強気崩さぬ中国、掌中に握るは米国のアキレス腱か? <東条麻衣子の株式注意情報>

市況
2018年9月26日 20時00分

中国アリババのジャック・マー会長が「米中貿易摩擦は今後20年にわたって続く可能性に備えるべき」と警告した通り、米中貿易交渉において「中国が妥協する」との考え方は通用しないのかもしれない。

両国の相手国への輸出額を見れば、中国は圧倒的に不利であり、いずれ中国が譲歩して解決へと進むというのがマーケットにおけるメーンシナリオであり、筆者自身も同様に考えていた。

だが、9月21日に中国が貿易問題を巡る閣僚級協議を見送る姿勢を示すなど、依然として中国に妥協の姿勢はうかがえない。この背景には何があるのか。

■米長期金利上昇の背後にあるもの

米国長期金利は、9月17日に中国からの輸入品2000億ドル相当への追加関税発動が発表されたことを受けて、18日から上昇に弾みがつき、保険や銀行など金融セクターの株価を押し上げた。

米国が推し進める通商政策については米国債券への影響として2つの見方があった。世界貿易の縮小が懸念される中、「安全資産」として米国の長期国債が選好されるというのが一つ。もう一つは関税引き上げがインフレ率上昇を招き、金融引き締めが意識されて債券が売られやすくなるというもの。この2つの見方が綱引きをする中、危ういバランスを保ってきたように見える。

だが、細かくみると、7月6日に米国が中国への関税第一弾を発動した際に金利は小幅ながら上昇。その後引き戻されるも、8月23日の第2弾の発動で再び金利は上昇に転じ、今回の第3弾の発動で米長期金利は急上昇した。

一方、中国の7月の米国債保有額は77億ドル減少し、6カ月ぶりの低水準であったことが明らかとなっている。貿易摩擦をにらんで中国が償還期日を迎えた債券の再投資を政策的に停止した可能性も考えられる。

実際に中国の米国債保有はピーク時から減少しているが、債券の保有残高の発表は2カ月前のものであり、この仮説が正しいのかは今後発表される保有残高を確認していくしかない。ただ、トランプ大統領自身がFRBの政策に対して自身のツイッターでも述べている通り、米国にとって最大の弱みは金利の上昇である。依然として米国債の最大の保有国である中国はその弱みを握っているわけであり、通商交渉で対抗姿勢を崩さない理由もここにあると考えられるのではないか。

米国GDPや好調な株式市場を見る限り、現在の米長期金利の水準はさほど問題視する必要はないのかもしれない。とはいえ、好調な経済を背景にFRBは利上げを続けざるを得ず、同国のインフレ率や金利の動向については十分に注視する必要がある。

米国債券保有額トップの中国が、満期による償還分を米国債券に再投資しないだけでも金利上昇につながる可能性があることは念頭に置いておきたい。

■「見事なカウンター攻撃」は自信か、虚勢か?

中国共産党機関紙傘下の国際情報誌「環球時報」は17日付の社説で、摩擦の激化をはかる米国を批判するとともに「われわれはより見事なカウンター攻撃を楽しみにしている」「米国が感じる痛みは増え続ける」と論じている。

この“見事なカウンター攻撃”が米国債への再投資を人質にとることだとするならば、米国に対してボディブローのように効いてくる可能性がある。 (9月25日 記)

◆東条麻衣子

株式注意情報.jpを主宰。相場変調の可能性が出た際、注意すべき情報、懸念材料等を配信。

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