馬渕治好氏【立ちはだかる2万3000円の壁、突破はいつか】(1) <相場観特集>

特集
2018年9月3日 18時30分

―貿易摩擦問題と上海株動向などがもたらす影響度合い―

名実ともに9月相場入りとなった週明け3日の東京株式市場は、売り圧力の強さが改めて意識された。貿易摩擦問題や中国株の動向などネガティブな余韻を引きずるなか、越えそうで越えられない日経平均株価2万3000円の壁。鉄壁のボックス上限ラインをブレークするのは果たしていつか。そして、注目しておくべき今のマーケットの急所はどこか。相場の分析や先読みに定評のある、市場関係者3人にここからの見通しを聞いた。

●「足もと逆風も反転近し、月内2万4000円視野」

馬渕治好氏(ブーケ・ド・フルーレット 代表)

日経平均2万3000円ライン突破にチャレンジして押し戻されるのはこれで4度目となるが、足もとの東京市場は値動きこそ弱いものの、ここは弱気になる場面ではない。下値では押し目買いの動きも観測され、ここからの日経平均は底堅さを発揮しそうだ。下値メドは2万2000円台半ばとみている。

米国を軸とする貿易摩擦の問題は相場において上値を買わない理由にされているが、大方は織り込み済みだ。カナダとのNAFTA(北米自由貿易協定)の見直し交渉は8月31日に合意できなかったが、5日に再交渉する方向にある。9月中に合意できればよく、時間的猶予はあるうえ、米国もカナダも前向きに交渉を進める構えをみせており、悲観視する段階にはない。一方、米国は対中国2000億ドル分の追加関税について6日まで意見を公募しているが、仮に2000億ドルの追加関税が発動されたとしても、この件に関しては既に織り込まれており相場の撹乱要因とはならないだろう。

中国・上海株 の低迷については、2016年1月の安値2655を下回るまでは許容範囲であり、中国当局の買い支えも考慮すればここを下回るような下落は見込みにくいと考えている。東京市場では連鎖安が懸念されているが、影響は限定的なものにとどまるだろう。

日米ともに企業のファンダメンタルズは良好で、日本株は米国株と比較しても出遅れ感が際立っている。今はモメンタムトレーディングなどの影響で上昇トレンドの勢いが鈍ると出てくる機械的な売りも観測されており、これがボックス相場の往来を招いているとの見方もある。しかし、経済や企業実態から離れたところでの株価形成は、どこかで吹っ切れる局面が訪れる。9月中に2万3000円ラインを明確に突破して、その勢いで2万4000円大台を視界に入れる可能性は十分にあるとみている。

物色の方向性としては、全体底上げ的な動きとなることが予想される。特に下期の収益改善度の高い新日鉄住金 <5401> をはじめとする鉄鋼株などに着目。また、為替市場では今後1ドル=115円前後のドル高・円安トレンドを予想しており、関税引き上げの動向に注意しながらも、トヨタ自動車 <7203> など自動車株の押し目買いに妙味がありそうだ。

(聞き手・中村潤一)

<プロフィール>(まぶち・はるよし)

1981年東京大学理学部数学科卒、1988年米MIT修士課程修了。米国CFA(証券アナリスト)。マスコミ出演は多数。最新の書籍は「投資の鉄人」(共著、日本経済新聞出版社)。日本経済新聞夕刊のコラム「十字路」の執筆陣のひとり。

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