揺るぎなき“買い方有利”、4-6月決算シーズンに向け上昇基調続く <東条麻衣子の株式注意情報>
7月6日の米中追加関税発動を受け、マーケットの雰囲気は一変した。前週末および週明けの日本、米国、中国市場の動向を見る限り、貿易問題についてはいったん出尽くしとなり、いよいよ4-6月決算発表シーズンに向けて業績相場が到来すると考える。
確かに米中の追加関税がもたらす今後の経済への影響は未知数ではあるものの、7月9日に日銀から発表された地域経済報告「さくらレポート」は、現状は売りにくい経済環境にあることを示唆している。
■さくらレポートで注目すべき2つのポイント
「さくらレポート」によると、全国9地域すべてで「拡大」「緩やかな回復」などとした前回(4月)の景気判断が据え置かれた。報道では2015年10月以来、2年9カ月ぶりに全地域の景気判断が維持されたことに焦点が絞られたが、同レポートで注目すべきは(1)「設備投資」が全ての地域で増加していること、(2)「貸出残高」が法人、個人向けともに増加傾向にあることだろう。
この2点からは海外需要を背景に、積極的に融資を受け、設備投資に資金を振り向けている日本企業の姿がうかがえる。
経営が慎重かつ保守的とされる日本の企業が、将来の収益拡大を目指して強気の投資を維持しているわけであり、現段階ではその業績の先行きについて過度に懸念を抱く必要はないと考える。
■“適温相場”は続く
消費者物価指数の発表が7月10日に中国、12日にドイツ・フランス・米国で、そして20日には日本で予定されている。
原油価格の上昇を受けて各国の消費者物価指数は上昇傾向となろうが、基調としては緩やかなものにとどまろう。世界では製造業の生産拠点を低賃金の途上国に移し、低コストで生産・販売を行うグローバル化が進展しており、これが物価や賃金の上昇を緩やかなものに抑えている。
金利の上昇要因でもある物価の上昇が緩やかであることは、マーケットにとって居心地の良い“適温相場”の環境が保たれることを意味する。
■決算発表シーズンに向け業績相場の号砲
先週までの日本株の下落に関しては、7月3日配信の当コラム「急落の影に日銀あり? “不発ETF買い”と“投信決算”から見える点と線」で指摘した通り、投信の分配金捻出に伴う処分売りも影響を及ぼしたと思う。
積み上がっている海外筋の空売りの買い戻しやETFの分配金の再投資を踏まえると、ここからしばらくは堅調な地合いが続きそうだ。
筆者は7月下旬から本格化する4-6月決算の発表シーズンに向けて上昇基調が続くと予想する。
日本に先駆ける形で今週から米国で4-6月決算の発表が始まるが、米調査機関ではS&P構成銘柄の利益は前年同期比20%増と予想している。ただし、この利益予想については保守的なケースがみられ、決算発表が本格化するにつれて上方修正されることも多い。米国の良好な決算内容を受け、日本の企業業績全般への期待感の高まりとともに、関連銘柄への買いが刺激される展開も想定されよう。
注意しなければならない点があるとすれば、4-6月期決算が良好な内容であったとしても、通期予想にどの程度、貿易摩擦問題などの影響を織り込んでくるか、である。
とはいえ、先に挙げた景気動向や需給要因などを考えるのであれば、買い方優位の相場は揺るがないと判断する。
◆東条麻衣子
株式注意情報.jpを主宰。相場変調の可能性が出た際、注意すべき情報、懸念材料等を配信。
■ 株式注意情報.jp http://kabu-caution.jp/
■ Twitter https://twitter.com/kabushikichui
株探ニュース