NYの視点:米中貿易戦争は中国が勝利か、米朝首脳会談実施を左右、実現に懐疑的見方も

経済
2018年5月23日 7時38分

シンガポールで6月12日開催が予定されている米朝首脳会談がいよいよ1カ月未満に迫った。会談を控えて、韓国の文大統領が米国を訪問。トランプ大統領と会談をした。共同記者会見で、トランプ大統領は、実施に一定の条件があり、実施されれば、「素晴らしい」が、もし、実施されなくても「OKだ」と言及。

北朝鮮の金委員長と中国の習国家主席が2度目の会談後、5月に入り、北朝鮮が急に態度を一変させ、米国と韓国の合同軍事演習や「リビア方式」での非核化を主張したボルトン米安保担当大統領補佐官を名指しで非難し、南北閣僚級会談への出席を取りやめただけでなく、リビア方式の非核化を押し付けるのであれば、米朝首脳会談も中止するとした。トランプ大統領は会見で、北朝鮮の金委員長の態度の変化に遺憾を表明。

米国と中国はこの間、ずっと貿易協議を続けている。米国が対中で600億ドル規模の追加輸入関税の発動を当面見送る姿勢を示すと、中国は自動車に対する輸入関税率を25%から15%に引き下げることを公約。ムニューシン米財務長官は貿易戦争ではなく、貿易論争で、とりあえず停戦を宣言した。

ただ、中国通信機器メーカーの中興通訊(ZTE)がイランや北朝鮮を支援したとの理由で罰金を要求している問題での合意はまだなく、トランプ大統領は検討中だとしたにとどまった。米朝首脳会談を実現させるためには、トランプ米政権がZTEに対する制裁措置を緩和させる必要があると見らる。米商務省は4月、ZTEがイランや北朝鮮に対し通信機器を違法に輸出していたとして、米企業によるZTEへの製品販売を7年間禁止すると発表。トランプ大統領は、同社への制裁金が恐らく13億ドルにのぼる可能性を示唆した。ZTEに対する制裁緩和がなければ、首脳会談の実現も危ういと見る。北朝鮮のバックにいる中国との貿易合意に本格的な進展がない限り、米朝首脳会談の実現も難しそうだ。トランプ大統領は、「中国との貿易を考える際、中国が北朝鮮との平和を支援することを考える」としており、米中貿易協議と、安全保障問題が複雑に絡み合っていることがわかる。

トランプ大統領は、「中国との通商会談、開始したばかりで、満足していない」と不満を表明し、簡単に屈服する意向はないようだ。米韓は核兵器を搭載できるB52戦略爆撃機を投入した軍事演習を見送った。しかし、北朝鮮に対する圧力を大幅に緩和させるつもりもない。トランプ大統領は6月の北朝鮮との首脳会談も相当な確率で「うまくいかない」とし、会談が別の機会になる可能性をも示唆した。ただ、「北朝鮮の金委員長は、非核化に真剣だと思う、サミットに向けて前進」「非核化が実施されなければならない」「中国の習主席が平和に公約すると考えたい」とした。

貿易論争では中国が勝利したと、NYタイムズ紙は伝えている。貿易問題や地政学的リスクでドルも独歩高にはなりづらい。

《CS》

提供:フィスコ

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