 、京阪ホールディングス <9045> などグループなどの傘下の民間バス会社にとって商機となる。東京の渋谷区や港区でコミュニティーバスを運行する富士急行 <9010> も同様に商機があろう。
●アミューズがサムライ&忍者アクションを企画
また、ナイトタイムエコノミーに欠かせないのは、エンターテインメントだろう。品川プリンスホテルでは、アルゼンチンのパフォーマンス集団であるフエルサ ブルータのエンターテインメントショー「WA!」の公演を行っているが、同演目は金曜日の開演が午後8時となっている。最新のテクノロジーや道具を駆使し、超絶なサムライ&ニンジャアクションが繰り広げられる舞台だが、この企画・制作を手掛けているのはアミューズ <4301> だ。
このほかにも、夜間の野外コンサートや音楽フェスを主催するエイベックス <7860> や、夜間のスポーツ観戦やコンサートなどを運営する東京ドーム <9681> などもナイトタイムエコノミーの活性化に伴うエンターテインメントニーズの高まりで恩恵を受けそうだ。
●深夜のシミュレーションゴルフ解禁で恩恵受けるDDHD
このほか、居酒屋チェーンなどにも注目したい。最近では人手不足などで24時間営業を取りやめる飲食チェーンも増えているが、SFPホールディングス <3198> [東証2]では24時間営業の居酒屋「磯丸水産」を展開し、順調に店舗網を拡大させている。
また、体験型の飲食店やダーツ・ビリヤードバーなどを展開するDDホールディングス <3073> では、これまでにも戦国時代をモチーフにした居酒屋などを手掛けた経緯があり、エンターテインメントを求める訪日外国客のニーズにもマッチしそう。同社はシミュレーションゴルフの店舗も展開しており、前述の時間市場創出推進議員連盟の提言にもあった深夜のシミュレーションゴルフの解禁でも恩恵を受けよう。
さらに、バンダイナムコホールディングス <7832> 、セガサミーホールディングス <6460> 、KeyHolder <4712> [JQ]、共和コーポレーション <6570> [東証2]などアミューズメント施設運営企業も関連銘柄として挙げられる。同分野では、外国人の人気が高い「ウエアハウス」を運営するゲオホールディングス <2681> にも要注目だ。
株探ニュース