原油“緊迫の5月相場”、トランプがつける「中東火薬庫の火」 <コモディティ特集>

特集
2018年4月25日 13時30分

―イラン・ベネズエラの未来は砂塵の中へ、米シェールオイル産業は原油高に笑う―

●今年最大級の3つのテーマが集中

5月、6月は今年の 原油相場の正念場である。5月12日までにトランプ米大統領が対イラン制裁を再開するかどうかを判断するほか、5月20日にはベネズエラ大統領選が行われる。経済危機のベネズエラでは独裁的なマドゥロ政権が権力をさらに強化しようとしており、欧州連合(EU)は民主主義が脅かされるようなら追加制裁を辞さないとしている。米国を中心とした協調的な対ベネズエラ制裁が実行に移される可能性が高い。

6月は石油輸出国機構(OPEC)総会が行われる。先週末、サウジアラビアのファリハ・エネルギー相は、石油在庫は依然として高水準であると指摘したほか、「目標はまだ達成されておらず、雑音に耳を傾けてはならない」と述べた。ロシアのノバク・エネルギー相は「さまざまな協議内容があるなかで、6月の総会では現行の協調減産の削減について話し合うことはあり得る」と語っている。世界的な過剰在庫はほぼ解消されているにも関わらず、サウジは協調減産の延長を主張しているが、ロシアは明らかに乗り気ではない。

以上の3つは今年最大級のテーマである。それぞれが今年だけでなく、来年以降の相場を押し上げ続けるだけの馬力を十分に有しており、目が話せない。トランプ米大統領がツイッターで人為的な原油高を「容認できない」とし、OPECにも口撃の矛先を向けているが、人為的な原油高で最も潤っているのは米国のシェールオイル産業である。

●イラン制裁再開から中東危機激化の懸念

来月、トランプ米大統領は対イラン制裁の再開を決定する可能性が高い。米国やイスラエルはイランの弾道ミサイル開発を受け入れられないとしているが、イランは防衛手段であるミサイル開発を放棄しないだろう。EUがミサイル開発を続けようとするイランを説き伏せたうえで、トランプ米大統領を納得させるのは至難の業である。タイムリミットまで3週間を切っている。

イランのロウハニ大統領やザリフ外相が述べているように、米国が対イラン制裁を再開するのであればイランは核開発を再開する。核爆弾の材料となるウランの濃縮再開も示唆しており、中東が張り詰めた状態となることは間違いない。イランの核開発を米国やイスラエルが黙って見ているはずはなく、事態が緊迫化することは想像に難くない。イスラム教シーア派中心のイランに対抗するように、スンニ派のサウジアラビアも核開発に突き進む可能性が高く、中東危機はとめどなく連鎖する。サウジは平和的な核開発を標榜しているが、イランの動き次第では核の兵器利用も選択肢に入る。イランだけでなく、サウジの核開発は国際的に容認されるのだろうか。米国の対イラン制裁の再開は中東の火薬庫に核の脅威を加えることになる。

OPECを批判するトランプ米大統領は、イラン制裁を再開してもOPECが人為的に原油価格を押し上げていると非難するのだろうか。対ベネズエラ制裁を含めて、原油価格を支配しているのは米国である。米国と比較するなら、OPECの影響力は直接的であるにしても微々たるものではないだろうか。

(minkabu PRESS CXアナリスト 谷口 英司)

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