来週の相場で注目すべき3つのポイント:米金利動向動向、米中経済指標、大型IPO上場承認
■株式相場見通し
予想レンジ:上限22500-下限22000円
来週の日経平均は22000円前半でのもみ合い継続が見込まれる。大方の予想通り、上院は共和党、下院は民主党が過半数を確保する形で米中間選挙を通過し、目先の不透明感は後退する形となった。ただ、米議会の「ねじれ現象」が改めて重しとして意識され始めている。その見方を織り込むには、まだ日柄を必要とするだろう。さらに、11月30日のG20首脳会議(ブエノスアイレス)に向けた米中貿易摩擦の動向も不安定材料だ。テクニカル的にも強気と弱気が交錯している。日経平均は、8日に25日移動平均線、200日移動平均線を回復したことで買いシグナルが一時点灯した。しかし、両線ともに右肩下がりの中でのブレイクで信憑性に欠け、9日は再び25日・200日線を割り込んで大引けとなり、不安定な動きとなった。本格反転相場への移行は22600円近辺を走る75日移動平均線突破が焦点となる。また、上昇してくる5日移動平均線、そして25日線、200日線がサポートできるかもポイントとなる。累積価格帯出来高で日経平均22500円近辺は戻り売りが膨らむ水準であり、ここを突破するには物色意欲の高まりが必要となってくる。
市場ムード好転のきっかけとなりえるのが、決算発表一巡による好業績株の選別買いと大型IPOだ。ソニー<6758>やトヨタ<7203>など決算を好感して買われた銘柄に買いが継続すれば、好業績銘柄の物色の裾野が広がってくる可能性が高まる。9日の海外市場で為替が一時1ドル114円台まで円安に振れたことも優良株にとっては追い風だ。加えて、東証が8日発表した、10月第5週(10月29日~11月2日)の主体別株式売買動向(2市場、金額ベース)で、海外投資家は小幅ながらも4週ぶりに買い越しに転じている。海外投資家の姿勢が小幅ながら買い転換となっただけでも需給的には大きなプラスだ。こうしたなか、一部経済紙で報じられたソフトバンクG<9984>の通信子会社・ソフトバンクの新規上場が12日にも東証により承認されるというイベントに関心が向かうことになりそうだ。市場からの資金調達額は2兆5000億円規模と推定されており、今年最大のIPO案件で、マーケットの需給に対する影響も大きい。一般的にIPO人気は中小型株、新興市場銘柄の人気化に繋がりやすく、大引けにかけては失速したものの、9日にマザーズ指数が一時10月18日以来となる1000pt台に乗せ、9日かけて6日続伸となったことは、物色の変化として注目されよう。
■為替市場見通し
来週のドル・円は下げ渋りか。9日発表の10月米生産者物価指数は市場予想を上回っており、14日に発表される10月米消費者物価指数(CPI)は2%台前半の上昇率を維持する可能性が高い。インフレ鈍化の思惑は後退しており、利上げ継続を期待したドル買いが入りやすい状況となりそうだ。ただ、1ドル=114円台は上値抵抗の水準とみられており、相応のドル買い材料が提供されない場合、ドル・円が114円をしっかりと超えて一段高となることは難しいとみられる。
FRBは7-8日に開催した連邦公開市場委員会(FOMC)で、市場の予想通り政策金利の据え置きを決めた。発表された声明は、引き続き利上げ継続に前向きな姿勢を示している。このため、目先発表される経済指標がFRBの想定通りの内容だった場合、12月18-19日に開かれる次回会合での追加利上げを期待したドル買いを誘発しそうだ。
14日発表の10月消費者物価指数(CPI)や15日発表の10月小売売上高と11月フィラデルフィア連銀景況調査(製造業景気指数)などが有力な手掛かり材料として注目される。10月のCPIは2%台の上昇率を保つと予想されているが、10月実績が市場予想を上回った場合は、金利先高観が浮上し、ドル買いが入る見通し。ただ、ドルは114円台の水準で何度も上昇を阻止されており、市場では上値抵抗水準として意識されている。米株式市場は落ち着きを取り戻しつつあるが、9日の取引では世界経済の減速懸念などの要因でさえない相場展開となった。週明け12日のアジア、欧米の株式市場が総じて弱含みとなる可能性は排除できないため、株式市場の動向には引き続き警戒が必要となりそうだ。
■来週の注目スケジュール
11月12日(月):印鉱工業生産、中マネーサプライなど
11月13日(火):安倍首相がペンス米副大統領と会談、英失業率、米財政収支など
11月14日(水):日GDP速報値、中鉱工業生産指数・小売売上高・固定資産投資など
11月15日(木):トルコ失業率、欧貿易収支、米小売売上高など
11月16日(金):ユーロ圏CPI改定値、米鉱工業生産指数など
《SK》
提供:フィスコ