NYダウ“月末安”アノマリーに要注意、水面下の売り材料に浮上気配 <東条麻衣子の株式注意情報>
4-6月期決算発表が本格化し、個別では買われる銘柄も散見されるものの、 日本の株式市場全体では上値は重く、上海総合指数や米国市場にらみの展開が続いている。
■NYダウに顕著に現れた今年特有のアノマリー
米国と日本の株式市場はともに好決算を発表した銘柄への買いに下支えされている。決算発表を通過した後の8月相場は、日本株主体で上昇を演じるような材料に乏しいこともあり、海外の動静により左右される展開が続くのではないだろうか。
筆者は注意すべきものとして、今年の NYダウにみられる“アノマリー”ともいうべき特有の動きを指摘したい。
3月以降、NYダウの推移で顕著になったパターンがある。月の半ばに向けて上昇し、その月末から翌月初めに向けて下落するという相場の動きである。
NYダウの3月の動きを振り返ると、3月2日2万4217ドルを安値に上昇に転じ12日に高値2万5449ドルをつけ、その後、4月2日の安値2万3344ドルに向けて下落している。
4月はそこから再び上昇し、4月17日の高値2万4858ドルで頭を打ち、5月3日の安値2万3531ドルまで下落。
5月は5月3日安値から切り返し、21日の高値2万5086ドルまで上昇。その後、29日の安値2万4247ドルまで下落。
6月は6月11日の高値2万5402ドルまで上昇。その後、28日の安値2万3997ドルまで下落している。
このように月半ばに向けて上昇、その後、月末ないしは翌月初めまで下落という動きが繰り返されてきている。
7月に関しては決算を受けた買いの影響もあってか同様の動きは見られなかったものの、好業績を発表する企業が多かったにも関わらず、上値は押さえられて限定的だったといえるのではないか。
このNYダウの推移には、パッシブ運用を行うファンドなどが現金配当を手当てするために月末にかけて利益確定を行ったことが背景にあると考えられる。米中の通商交渉の行方が依然不透明で、積極的には株式の売買が行い難い状況が続いている。その分、こうしたファンドの動きなどが例年に比べて相場に反映されやすくなっているのだろう。
発表された決算を見る限り、日米ともに好業績のものが多く、下値は切り上がってきているが、8月の決算通過後に商いが細った場合、米国市場でこの動きが一層顕著に現れる可能性があるのではないか。
■米中貿易摩擦の解消は遠い?
商いを細らす要因として懸念される米中貿易摩擦だが、筆者は貿易赤字額や 元安などを背景に中国側が妥協する形で遠くない将来に解決の兆しがみえるのではないか、と考えていた。
だが、米国農務省の発表するUSDA輸出成約高をみる限り、米国大豆の中国への輸出は依然として成約していない。
米国大豆価格の下落を考慮すると、元安や追加関税を加味しても米国大豆を輸入することによる影響は限定的と考えられる。にもかかわらず、米国産大豆の買い入れに動かない中国側の姿勢は「妥協をしない」意思の表示であり、まだしばらくは米中貿易問題は解決することはないのではないだろうか。
決算通過後、買い材料難・NYダウのアノマリー・米中貿易摩擦と売り材料がクローズアップされる局面が到来してもおかしくはない。
◆東条麻衣子
株式注意情報.jpを主宰。相場変調の可能性が出た際、注意すべき情報、懸念材料等を配信。
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