倉持宏朗氏【立ちはだかる2万3000円の壁、突破はいつか】(2) <相場観特集>
―貿易摩擦問題と上海株動向などがもたらす影響度合い―
名実ともに9月相場入りとなった週明け3日の東京株式市場は、売り圧力の強さが改めて意識された。貿易摩擦問題や中国株の動向などネガティブな余韻を引きずるなか、越えそうで越えられない日経平均株価2万3000円の壁。鉄壁のボックス上限ラインをブレークするのは果たしていつか。そして、注目しておくべき今のマーケットの急所はどこか。相場の分析や先読みに定評のある、市場関係者3人にここからの見通しを聞いた。
●「貿易摩擦の行方が相場左右、業績相場との綱引き状態に」
倉持宏朗氏(サクソバンク証券 チーフマーケットアナリスト)
東京株式市場は、貿易摩擦の行方が全体相場を左右しそうだ。
世界の投資資金が業績相場へすんなりと向かうようなら、日経平均は上値を試す展開が期待できるだろう。しかし、米中貿易摩擦の行方が不透明で、トルコリラなど新興国通貨の動向が懸念されるリスクオフ状態が続くのなら、日経平均も上値が重い状況となりそうだ。
相場が上値を試すには、オプション市場のコール(買う権利)の出来高を誘発し、現物株市場の売買代金も3兆円を超すような状態となることが必要だろう。
今後1ヵ月程度の日経平均の想定レンジの上値は2万3300円前後、下値は2万2200円程度とみている。2万3000円台を固める展開となるようなら、コールの売り方の買い戻しも見込め、10月相場にかけ強調展開が期待できるだろう。
今月は米国の中国に対する2000億ドルの追加関税の動向や、日米の閣僚級による通商協議「FFR」の2回目の会合、米国とカナダの北米自由貿易協定(NAFTA)を巡る協議などが関心を集めよう。9月は今後をみるうえでの重要な月になりそうだ。
中国・上海総合指数が下げ止まるかも注目ポイントだ。中国株の下落が続けば、香港や日本市場には外国人投資家からのヘッジのための売りが出てくることも予想される。
ドル円相場は、1ドル=110円20~113円00銭のレンジを見込む。貿易摩擦の懸念が後退するようなら、113円前後へ円安・ドル高が進むこともあり得るだろう。
(聞き手・岡里英幸)
<プロフィール>(くらもち・ひろあき)
東海東京証券(エクイティ部長・株式業務統括)、ベアー・スターンズ証券(株式営業部長・マネージングディレクター)、クレディ・リヨネ証券(グローバルエクイティーズ営業本部長・マネージングディレクター)など欧米投資銀行などで、国内外機関投資家及び国内外ヘッジファンド向けセールス及びセールストレーダーとして携わる。マーケットアナリストとしても国内外の主要メディアで取り上げられる。
株探ニュース