AI・IoT時代の新潮流 ターゲットは「予知保全」関連株 <株探トップ特集>
―300億個のネット接続が“リスク回避”への新たなる市場創出へ―
生産設備の老朽化や品質基準の厳格化、高齢化の進展に伴う熟練技術者の減少など、さまざまな課題を抱えている製造業で、「予知保全」への関心が高まっている。予知保全を行うには、常に機器を監視するシステムが必要で、各種センサーやネットワーク、データの保存・蓄積・分析などを構築することが不可欠。そうしたなか、IoT(モノのインターネット)や人工知能(AI)を活用したソリューションを提供する企業にビジネス機会が広がっている。
●ひとつの機械のダウンが生産設備全体に影響
「予知保全」とは、連続的に機器の状態を計測・監視し、その結果から故障や異常の発生する前ぶれを察知して、部品の交換や設備修理を行うこと。これにより予定外の生産ライン停止を回避することができる。定期的にメンテナンスを行う「予防保全」も壊れる前に保全するという点では同じだが、予防保全ではメンテナンス時期の到来前に故障が発生する可能性があり、まだ使える部品を交換してしまうケースも少なくない。対して予知保全では修理・交換をギリギリまで延ばせ、部品交換による無駄な費用やメンテナンスに伴う人件費を削減することが可能だ。
製造業を営む企業が予知保全に関心を寄せる要因のひとつが、長年培ったノウハウで故障の予兆などを検知することができる熟練技術者のリタイアが挙げられる。また、センサーや通信機能を持ったモノ同士が情報交換することにより互いに制御する仕組みであるIoTが普及し、ひとつの機械・装置のダウンによる影響が非常に大きくなっていることもある。総務省の試算では、2020年には世界で約300億個のモノがインターネットにつながると予測されており、予知保全サービスの需要は今後さらに高まることが予想される。
●東エレデバは7日からサービス提供開始
東京エレクトロン デバイス <2760> は、金沢エンジニアリングシステムズ(石川県金沢市)およびウイングアーク1st(東京都港区)と共同で、生産設備の予知保全を実現する「IoT&AIシステム構築ソリューション」を開発し、7日から提供を開始した。これは3社が持つ技術を相互に連携し、データ収集環境や設備の状態判断、可視化まで一気通貫で構築。データを工場内で自動分析・学習・モデル生成を実行し、生産設備の状態判断結果をクラウドで可視化することで、エッジコンピューティングとクラウドサービスの両方の利点を生かした効率的なシステムが実現できるという。
●NSWは製造業向けのサービスをスタート
翌8日には日本システムウエア <9739> が、製造業向け予知保全サービス「Toami Analytics for 予知保全」の提供をスタート。このサービスは、ディープラーニングの活用により正常な状態と異なる振る舞いの検知や、状態変化パターンによる故障カ所の予測を実現し、従来型の予知保全と比べてトータル的なメンテナンスコストを削減することができる。
●ユーシン精機はトラブル原因推定システムの運用開始
また、ユーシン精機 <6482> は今春から、新開発のAI技術を活用した取り出しロボットの稼働トラブル原因の推定が可能なシステムを社内向けに運用を始めている。このシステムを利用すると、顧客の生産現場に導入されている取り出しロボットにトラブルが発生した場合、従来よりも短時間で正確に原因究明と対策を行うことが可能になり、停止時間を短縮できることから生産性が向上するとしている。
●トーヨーカネツのグループ会社が10月にも市場投入へ
トーヨーカネツ <6369> グループのトーヨーカネツ ソリューションズは10月にも、IoTやAIの技術を活用した物流センター向けの予知保全サービスを市場投入する予定だ。ネット通販をはじめとする電子商取引(EC)市場が拡大し、当日配送も当たり前になった現在では物流センターの安定稼働が今まで以上に重要となっており、稼働停止リスクを回避できる同サービスへの期待は高い。
●安川情報、フィックスターズ、ヤマシナなども注目
このほかでは、故障予知サービス「MMPredict」を展開する安川情報システム <2354> [東証2]、子会社がIoTを活用した予知保全サービスを手掛けるアウトソーシング <2427> 、生産現場向けIoTソリューション「Olive@Factory」を提供するフィックスターズ <3687> 、予知保全にも対応可能な統合IoTデータ管理装置「OpenBlocks IDMアプライアンス」を取り扱うぷらっとホーム <6836> [東証2]、設備や機械に後付けするだけで予知保全が即時可能な「AIユニットソリューション」を手掛けるルネサスエレクトロニクス <6723> にも注目。
さらに、データソリューション事業を通して、AIや機械学習技術を活用した工場の異常検知や稼働監視、各機器の故障予測などを実現するための知見を蓄積しているALBERT <3906> [東証M]や、予知保全の用途に適した米PCB社製の低電圧駆動型加速度計を販売している東陽テクニカ <8151> 。また、日本ラッド <4736> [JQ]が開発し、ヤマシナ <5955> [東証2]が販売展開する製造業向けIoTソリューションパッケージシステムも見逃せない。
製造現場では、一時的なトラブルで設備や生産が“チョコチョコ止まる状態”に陥ることがある。これを減らすことが重要な課題のひとつとなっていることから、チョコ停検出記録システムを手掛ける図研エルミック <4770> [東証2]や、監視・録画用カメラ「チョコ停ウォッチャー」を販売する因幡電機産業 <9934> の商機拡大も期待される。
株探ニュース