医療用3Dプリンター急成長、この実力株が活躍の舞台へ <株探トップ特集>

特集
2018年7月5日 19時30分

―参入企業相次ぐ、オーダーメード人工骨などで要注目場面に―

「設計図をダウンロードするだけでモノづくりができる」と数年前に世界的に注目を集めた3Dプリンター だが、ここにきてあまり話題を聞かなくなったように思える。日本では大学などの研究・教育などでの利用や、民間企業では大手の研究開発部門を中心として導入が進む一方、中小を中心に製造現場では金型や部品製造用途で導入がさほど進んでおらず、市場が停滞しているとの見方もある。

そうしたなか、市場を拡大させている3Dプリンティングの市場がある。それは医療分野で、IT専門調査会社のIDC Japan(東京都千代田区)が今年2月に発表した「国内3Dプリンティング市場 産業分野別予測」によると、今後大きな成長が期待できる分野として医療と教育を挙げており、特に医療用の3Dプリンティング市場は2016年から21年にかけて、年平均18.5%伸びるとしている。

●3Dプリンターでより早く安価な臓器モデルを造形

3Dプリンタ―が普及し始めて以降、医療や福祉分野への活用は比較的早い段階から進められてきた。

3次元データをもとに3Dプリンターで作製された精密な臓器モデルは、既に医師の治療方針の決定や医療教育の現場などで多く見られるようになった。3Dプリンターを活用することで、従来より早く・安価に臓器モデルを作れるほか、軟らかい樹脂を使うことで、切開や縫合など手術のシミュレーションにも利用できるのがその理由だ。そのほか、入れ歯やマウスピース、義肢などにも利用されている。

また、体内埋め込みデバイスの造形や生体組織の造形などの研究開発も進められており、再生医療の分野で3Dプリンターが活躍する日もそう遠くはないだろう。

●医療用3Dプリンティングに参入企業相次ぐ

上場企業も早やくから3Dプリンターの医療・福祉分野への活用を進めている。帝人 <3401> は15年に人工関節のサービスビューロ(生産受託)であるナカシマメディカル(現帝人ナカシマメディカル)に資本参加し、3Dプリンターの医療分野への活用に乗り出している。16年5月には帝人ナカシマメディカルとHOYA <7741> 子会社のHOYA Technosurgicalが共同開発したチタン製人工頭蓋骨「クラニオフィット」の保険適応が了承されたが、これは患者の移植部位をスキャンし3Dプリンターで形成することで、欠損部位に応じたオーダーメードの人工骨の作製を可能にするというもの。医師が手術の現場で調整する手間が省けるのが特徴だ。

また、新東工業 <6339> は昨年10月、セラミックス3Dプリンターメーカーの仏3Dセラム(現スリーディーセラム・シントー)を買収した。3Dセラムの製品は大型で複雑な形状を造形できることから人工骨、人工歯、人工関節などの医療用材料や航空機分野で実績があり、今後の展開が期待されている。

このほか、ミマキエンジニアリング <6638> は15年に3Dプリンター事業に参入している。フルカラーUV硬化インクジェット方式の3Dプリンターで、医療用などへも応用ができることから要注目だ。

●サービスビューロ展開も増加

また、装置や材料のメーカーが川下に当たるサービスビューロに参入する動きもみられる。

JSR <4185> は昨年、医療用3Dソフトウェア開発のレキシーを買収した。レキシーはCTやMRI診断で取得したデジタル画像データから骨格や臓器の3Dデータを作成し、手術前に患者の手術計画を作成する3D手術シミュレーション技術に強みを持っており、JSRの3Dプリンティング技術や医療用材料とのシナジーが期待されている。またJSRでは16年からSHCデザイン(神奈川県茅ケ崎市)などと共同で、3Dプリンター製の安価な義足を共同開発している点も注目したい。

JMC <5704> [東証M]は3Dプリンターを駆使した造形サービスを提供しており、患者のCT・MRIデータから骨や臓器などの部位を抽出し、医療用実体モデルを製作している。光造形やナイロン造形、石膏造形などさまざまな出力方式に対応したのが特徴で、このほか“動き”をつけた医療トレーニングキットも製造する。さらに、大阪大学などと共同で開発した心臓カテーテルトレーニングシステム「HEART ROID」も展開しており、今後の普及が期待されている。

キヤノンマーケティングジャパン <8060> も16年からCTなどで撮影した画像データからシミュレーション用の骨などを造形するサービスを始めており、関連銘柄の裾野は広い。

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