日本株復活の大役担う、「イベント関連株」にビッグウェーブ!<株探トップ特集>

特集
2019年1月7日 19時30分

―改元、ラグビーW杯、五輪、そして万博へと続くエンターテインメント街道をゆく銘柄群―

リスク回避の売りが加速し大荒れとなった大発会、2019年の東京市場は暗雲漂う船出となった。きょうは、NYダウの急反発を受け一転大幅高となったが、世界経済を取り巻く情勢には不安材料が山積、強気で買い向かうという心理にはなりにくい状況にある。しかし、5月1日の改元を皮切りに、今年から来年にかけてこれまでにないほどの国家的なビッグイベントが予定されており、日本列島を包むムードは決して悪くはない。25年の大阪万博開催も決定したことで 東京五輪後の景気腰折れ懸念も和らいでいる。こうした国家的行事が相次ぐなか、予想されるのが民間企業も含めた各種行事に絡むイベント需要の拡大だ。活躍の大舞台が広がるイベント関連株の動向を追った。

●見逃せない内需関連株の側面

安倍首相は4日、5月1日の改元を前に、新元号を4月1日に発表すると表明した。「平成最後」と銘打ったセールやイベントもそろそろ終了、新しい時代の幕開けとなる「新元号」に向けた動きへと一変することで、さまざまな消費を刺激しそうだ。この慶祝ムードが漂う改元を皮切りに、6月には大阪で20ヵ国・地域(G20)首脳会合、9月20日から(11月2日まで)はラグビーワールドカップ日本大会、そして翌年には満を持して東京五輪が開催されることで、今年から数々の大規模イベントが行われることになる。

国家的行事が目白押しなだけに公的なイベントはもちろんだが、加えて民間企業もこうした商機を捉えるべくさまざまな企画で攻勢をかけることが予想される。そしてそれらイベントを支えるのが舞台設備、展示施設、運営を行うさまざまな関連企業だ。もちろん広告関連にもビッグステージが待っているだけに期待は高まる。また、世界経済が混沌とするなか円高懸念が高まる現在、イベント関連株は内需株の側面も持っているだけに、この点も見逃せないポイントとなる。

●「思った以上に大きなインパクト」

準大手証券のストラテジストは「今年は、世界的な金融引き締めに伴うグローバル景気の減速や国内では10月の消費税引き上げなどが取り沙汰され、あまり明るいイメージで語られることは少ないかもしれない。しかし、国内では大型イベントラッシュと言ってよく、実際はこれらが我々のイメージする以上に、景気や株価の浮揚効果につながる可能性がある。ラグビーW杯はもちろん、衆参同日選挙の可能性もある。そして、何よりも天皇陛下の退位と皇太子さまの即位というビッグイベントがある。これに伴う改元で、印刷業界や広告・ディスプレー業界などには大きなビジネスチャンスが巡ってくる。やはり、平成から次の年号に変わるというのは思った以上に大きなインパクトを与える」と指摘する。

●引き合い増加の博展

イベント関連株は、東京五輪、大阪万博などに注目が集まる過程で、幾度となく株価も動意し投資家の熱い視線を集めてきた。しかし、ここまでは思惑先行といえ、ようやく理想買いから現実買いへの道程をひた走ることになる。

展示会出展サービス、イベントプロモーションなどを手掛ける博展 <2173> [JQG]では「現在取り引きのある企業からは、五輪に向けたイベントということで引き合いはだいぶ増えてきている。具体的な内容に関しては、これから一緒にディスカッションしながら詰めて行こうといった感じだろうか。もちろん期待感は高い」(経営企画部)という。大阪万博に関しても「万博についてはこれからのことになるが、関西がメインとはいえ、東京に本社がある企業にはアプローチを積極的にかけていく」(同)。

同社は昨年11月8日に19年3月期第2四半期累計(4-9月)の連結決算を発表。営業利益が前年同期比2.5倍の2億6600万円、最終利益は同3.7倍となる2億1800万円と大幅に拡大した。イベントでのディスプレー制作や企業の販促支援などを行うが、好調な企業業績を背景とした広告宣伝需要の拡大が収益に追い風となっている。株価は、12月7日に2032円まで買われたものの、その後は全般波乱相場もあり急速に値を崩し現在は1500円を挟みもみ合うが、イベント需要が本格化するなか再評価機運も高まりそうだ。

●乃村工芸は五輪オフィシャルサポーター

乃村工藝社 <9716> にも注目したい。空間の企画・デザイン・設計・施工などを手掛けるディスプレー業界の最大手で、高水準の需要を取り込んでいる。同社は東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会と、「内部空間・展示空間のデザイン、設計、施工」カテゴリーでオフィシャルサポーター契約を締結しており、五輪開催を来年に控え注目度がアップしそうだ。五輪の他スポンサー企業や参加国などとの関係を強化し、既存顧客の深耕、新規顧客の開拓を進める方針だ。また、大阪万博関連としての切り口も見逃せない。同社は、1970年の大阪万博、1985年のつくば万博、05年の愛・地球博などの実績が豊富で、25年の大阪万博が具体化するなか、折に触れて注目される可能性が高い。株価は、12月5日に3195円で高値をつけた後、軟調展開が続き現在は2500円近辺で推移している。

前出の2社のように、関連株の多くが昨年12月初旬に高値を更新し、その後は全体相場の下落に抗えず大幅に値を崩しているものも少なくない。ただ、活躍の舞台はまさにこれから、当然のことながら業績に寄与するのも今後であり、昨年末からの株価調整場面は格好の拾い場となる可能性もある。

●高値圏で頑強展開みせるヒビノ

そうした状況下、ヒビノ <2469> [JQ]の株価に注目が集まっている。同社は、コンサート音響及びイベント映像サービス、機材レンタルなどを行っているが、株価は波乱相場のなかも上昇一途、昨年末はまさに新値街道一人旅の様相だった。11月の初めには1400円近辺だった株価が、大納会には2150円まで買われ新値を更新。さすがに、年明けの“アップルショック”には勝てず、きょうは2000円割れとなった。しかし、これから迎える“世紀のイベント”を追い風に、再び上昇波に乗る可能性もある。

●そろり注視の丹青社、三精テクノ

一方、丹青社 <9743> の株価は安値圏で推移しており、どうもパッとしない。同社は、年間6000を超えるプロジェクトを行う空間ディスプレーの大手。12月7日には、19年1月期の連結業績予想について、営業利益を47億円から44億円(前期比4.1%減)へ下方修正している。ただ良好な市場環境を背景に、商業その他施設事業やチェーンストア事業が堅調であることは安心材料。軟調展開を強いられる株価だが、五輪需要が本格化するなか、ここからの巻き返しに注目したい。

イベント絡みでは、やはり三精テクノロジーズ <6357> [東証2]は外せない。同社は大阪万博関連のまさにスター株だ。遊戯機械、舞台機構、昇降機、特殊機構メーカーで、前回の大阪万博に加えそのほかの万博でも実績豊富、更に地元大阪の企業であることも思惑を呼び、誘致決定前後には株価も急動意した。業績も好調で、11月に発表した第2四半期累計連結決算では売上高が前年同期比99.2%増の239億5600万円、営業利益は同2.5倍となる13億8200万円だった。大型公共ホールの新設や大規模コンサートが堅調だった舞台設備部門も業績向上に貢献している。

こうした国家的大事業、世紀のイベントが迫る中、忘れてはならないのが博報堂DYホールディングス <2433> 、電通 <4324> に加えAOI TYO Holdings <3975> といった広告関連株。まさに大本命といえるが、現在のところ注目度はいまひとつ。ただ、ビッグイベント接近で、折に触れて株価を刺激することもありそうだ。

●世紀のイベントに乗るウエディング関連

前出のストラテジストは「改元に絡み10連休となることで旅行や消費ニーズを刺激することは間違いないが、意外に見落とされがちなのがウエディング関係。“平成駆け込み婚”もしくは“新元号メモリアル婚”などで盛り上がる公算が大きい。更に翌年には東京五輪を控え、この熱気はそのまま引き継がれる。五輪後の景気冷え込みを懸念する声もあったが、これも2025年の万博開催、その後の夢洲カジノ誘致が、そうした懸念を払拭することになる」と分析。

このように、改元という世紀のイベントを節目とした、人生最大のイベント「結婚」に踏み切る人も多いと考えられ、「ウエディング関連株」の盛り上がりを予想する市場関係者も少なくない。「平成最後」よりも「新時代の幕開け」での結婚需要の拡大を期待し、関連株に思惑買いを誘う可能性もある。ワタベウェディング <4696> 、テイクアンドギヴ・ニーズ <4331> 、IBJ <6071> などウエディング関連株にも目を配っておきたいところだろう。

ある業界関係者は「正直なところ、ラグビーW杯絡みの受注については、まだ聞いていない。新元号については、スポンサー絡みの制約もないうえ、慶祝ムードの盛り上りも予想され、さまざまなイベント需要に波及するのではないか」(広報)と期待を寄せる。

「景気は気から」、日本経済を取り巻く沈滞ムードをビックイベントが吹き飛ばすと願いたい。イベントを影で支える縁の下の力持ちが、ひのき舞台でスポットライトを浴びる日も近そうだ。

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