6年の長い下落の終わり、プラチナに見えた“底入れの時” <コモディティ特集>
―供給不足へ転じたプラチナ、ファンド筋「売り玉」過多も上昇要因に―
●プラチナは底入れ見通し、需給改善で6年間の下落トレンドが終わる
プラチナ(白金)の現物相場は5月下旬に2017年12月以来の安値876.5ドルを付けたのち、下げ一服となり、6月に入ると、900ドル台で値固めの動きとなった。米連邦準備理事会(FRB)の利上げ見通しによるドル高や、欧州中央銀行(ECB)の量的緩和(QE)終了の先送りの見方や、イタリア・スペインの政局不安による ユーロ安が圧迫要因になった。
しかし、イタリアの新政権誕生やスペインで政権交代が円滑に行われると、先行き懸念が後退したことでユーロ安が一服し、プラチナも下げ一服となった。ただ米中通商協議が難航していることや、米国の鉄鋼・アルミニウムに対する関税適用で貿易摩擦に対する懸念が残ることが上値を抑える要因である。
一方、トムソン・ロイターGFMSが今月6日に発表した「プラチナ・グループ・メタルズ(PGM)・サーベイ2018」では、プラチナ価格は6年間の下落トレンドから徐々に上昇し、下半期には1,000ドル台を回復するとの見通しが示された。今回はプラチナのファンダメンタルズの行方や内部要因を確認する。
●GFMSは需給改善を予想
GFMS報告によると、今年のプラチナは11.8トンの供給不足が予想され、昨年の1.2トンの供給不足から不足幅を拡大するとみられている。供給は南アフリカの鉱山生産の減少を受けて238.0トン(昨年241.6トン)に減少するのに対し、需要はガラス・化学部門の増加を受けて246.7トン(同243.3トン)に増加する。また、在庫が3.1トン減少する見通しである。
プラチナの主な需要先である自動車触媒需要は101.6トン(同101.2トン)と小幅増、宝飾需要は66.4トン(同68.6トン)に減少すると予想された。自動車触媒需要は、欧州と日本での減少を北米や中国その他地域での増加が相殺し、宝飾需要は中国・日本で減少する。
欧州では独フォルクスワーゲンの排ガス不正問題を受けてディーゼル車離れが進み、自動車触媒需要が減少している。最近のニュースでは、日産自動車 <7201> が5月上旬、欧州でディーゼルエンジンを搭載する乗用車の販売から撤退する方針を固めたと伝えられた。英仏中など各国当局が環境への対応から販売規制を検討し、市場縮小が避けられないと判断したという。
自動車大手が電気自動車(EV)に経営資源を集中させるとともに、脱ディーゼルを進める動きが鮮明になり、プラチナの自動車触媒需要は伸び悩むとみられる。一方、南アの鉱山生産はこれまでの設備投資減少の影響などを受けて減少する見通しである。プラチナ価格の軟調を受けて鉱山会社の経営が悪化し、リストラが進められている。南アのシバニェ・スティルウォーターが英ロンミンの買収を表明しており、今後3年間でさらにリストラが進む見通しである。
●プラチナの内部要因は売られ過ぎ
米商品先物取引委員会(CFTC)建玉明細報告によると、ニューヨーク・プラチナでファンド筋の売り玉が増加し、売られ過ぎとなっている。ファンド筋の買い越しは年初のピークである1月30日時点の4万3,393枚から大幅に縮小し、5月22日時点で1,462枚と、2006年6月以来の低水準となった。直近の6月5日時点は2,146枚の買い越し。売り玉は4万3,093枚と過去最高を記録しており、900ドル台で値固めしたのち、レンジを上放れると買い戻し主導で上昇することになろう。
一方、プラチナETF(上場投信)残高はドル高見通しを受けて減少していたが、6月に入ってから欧米で投資資金が戻りつつある。6月12日時点はロンドンで11.24トン(5月末11.21トン)、ニューヨークで15.83トン(同15.54トン)に増加、南アで25.38トン(同25.42トン)に減少した。安値拾いの買いが入ると、下支え要因になる。
●パラジウムは大幅な供給不足見通し
パラジウムはGFMS報告で大幅な供給不足が予想された。今年は35.4トンの供給不足と、昨年の28.2トンから不足幅が拡大する見通しである。供給は南アやロシアの鉱山生産が減少するが、自動車触媒や宝飾品からの回収は279.0トン(昨年278.3)に小幅増加すると予想された。
一方、需要は自動車触媒需要の増加を受けて320.3トン(同315.6トン)に拡大する。在庫は5.9トン増加する見通しだが、供給ひっ迫が続くとみられている。需給のバロメーターとなるリースレート(貸出金利)が高止まりしており、今年のパラジウム平均価格は1,039ドルと、昨年の868.96ドルから大幅に上昇すると予想された。パラジウムが高止まりすると、プラチナの支援要因になるとみられる。
(minkabu PRESS CXアナリスト 東海林勇行)
株探ニュース