世紀の「大警備時代」がやってくる、ビッグイベント続き市場成長後押し <株探トップ特集>

特集
2018年10月18日 19時30分

ドローン・画像認識など“警備テック”も拡大に拍車―

サミットなどの大きな国際会議が開催されると注目が一気に高まる警備関連だが、足もとの業界を取り巻く環境は、人手不足を背景にした警備業務の外注の動きや、再開発に伴う新築ビルの警備ニーズなどで好環境にある点も忘れてはならない。来年予定されている「ラグビーワールドカップ2019」や20年に予定されている東京オリンピック・パラリンピック、さらにそれに伴い開催が予定されているイベントなどで警備需要はさらに高まると予想される。今後、好環境を背景にした成長シナリオの実現性が高まれば、関連銘柄への物色が本格化しそうだ。

●ニーズの多様化などで市場は拡大

全国警備業協会が年末に行っている調査によると、2017年の警備業界の売り上げ規模は3兆4761億円(前年比1.5%増)で、5年前の12年と比べて8.7%増と拡大傾向にある(警察庁「平成29年における警備業の概況」から)。また、2017年末の警備業者数は前年より114業者増の9548業者で、同じく5年前と比べて457業者増加している(同)。

売り上げ規模の拡大や業者数が増加しているのは、業界が活性化しているためだ。第3次産業活動指数(2010年=100)もこれを表しており、警備業の2017年の指数は115.7と全体の104.7を上回った。月次ベースでも11年5月以降、全体を上回って推移しており、業界の堅調ぶりがうかがえる。

警備サービスは従来の常駐警備から、事業所・家庭ともにITを利用した機械警備へのシフトに加え、ロボットドローン画像認識技術を活用した新たなサービスの提供などで市場が広がっている。また、防災対応や被災地支援、大規模イベント警備などニーズの多様化も進み、今後も市場は成長が期待できよう。

●セコムは中期で成長イメージ打ちだす

こうしたなか、決算発表シーズンを控えて、警備各社の業績への関心が高まっている。

業界最大手のセコム <9735> は、第1四半期(4-6月)の営業利益が296億9300万円(前年同期比1.1%増)だった。19年3月期通期では積極的な人員採用と基幹システム刷新のための先行費用が膨らみ、営業利益1265億円(前期比6.6%減)と減益を見込むが、第1四半期の進捗は順調だった。

同社は5月の18年3月期決算発表と同時に、19年3月期および20年3月期を投資フェーズとし、23年3月期に営業利益1550億円を目指すロードマップを発表した。これまで明示してこなかった中期の経営目標を明らかにすることで、成長イメージを打ち出した格好だ。

●ALSOKの中計は東京五輪に伴う上振れ余地あり

東京五輪に向けて設立された「東京2020 オリンピック・パラリンピック競技大会警備共同企業体」で、セコムとともに共同体代表を務めるALSOK <2331> は、第1四半期(4-6月)の営業利益が59億3700万円(前年同期比6.0%増)だった。主力の機械警備業務が伸長したほか、金融機関における総合アウトソースの受注が堅調に推移した。19年3月期は営業利益331億円(前期比9.9%増)を見込む。

同社もセコム同様、18年3月期決算発表時に中期計画を発表した。その席上で青山幸恭社長は「東京オリンピック以降も21年のワールドマスターズ関西、26年のアジア大会などイベントが目白押しにあるほか、都内の再開発も進む。われわれも総合安全安心サービス業の観点から、さまざまな分野へいろいろなサービスを提供する」と述べた。中計では21年3月期に売上高5000億円程度、営業利益400億円程度を目指すとしているが、これには東京五輪関連の売上高・利益を見込んでおらず、上振れの可能性がある。

●CSPは五輪期間中のJR東向けに過去最大の警備体制

JR東日本 <9020> 系のセントラル警備保障 <9740> は、9月に19年2月期連結業績予想の上方修正を発表しており、営業利益を25億2000万円から30億8000万円(前期比77.7%増)に引き上げた。今年6月に起こった新幹線内での殺傷事件を受けて、鉄道各社は警備を強化しており、これも業績拡大要因となったようだ。

同社は、21年2月期に売上高650億円、営業利益39億円を目指す中期経営計画を進めているが、2020年の東京五輪では前述の警備JVの幹事会社の一角として参画するほか、JR東日本向けに1日2000人規模の警備態勢を敷く予定。18年2月期決算の発表会で鎌田伸一郎社長(当時)は、「16年の伊勢志摩サミットの時でも最大動員は894人だった。2000人は当社過去最大規模で、しかも約2ヵ月間実施するので、今から体制づくりを進めている」とコメントしている。

●警備周辺機器にも市場拡大の恩恵

これら大手以外でも、アール・エス・シー <4664> [JQ]は、大型イベント運営の受託などで、8月に19年3月期連結業績予想を営業利益で5800万円から1億3000万円(前期比42.6%増)へ上方修正した。また、セコムグループで関西を地盤とする東洋テック <9686> [東証2]は19年3月期営業利益10億円(前期比4.3%増)と業績堅調を見込んでおり要注目だ。

このほか警備サービス会社ではないが、東京五輪に関しては、民間ガードマン1万4000人のほか、セキュリティーカメラ1万台、高度センサー1200式、X線検査機700台、セキュリティーゲートシステム150レーンなどが必要(組織委員会資料)とされており、これらに関連する企業にも警備市場拡大の恩恵は大きい。セキュリティーカメラのキヤノン <7751> や、あい ホールディングス <3076> 、池上通信機 <6771> のほか、防犯用センサー世界大手のオプテックスグループ <6914> 、オフィスなどにセキュリティーゲートの納入実績がある高見沢サイバネティックス <6424> [JQ]などにも注目したい。

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