大谷正之氏【“一蓮托生”日米株式市場、次の展開はこうなる】(3) <相場観特集>

特集
2018年10月15日 20時00分

―日経平均400円超下落、再び押し寄せるリスクオフの波―

週明け15日の東京株式市場は大きく売り優勢に傾き日経平均株価は400円を超える下げとなった。前週末に大幅続落で始まったものの体勢を立て直し大引けはプラス圏で着地、同日の米株市場も主要指数が揃って切り返しに転じ、これで世界株安のトレンドは一区切りついたかにも見えた。しかし、今回の動乱相場は一筋縄ではいかないようだ。果たして米国株市場の急落は期間限定のガス抜きで終わるのかどうか。また、米国と一蓮托生の日本株市場の行方はどうなるのか。第一線で活躍する市場関係者にずばりその見解を聞いた。

●「4-9月期決算への好評価が相場底入れの原動力に」

大谷正之氏(証券ジャパン 調査情報部長)

米株式市場は、米中貿易摩擦など複数の不透明要因に対して目をつむりがちで、景気や企業業績の好調さをクローズアップして買い上がってきたことへの反動が出ているようだ。ただ、米中貿易摩擦による実質的なダメージの程度は依然として不明だ。また、現在報じられているように、米中間選挙で民主党が下院で過半数の議席を獲得して、いわゆる“ねじれ状態”が現実となっても、トランプ米大統領のこれまでのような過激な政策に抑制効果が発揮されると、前向きに捉えることも可能だ。

米長期金利の上昇傾向が、NYダウ平均株価の下落要因とされているが、米連邦準備制度理事会(FRB)の基本的なスタンスには変化はないと思う。それに、株価がある程度下落したことにより、景気動向に若干のスピード調整も加わって、今後の金利上昇がマイルドになる可能性もある。なにより、米国の国内総生産(GDP)成長率は3%を上回っており、株価は早晩上昇軌道に復帰することになりそうだ。

日本株については、ムニューシン米財務長官が13日、今後の貿易交渉のなかで日本にも通貨安誘導を封じる為替条項を求める意向を示したことで、外国為替市場で円高・ドル安が進行してリスク回避の売りが強まり、きょうの日経平均は400円を超える大幅な下落となった。円高進行への警戒感は継続するものの、今後4-9月期決算の発表が本格化して、予想通りの好調な決算や業績見通しが明らかになれば、その内容を評価して、全体相場にも底入れ機運が顕在化することになりそうだ。

注目できる物色テーマとしては、波乱相場のなかでも比較的海外要因の影響を受け難い内需系のなかから、国策でもある「人生100年時代」に注目している。政府は、超高齢社会への対策として高齢者の就業率アップと同時に、健康寿命の延伸を目指している。健康長寿促進を支援する企業や、遺伝子・再生医療研究用試薬に加え理化学機器販売などのメーカー、さらにはスポーツクラブを展開する企業などにも恩恵が広がりそうだ。

(聞き手・冨田康夫)

<プロフィール>(おおたに・まさゆき)

1960年生まれ。立正大学文学部卒、83年丸和証券入社、営業を経て96年から現職。日本テクニカルアナリスト協会 検定テクニカルアナリスト(CFTe)、AFP(日本FP協会認定)、(内閣府認証)NPO法人金融証券マーケットフォーラム理事。トレンドの芽をいち早くキャッチすべく、フィールド重視の調査を心がけている。

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