日証金 Research Memo(3):貸借取引業務を中心とする証券金融業が事業の柱

特集
2018年12月10日 15時03分

■日本証券金融<8511>の事業概要

1. 証券金融業

証券金融業は同社本体が行っている業務であり、2019年3月期第2四半期累計では連結営業収益(除く品貸料)の80.8%を占めている。証券金融業は、貸借取引業務、一般貸付業務、有価証券貸付業務、その他に区分される。

(1) 貸借取引業務

同業務は、連結営業収益の22.1%(品貸料を含むベースでは39.1%)を占める同社グループの中核業務であり、証券会社向けに制度信用取引の決済に必要な資金や株券の貸付を行っている。

信用取引は、投資家が証券会社に一定の保証金(委託保証金)を担保として差し入れ、証券会社から株式の購入資金や売付株券を借り入れて株式を売買する取引である。この制度によって手持ち資金を上回る金額の銘柄の買付けや保有していない株券の売付けができ、売買取引に厚みを持たせ、株式の円滑な流通や適正な価格形成に寄与している。

この信用取引には、制度信用取引と一般信用取引の2種類がある。制度信用取引は、品貸料や弁済繰延期限等が証券取引所により定められており、証券会社は売買の決済に必要な売付株券及び買付代金を同社から借り入れること(貸借取引)ができる。他方、一般信用取引は、取引条件を顧客と証券会社との間で自由に定めることができるが、一般信用取引の決済のために証券会社が貸借取引を利用することはできないことになっている。

このように、貸借取引は、同社が証券取引所の取引参加者である証券会社から一定の保証金(貸借担保金)を受け入れた上で、制度信用取引に必要な資金や株券を貸し付ける取引であり、取引は証券取引所の決済機構を通じて行われる。

同社は証券会社から制度信用取引の売買約定日に銘柄別に借入れの申込みを受け、貸付の実行は、同社が証券会社に代わって、買付資金または売付株券を証券取引所の決済機構に引き渡す。見返りに買付株券(融資担保株券)または売付代金(貸株代り金)を受け取り、それぞれの貸付の担保に充当することにより取引が完了する。

なお、同社内の担保だけで証券会社からの融資申込みや貸株申込みを賄えない場合には、同社はコール市場等から資金調達し、また株券は機関投資家等から借り入れることで対応する。

同社にとっては、貸付金利息(融資金利、現在0.60%)、有価証券貸付料(貸株料、同0.40%)が主な収益であるが、長期間にわたる超金融緩和の影響を受け、融資金利は過去最低水準となっている。

(2) 一般貸付業務

同業務は、証券会社向けに運転資金などの貸付や、個人・一般事業法人向けに有価証券を担保としてインターネット等を利用して資金の貸付を行うもので、連結営業収益の7.0%を占めている。

(3) 有価証券貸付業務

同業務は、国債の貸借取引市場での仲介業務や、株式売買取引の決済などに必要な株券の貸付を行うもので、連結営業収益の34.8%を占めている。貸出先は主に証券会社、借入先は生損保等の機関投資家である。

(4) その他

その他には、国債等の有価証券運用などがあり、連結営業収益の16.9%を占めている。

2. 信託銀行業

100%子会社の日証金信託銀行では、1998年の設立以来、個人投資家等が証券会社やFX業者、商品先物業者などに預託した金銭等を保全するための顧客資産保全信託に力を入れてきた。また近年、証券会社等の紹介のもとABL(アセット・バック・ローン)信託の受託実績を積み重ねているほか、最近では、クラウドファンディングや入居一時金にかかる保全信託を手掛けるなど、金融市場の発展とともに顧客ニーズに応じたきめ細かなサービスを提供している。

信託銀行業は、グループの連結営業収益の14.5%を占めており、信託報酬、貸出金利息、有価証券利息配当金、国債等債券売却益が主な収益である。信託業務から得られる安定的な収益である信託報酬は、ここ数年、継続的な増収を続け、過去最高を記録しているが、新たな信託商品の開発にも取り組み、更なる収益向上を図っている。また、貸出先を見ると中央政府向け(政府保証を含む)が貸出金全体の98.4%を占め、貸出金の安全性は高いと言える。

3. 不動産賃貸業

100%子会社の日本ビルディングでは、グループ会社が所有する不動産の賃貸を行っているが、グループの連結営業収益に占める割合は4.7%と小さい。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 国重 希)

《MH》

提供:フィスコ

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