為替週間見通し:ドルは上げ渋りか、米利上げペース減速の思惑残る
【先週の概況】
■ドル下げ渋り、一部で安全逃避的なドル買いも
先週のドル・円はやや底堅い動きを見せた。米政策金利は中立水準に近づいており、2019年前半にも利上げ打ち止めの可能性があるとの思惑が浮上したが、リスク資産からドルへの資金シフトが一部で観測された。ユーロ、ポンドなどの欧州通貨や豪ドルなどの資源国通貨に対するドル買いも優勢となったことから、ドル・円の取引でもドル買い・円売りがやや優勢となった。
ただ、通商問題などを巡って米中両国の対立は続いていることや、世界的な景気減速への懸念は緩和されていないことから、リスク選好的なドル買い・円売りは拡大しなかった。113円台前半では国内勢などのドル売りが観測されており、ドル・円は113円台前半で上げ渋った。
23日のニューヨーク外国為替市場では、一時112円66銭まで下落。原油価格の急落を受けて、米国株は下落し、米国10年債利回りが低下したことで、リスク回避とみられるドル売り・円買いが観測された。しかしながら、112円台後半では短期筋などのドル買いが観測されており、ドル・円は112円97銭まで反発し、112円96銭でこの週の取引を終えた。先週のドル・円の取引レンジは112円31銭から113円22銭となった。ドル・円の取引レンジ:112円31銭-113円22銭。
【今週の見通し】
■ドルは上げ渋りか、米利上げペース減速の思惑残る
今週のドル・円は上げ渋りか。米連邦準備制度理事会(FRB)の利上げペースの減速が意識されている。欧州発のリスク要因でユーロやポンドは下落基調が続いており、ドル選好の地合いが一変する可能性は低いものの、今月に入り、FRBのパウエル議長をはじめ当局者からのハト派寄りの見解が目立つ。最近では、クラリダ副議長が政策金利は中立的な水準に近づいているとしたほか、カプラン米ダラス連銀総裁が欧州と中国の減速で米経済が影響を受ける可能性に言及している。
米金融当局者のこのような発言は市場の利上げ継続期待を低下させているとみられる。28日発表の7-9月期国内総生産(GDP)が市場予想を下回った場合、景気腰折れ懸念からドル売りに振れやすい見通し。また、29日公表の連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨でハト派寄りの見解が多く含まれていた場合、金利先高観はさらに後退し、ドルの上値は再び重くなりそうだ。一方、トランプ米大統領と習近平・中国国家主席は11月30日-12月1日開催の20カ国首脳会議(G20)で首脳会談を開く予定だが、そこで対立が解消しないとドル買いは入りにくいだろう。
ただ、欧州通貨売りを背景に、安全逃避的なドル選好地合いが一変する可能性は低いとみられる。欧州委員会はイタリア政府の財政赤字超過を問題視し、制裁手続きに入った。また、欧州連合(EU)からの離脱協議を巡って英国の政治情勢は行き詰まっており、投資家はユーロとポンドに対して弱気になっていることはドルに対する支援材料となる。
【米・7-9月期国内総生産(GDP)改定値】(28日発表予定)
28日発表の7-9月期国内総生産(GDP)改定値は、持続的な経済成長を維持できるか注目される。速報値では4-6月期の+4.2%から+3.5%に鈍化したが、改定値では+3.6%への上方修正が見込まれる。ただ、市場予想を下回った場合は減速懸念でドル売りが強まりやすい。
【米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨】(29日公表予定)
11月7-8日開催分の連邦公開市場委員会(FOMC)の議事要旨が29日に公表される。ハト派寄りの意見が多く含まれていた場合、利上げは2019年中に終了するとの観測が広がりそうだ。12月利上げの確率もやや低下しており、リスク回避的なドル売りが増える可能性がある。
予想レンジ:111円50銭-114円00銭
《FA》
提供:フィスコ