為替週間見通し:ドルは下げ渋りか、欧州通貨安が下支え要因に

通貨
2018年12月1日 14時53分

【先週の概況】

■米利上げペース減速観測もドルは下げ渋る

先週のドル・円は底堅い動きを見せた。米国金利の先高観は後退したものの、米国株式相場の反転を意識してリスク回避のドル売りは拡大しなかった。米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長は11月28日に行われた講演で、「金利は中立とされるレンジを若干下回る」との見方を示したことから、2019年前半にも利上げ打ち止めの可能性があるとの思惑が浮上し、ドル売りが優勢となった。

11月29日に公表された米連邦公開市場委員会(FOMC)会合の議事要旨(11月7-8日開催分)には、「一段の緩やかな利上げとの文言を削除する可能性」、「メンバーは金利に関して、柔軟なアプローチが必要であると協議」などの記述が含まれていたこともドル売り材料とみなされた。

ただ、英国の政治不安やユーロ圏経済の成長鈍化を意識して英ポンドやユーロに対する米ドル買いは継続しており、この影響でドル・円の取引でリスク回避的なドル売り・円買いは拡大しなかった。日本の長期金利がやや低下したこともドル・円相場に対する支援材料となり、ドル・円は112円台後半で下げ渋った。

11月30日のニューヨーク外国為替市場では、11月の米シカゴ購買部協会景気指数が予想を上回ったことや、トランプ米大統領や中国政府高官が米中首脳会談について楽観的な見方を示したことから、リスク選好のドル買い・円売りが優勢となった。ドル・円は、113円45銭から113円71銭まで反発し、113円54銭でこの週の取引を終えた。

・ドル・円の取引レンジ:112円88銭-114円04銭

【今週の見通し】

■ドルは下げ渋りか、欧州通貨安が下支え要因に

今週のドル・円は下げ渋りか。米利上げ継続への期待は低下し、リスク選好的なドル買いは抑制されるとの見方が増えている。ただ、ユーロや英ポンドなどの欧州通貨に対するドル買いは縮小していないことや、米中首脳会談を経て二国間の緊張状態は多少緩和されるとの見方が広がっていることは、ドル・円の取引にも影響を与えそうだ。

今週発表される11月ISM製造業景況指数や11月雇用統計などが市場予想とおおむね一致した場合、12月18-19日に開かれる米連邦公開市場委員会(FOMC)の会合で0.25ポイントの追加利上げが決定される可能性は一段と高まりそうだ。米長期金利は伸び悩んでいるものの、米国の主要経済指標が改善した場合、日米の長期金利格差は再び拡大し、リスク選好的なドル買い・円売りを促す要因となり得る。

【米・11月ISM製造業景況指数】(12月3日発表予定)

11月の米ISM製造業景況指数は58.0と予想されており、10月実績の57.7をやや上回る見通し。米利上げ継続方針への期待は弱まっているが、製造業の成長は株高につながり、ドル売りを弱める要因となりそうだ。

【米・11月雇用統計】(12月7日発表予定)

11月の米雇用統計は、失業率3.7%、非農業部門雇用者数は前月比+20.5万人、平均時給は前年比+3.2%と見込まれる。平均時給の上昇率は2カ月連続で3%台となることから、ドル買い材料となりそうだ。失業率は記録的な低水準が続くか注目される。

予想レンジ:112円00銭-115円00銭

《FA》

提供:フィスコ

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