田部井美彦氏【夏枯れかサマーラリーか、8月相場をずばり読む】(2) <相場観特集>

特集
2018年7月30日 19時45分

―日銀政策決定会合後に広がる日本株市場のシナリオは―

週明け30日の東京株式市場は、前週末の米国株の軟調を受け下値模索の展開を余儀なくされた。米国ではナスダック総合指数の下げが顕著でその影響が懸念されたが、為替の円高圧力が限られたこともあって、売り一巡後は押し目買いも観測された。前週末から実質8月商いとなっているが、ここから夏枯れとなるのかそれともサマーラリーとなるのか、投資家にとっても気を揉む相場が続く。今週はあすの日銀の金融政策決定会合の結果が重要スケジュールとして意識されているが、果たしてその後の相場の行方はどうか。先読みに定評のある市場関係者2人に今後の見通しと物色の方向性について話を聞いた。

●「日経平均2万2500円を軸にしたボックス相場に」

田部井美彦氏(内藤証券 投資情報本部 投資調査部長)

目先的には、あす31日まで開催される日銀の金融政策決定会合の内容によって左右される相場環境にある。金融政策自体が変更される可能性は少ないものの、日銀がETF(上場投資信託)の購入配分を日経平均連動型からTOPIX連動型へシフトするとの観測が浮上している。もし、日経平均連動型への購入配分減少が現実のものとなった場合、株安・円高が意識されることになる。変更がなければ、一時的に買い戻される可能性もあり、いずれにせよ波乱展開の覚悟が必要だ。

ここまで明らかになった4-6月期決算の内容をみると、総じてまずまず良好な内容といえそうだ。ただ、好業績銘柄への株価面でのポジティブな反応に継続性が乏しいのが気に掛かる。日銀によるETFの購入配分の見直し問題は、今回の金融政策決定会合で変更がなくても、先行きに懸念が残る。もう一つの上値圧迫要因は、中国の足もとの景気動向にやや不透明感が出ている点で、建設機械やFAなどをはじめとした設備投資関連の機器や自動車などの需要に見極めが必要だ。

8月1ヵ月間の相場を見通すと、好業績銘柄への個別物色の勢いは増すものの、日経平均株価が2万3000円を大きく突破して上昇するのは難しそうだ。ただ、下値も限定的で、5日の安値2万1462円95銭を下回るような急落はなさそうだ。2万2500円を軸としたボックス相場を見込んでいる。

個別銘柄では、ソニー <6758> に期待したい。19年3月期上期(4-9月)は、有効画素数4800万画素を実現したスマートフォン向けの積層型CMOSセンサー商品化に向けた投資がやや利益を圧迫するものの、下期以降は好採算のゲーム関連事業が利益成長を牽引することになりそうだ。さらに、信越化学工業 <4063> の好業績に改めて注目したい。同社の第1四半期(4-6月)は過去最高を更新したが、なかでも塩ビ・化成品と半導体シリコンの2大事業が貢献している。為替前提も1ドル=105円と保守的で、19年3月期通期業績の増額修正に期待が掛かる。システム開発と電子コミックを事業の柱としているインフォコム <4348> [JQ]も関心を集めそうだ。電子コミックでは、大手漫画海賊版サイト閉鎖が追い風となる。システム開発では、医療向けで放射線関連情報管理の需要拡大が見込まれる。

(聞き手・冨田康夫)

<プロフィール>(たべい・よしひこ)

内藤証券シニアアナリスト。株式市況全般、経済マクロの調査・分析だけでなく、自動車、商社、アミューズメント、機械などの業種を担当するリサーチアナリストとして活動。年間200社程度の企業への訪問、電話取材、事業説明会への参加などを通して「足で稼ぐ調査・情報の収集」に軸足を置いている。

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