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アナリスト推奨の裏をかいてリターンを生む方法

特集
2018年12月12日 10時30分

大川智宏の「日本株・数字で徹底診断!」 第6回

大川智宏大川智宏(Tomohiro Okawa)

智剣・Oskarグループ CEO兼主席ストラテジスト

2005年に野村総合研究所へ入社後、JPモルガン・アセットマネジメントにてトレーダー、クレディ・スイス証券にてクオンツ・アナリスト、UBS証券にて日本株ストラテジストを経て、16年に独立系リサーチ会社の智剣・Oskarグループを設立し現在に至る。専門は計量分析に基づいた株式市場の予測、投資戦略の立案、ファンドの設計など。日経CNBCのコメンテーターなどを務めている。

「買い」推奨が最低のパフォーマンスという皮肉

「買い」推奨のパフォーマンスが最も悪いという皮肉な結果です。ただ、これについて少しアナリストを擁護すれば、すでにコンセンサスが買い推奨の銘柄は文字通り「みんなが買い」という状況で上昇余地に乏しく、逆に利食いに晒されやすい状況になりえます。

一方で、特に中立の銘柄は売り推奨を脱し、かつまだ買い推奨になり切れないという状況の銘柄を含むため、底堅く上昇する銘柄が多いのが事実です。「売り」推奨は「買い」推奨と逆の状況で、悪材料が織り込まれたあとの買い戻しや底打ち反転が発生しやすい状況を表している可能性が高いと思われます。

推奨別の市場超過リターンの違い

変化に注目すると投資妙味がみつかる

さて、ここまでの話では、アナリストの推奨など役に立たず、かえって害悪でしかないように見えます。結果の数字だけを見れば、それは事実です。しかし、違った観点からの利用価値があります。買い、売りといったアナリストの推奨の水準ではなく、推奨の「変化」です。

以下の図表は、アナリストのレーティングの変化の高低が株価に与える影響を見たものです。ただし、この図はレーティングの変化が発生した翌月ではなく該当月のリターン(変化が発生した後に投資をしたリターンではなく、変化がどれだけ株価に影響を与えたのか)を計測しています。その他の条件は、アナリスト推奨効果の計測と同様です。

レーティングの変化が株価に与える影響

グラフは一次関数的な右肩上がりの直線を描きます。つまり、上方修正されれば株価は上昇し、下方修正された銘柄は下落するという結果です。先ほどのレーティングの水準と合わせれば、旨味は水準ではなくその変化にあると言えます。

これだけの強い効果を利用しない手はありません。そして、もちろん確実に予測できるわけではありませんが、アナリストがレーティングを変更する行動には、経験的にいくつかの要因に影響されることが知られています。

前月の上昇銘柄は格上げ、下落銘柄は格下げ

経験的に確認されている要因を検証するのに、今回は2つのファクターを用います。1つ目は、過去1カ月の株価変化率です。アナリストは、前月に上昇した銘柄を翌月に格上げしやすく、下落した銘柄を格下げしやすい傾向にあります。

以下の図表が、その行動の一貫性を端的に表します。背景は単純です。アナリストが格上げ、格下げを決断する際は、何かしらのイベントやサプライズの発生に対して後手に回るため、多少のタイムラグが発生します。

株価はそれに瞬時に反応しますが、その反応は精緻な分析に基づくものではありません。そのため、アナリストの公式見解としてレポートが発行され、そのニュースや情報が正しいという安心感を投資家に与えることで、さらにもう一段株価を動かす要因になります。

2つ目の要素は、「目標株価からのかい離率」です。具体的には、目標株価に対して現在の株価が大きく下回っている場合(かい離が大きい場合)は下方修正されやすく、目標株価を現在の株価が上回ってしまうような場合(かい離が小さい場合)は上方修正されやすくなります。

目標株価からのかい離率に対するアナリスト推奨の変化

目標株価とレーティングはアナリストが精緻な分析を行って自信をもって付けた評価のはずですが、需給や急激なマクロ環境の変化などによって、株価はその評価から大きくかい離することがあります。そうした状況をアナリストはレーティング目標株価の修正という形で折り合いをつけなくてはなりません。

人の心理に基づく投資行動に関する分析は一般に行動ファイナンスと呼ばれ、行動や心理を計量的に分析することで利益を得ようとする分野です。本来、証券会社のアナリストは行動ファイナンス理論も含めた分析で「利益を生むアイデア」を投資家に提供する立場にあります。その彼らの行動自体を分析してしまうアナリストのレーティング行動の予測は、ある意味で「究極の行動ファイナンス」といえるかもしれません。

最後に、この分析の内容に沿った銘柄の例を添付しておきます。

前月リターンに対するアナリスト推奨の変化

※当該情報は、一般情報の提供を目的としたものであり、有価証券その他の金融商品に関する助言または推奨を行うものではありません。

次ページ 2つ目の要素と、関連銘柄リスト

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