富田隆弥の【CHART CLUB】 「危うさの中で底打ちも」

市況
2018年11月23日 10時00分

◆「ソフトバンク <9434> 」が12月19日に上場する。ネットでは勿論、テレビでも宣伝が始まり、証券会社は折り込みチラシを使って案内を始めた。売り出し価格は12月10日に決まるが、資金調達が過去最大となる2兆6000億円規模とあれば、業界挙げてのビッグイベントになるのは必至だ。上場は成功を収めるだろうが、いくら知名度があるとはいえ、膨大な玉を売らねばならない証券会社の苦労は計り知れない。

◆売り出し玉をさばき、上場を成功させるためには株式市場の活況は不可欠であり、金融界、証券業界としては地合い作りに尽力するだろう。12月といえばボーナスシーズンでもあり、資金獲得のためにはいまのように危うさが漂う地合いは好ましくない。

◆アップルを始めフェイスブック、エヌビディアろいったFAANGをはじめとする主要IT株の下落が目立ち、さらには資源関連や消費関連、金融関連にも売りが膨らむなど直近の世界マーケットは総崩れの様相だ。日経平均株価は21日に一時2万1243円まで下げ、10月26日安値の2万0971円に迫ってきた。NYダウは21日まで3日続落で2万4368ドルまで軟化し、ナスダックは20日に6830ポイントまで下げて、4月以来の水準に落ち込んだ。

◆これでは、誰がどうみても「危うい」と感じるだろう。先行きを危惧する論評が目立ってきたし、万年強気が当たり前の証券会社の中にも「慎重」を説くものが出てきた。以前から先安懸念を説いている筆者もその一人ではあるが、ただこの調子ですぐ暴落につながるとは見ていない。

◆多くの投資家が危ういと感じれば、それだけ市場には「空売り」や「ショート」が積み上がっているはずで、相場がいざ下げてもそれらの買い戻しで下げ渋るケースは少なくない。場合によっては売り方の踏み上げが原動力となり相場を大きく上昇させることもある。

◆米国は22日が感謝祭(休場)、23日が年末商戦のブラックフライデー(半日立会い)で、25日まで4連休をとる投資家が大半だ。そうなると、危うい相場をみて休みの前にポジションを整理しておこうと考えてもおかしくなく、直近の急落にはそうした休暇前の事情もあったのではないだろうか。そうであれば、休み明けは買い優勢となり、12月の「サンタラリー」へとつながる可能性もある。

◆日足チャートでは日米とも10日サイクルがみられ、二番底のタイミングが来ていよう。また、12月上旬に向けては上昇アノマリー(経験則)もあり、そうなれば師走の株高を望む証券業界としては願ったりかなったりだ。年末は勿論、新年相場の上昇観測も声高となり、ソフトバンク株の上場スケジュールも無事にこなすだろう。そのような強気観測が増えてきたときに本当の「注意」が必要になると思うが、いまはその前のアヤ戻しが見られるかどうかというところだ。日経平均がどこで二番底を打って切り返すかに注目している。

(11月21日 記、毎週土曜日に更新)

情報提供:富田隆弥のチャートクラブ

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