イランに“屈服”迫る米トランプ大統領、制裁と従属の行方は <コモディティ特集>

特集
2018年8月15日 13時30分

―経済情勢悪化進むイラン、対抗策なく対米従属の選択肢も―

米国はイランに対する制裁の第1弾を今月から開始した。この制裁が始まる前からイランの通貨であるリアルは暴落しており、客観的な為替レートは得られないものの、対ドルで過去最安値を更新している。

イラン中銀によると、6月の消費者物価指数(CPI)は前年比+13.7%に加速した。食料品・飲料の物価上昇率が目立って伸びており、自国通貨安を背景とした輸入物価の上昇は今後さらに消費者を痛めつけていくだろう。消費者の怒りは自国政府やトランプ米大統領に向けられ、イランを不安定にしていく。

●イランが米国に屈するか見定める期間

石油取引を含む対イラン制裁の第2弾は11月から始まる。11月までの猶予期間はイランと取引をする企業が代替取引先を探す期間であるだけではなく、イラン政府が米国の要求を受け入れるかどうか検討する期間でもある。

米国はイランに対して、紛争地域であるシリアやイエメンに対する介入中止、核開発の制限強化の確約、弾道ミサイル開発プログラムの停止を求めており、イランが米国に降伏するかどうか見定める段階にあるといえる。イランのロウハニ大統領らの判断を待つしかない。

トランプ米大統領は前提条件なしにロウハニ大統領との首脳会談に応じるとしているものの、会談をせざるを得ない状況を作り出しているのは、核合意から一方的に離脱した米国である。トランプ米大統領は経済的にイランを攻撃しつつ、ロウハニ大統領に屈服するよう迫っている。ロウハニ大統領は「(イランを)ナイフで刺しておきながら、対話したいと述べるのであれば、まずはナイフを取り下げなければならない」と述べたほか、米国が核合意に復帰するならば交渉の用意はあるとし、今のところは米国の高圧的な態度に屈していない。

●イランに有効な手札なし、従属も選択肢

イランが強がるにしても、米国の制裁の影響は甚大である。11月からの制裁によって石油頼みのイラン経済が立ち行かなくなるのは目に見えている。イランが国際的な核合意の枠組みにとどまりつつ、軍事演習などで石油輸出の要所であるホルムズ海峡の閉鎖を警告するのは有効な打開策にみえない。中国と貿易戦争を繰り広げている米国が、イランが武器として利用しようとしている原油高にひるむ可能性はほぼない。イランが米国と対等に交渉ができる手札はなさそうだ。

石油を含めた経済制裁が始まる前であれば、イラン経済の立て直しは比較的容易だと思われる。原油輸出という生命線が絶たれた後では、困難の度合いが異なる。防衛のため弾道ミサイルの開発は必要であり、この上なく屈辱的であるにしても、経済的な痛みと引き換えの従属は選択肢の一つである。トランプ米政権と張り合うのは現実的ではない。

(minkabu PRESS CXアナリスト 谷口 英司)

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