田部井美彦氏【日経平均戻り足、年末相場で投資家は報われるか】(3) <相場観特集>
―G20や米中首脳会談などを前に錯綜する思惑を追う―
師走を目前にしていよいよ年末相場が意識される段階に入った。米国株市場では前週末にNYダウが4日続落し、前週1週間で1100ドル以上の大幅調整となった。しかし、週明けの東京株式市場は頑強な値動き。2025年万博の大阪誘致が決定したことや外国為替市場で進むドル高などが、投資家心理をポジティブな方向に向けている。2018年相場も最終コーナーを回り、最後の直線勝負の様相だが、ここからの相場展望と物色の方向性について、先読みに定評のある市場関係者に話を聞いた。
●「万博関連物色は建設株中心に息長い相場に」
田部井美彦氏(内藤証券 投資情報本部 投資調査部長)
きょうは、25年の国際博覧会(万博)が大阪で開催されることが決定したことを受け、それに伴う経済効果期待から、幅広い関連銘柄が買い人気を集めた。事前の期待度が過度に高まっていなかったこともあり、建設株をはじめ、空運、電鉄、ホテル、小売りなど関連とされる業種の銘柄群がにぎわいをみせた。
今後は、25年の開催に向けて、さまざまな面から予算措置が具体化するなど、本格的に資金が流入してくるだけに、物色は一過性とはならずに、折に触れて繰り返されることになりそうだ。特に、建設株は過去1年間程度下落基調となっていた銘柄が多く、業種別では最も出遅れていたセクターだっただけに、今後も注目度が高まりそうだ。20年の東京五輪以降の建設需要に懸念が囁かれていただけに、先行きへの大きなインパクトとして受け止められている。
日経平均株価は、10月26日につけた取引時間中の安値2万971円を一番底とした場合、11月21日の安値2万1243円が二番底となり、反転上昇軌道に乗る可能性が出てきた。当面は、11月8日の高値2万2583円の奪回が目標となるが、早い時期にこの水準をクリアすれば、年内に2万3000円台を目指す展開も予想される。
個別銘柄では、大阪万博関連として、もともと大阪発祥のスーパーゼネコンである大林組<1802.T>に注目したい。同社は、前回1970年の大阪万博でも主要施設の多くを手掛けた実績もあり、今回の万博でも主導的な存在となる可能性が高い。このほかに、関西に地盤を持つ奥村組 <1833> 、銭高組 <1811> 、森組 <1853> [東証2]などにも注目だ。
このほかに、年間配当利回り3%超の高配当利回りで、営業利益の進捗率が高い石油元売り国内最大手のJXTGホールディングス <5020> や、原油価格上昇に伴う原材料高で18年12月期の利益が圧迫されている住友ゴム工業 <5110> は、ここのところの原油価格の急速な低下に伴い、19年12月期の業績急回復期待が高まっている。
(聞き手・冨田康夫)
<プロフィール>(たべい・よしひこ)
内藤証券シニアアナリスト。株式市況全般、経済マクロの調査・分析だけでなく、自動車、商社、アミューズメント、機械などの業種を担当するリサーチアナリストとして活動。年間200社程度の企業への訪問、電話取材、事業説明会への参加などを通して「足で稼ぐ調査・情報の収集」に軸足を置いている。
株探ニュース