サムティ Research Memo(9):地方大都市圏でも開発を拡大させ、中長期的な安定拡大を目指す

特集
2018年8月21日 15時09分

■成長戦略

1. 中長期経営計画

サムティ<3244>は、2016年11月期から2020年11月期までの中長期経営計画(5ヶ年)を推進している。外部環境(マイナス金利政策の導入、インバウンド需要の拡大等)や内部環境(事業エリアの拡大、J-REIT事業への進出等) などを踏まえ、2020年11月期の目標として、売上高1,000億円水準、経常利益100億円水準、EPS 300円以上、ROE 15%以上、ROA7%以上、自己資本比率30%以上を目指している。特に、売上高よりも利益成長を重視する方針である。

もっとも、足元業績が好調に推移してきたことにより、売上高目標を除けば、2018年11月期にも2年前倒しで達成する可能性が高くなっており、極めて順調に進捗していると評価できる。

2. 今後の方向性とその進捗

同社は今後の成長戦略として、(1)SRRを中心としたビジネスモデルの構築、(2)地方大都市圏における戦略的投資、(3)ホテル開発事業の展開の3つの軸を掲げている。また、財務戦略として、資本効率の維持と財務基盤の確立を目指す。

(1) SRRを中心としたビジネスモデルの構築

順調に立ち上がってきたSRRを中心として、仕入、開発、賃貸、販売、販売後のマネジメントフィー収入までの一気通貫型のビジネスモデルをさらに進化させる方針である。具体的には、開発物件をSRR 向けに優先的に供給するとともに、供給後のアセットマネジメントやプロパティマネジメント業務を受託することにより安定的なフィービジネスの確立を目指すものである。すなわち、SRRの成長を同社の成長に結び付ける戦略と言える。SRRについては、2018年1月の第三者割当増資により資産規模1,000億円が射程内に入ってきたが、更なる成長に向けて物件供給を進めていくとともに、安定的なアセットマネジメント手数料を拡大する方針である。

(2) 地方大都市圏における戦略的投資

5年間における総投資額として約3,000億円(土地+建築費)を計画している。具体的な施策としては以下のとおりである。これまでの仕入れ実績(開発用地及び収益不動産)は、2016年11月期が約405億円、2017年11月期が約490億円となっており、2018年11月期の計画は約440億円を予定しているが、今後さらに投資ペースを加速する方針とみられる。

a) 開発エリアの拡大

これまで首都圏及び関西圏を中心としてきたが、北海道や中部、九州等、各支店エリアにも開発エリアを拡大する。

b) 開発アセットの多様化

アコモデーションアセット(賃貸住宅、ホテル及びヘルスケア施設等の賃貸住宅周辺領域の不動産)を対象としているSRRは、ホテルの組み入れも可能(保有資産残高の20%まで)となっており、各支店エリアを中心としてホテル開発にも積極的に取り組む。

c) 収益不動産や再生不動産

収益不動産や再生不動産については、地方大都市圏の利回りの高い物件の発掘に取り組むとともに、回転を効かせることでキャッシュフローを確保する。

(3) ホテル開発事業の展開

前述した総投資額約3,000億円のうち、約530億円についてはホテル開発事業(土地+建築費)に投資する計画である。具体的には、北海道エリアに50億円(2棟から3棟)、首都圏に190億円(10棟程度)、中部圏に50億円(2棟から3棟)、関西圏に130億円(5棟から6棟)、九州圏に110億円(5棟程度)を予定している。また、「S-PERIAホテル」を新たなブランド名として展開するとともに、ビジネス及びインバウンドの両方の需要を取り込む方針であり、2018年3月28日には「エスペリアホテル博多」がオープンした。ただし、ホテル開発事業への投資については、地域によって物件を厳選の上、慎重に進める構えとしている。

(4) 財務戦略

一定の財務健全性を保持しつつ、持続的な成長を実現する方針である。具体的には、2020年11月期における自己資本比率30%以上を目指す一方、ROE15%以上、ROA7%以上の資本効率を維持する。また、有利子負債コストの削減やネットD/Eレシオ2.0倍以下についても目標に掲げている。

(5) その他

海外事業への進出についても取り組む。その一環として2016年9月には、ベトナムの主要都市ホーチミンにて不動産開発・賃貸事業を営む不動産会社を投資ターゲットとするファンドへの出資(500万米ドル)を行った。本件を海外事業の足掛かりとし、高い成長が期待できるASEAN諸国を中心に現地法人等との共同開発や賃貸用不動産の購入・保有、さらには海外支店または子会社の開設を視野に入れ、更なる海外事業展開の拡大を図っていく。

■株主還元

利益成長及び配当性向の引き上げの両面で増配余地は大きい

同社は、株主に対する利益還元を経営の最重要課題の1つであると認識しており、配当についても、業績を反映させるとともに、今後の事業計画や財政状態を総合的に勘案した上で実施する方針としている。

2018年11月期の期末配当については、前期比5円増配の1株当たり52円(配当性向20.1%)を予定している。

同社は、配当性向30%を目指す計画であり、弊社では、今後も利益成長と配当性向の引き上げの両面で増配の余地は大きいとみている。また、EPSの増大による株主価値の向上も目指している。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田 郁夫)

《NB》

提供:フィスコ

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