高橋春樹氏【相場観特別編・日経平均株価、ずばり19年相場はこう動く】(3) <相場観特集>
―アルゴ売買で不安定な相場、中長期トレンドの急所は―
東京株式市場は大発会に波乱のスタートとなったが、週をまたいで新春相場2回目の取引となった7日、日経平均株価は一時700円強の上昇と急反発に転じ、2万円大台を回復した。米中貿易摩擦の行方や米金融政策の動向、世界経済の先行きなど不透明要因が強く意識されるなか、株価のボラティリティの高さは相変わらずで、アルゴリズム売買の影響もあって上下に翻弄される展開が続いている。しかし、年間を通じた中長期トレンドがどちらの方向を向いているのかは投資家として、ぜひとも押さえておきたいところだ。相場の先読みで定評のあるベテラン市場関係者に2019年相場の見通しを聞いた。
●「2万円台固めから年内2万4000円目指す」
高橋春樹氏(三木証券 取締役 商品本部長)
昨年12月31日に発表された12月の中国製造業購買担当者景気指数(PMI)が、2年半ぶりに業況改善・悪化の分かれ目となる50を下回ったことに加え、米アップルが現地2日夕刻に、中国でのiPhone販売減速を理由に、10-12月期の売上高見通しを大幅に下方修正したことを受け、米中貿易摩擦による影響の深刻さが顕在化したとの見方から、投資家がリスク回避の姿勢を強め4日(大発会)の東京株式市場で日経平均は452円安と急落した。
しかし、米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長が現地4日の講演で「市場は世界景気を不安視しており、素早く柔軟に金融政策を見直す用意がある」と発言し、今年の利上げを2回と想定していた引き締め路線を一時停止する可能性を示唆した。これによって、中国経済減速を背景として世界景気の先行きに懸念を強めていた市場とFRBのリスク認識のズレがある程度解消されたとの受け止めが広がり、4日のNYダウ平均株価は前日比746ドル高と急反発した。これを好感して7日の東京株式市場も、日経平均が前週末比477円01銭高の2万38円97銭と大幅反発した。
金融政策に対してのFRBと市場とのリスク認識のズレはひとまず解消したものの、米中貿易摩擦が激化した場合の世界経済への深刻な懸念は継続している。トランプ米大統領が中国に対して不満を募らせているのは、(1)貿易不均衡(2)ハイテク産業分野での覇権争い――に集約される。ただ、貿易不均衡については、中国側が何らかの譲歩をする以外に解決策はない。中国商務省は4日、昨年12月の米中首脳会談後初めての直接交渉となる米中の貿易交渉を7日と8日に北京で開催すると発表した。今後、2月末の交渉期限内には落としどころが見いだされる可能性もあり、株価の戻りも期待できそうだ。また、中国が経済政策を従来の投資主体から消費主体へ移行を図ることで、年率6%程度の成長率を維持できるかもポイントだ。
国内では、1月下旬以降に3月期決算企業の第3四半期(18年4-12月)決算の発表が本格化し、19年3月期通期見通しと同時に20年3月期業績の輪郭も、視野に入ってくる。また、4月の統一地方選、5月の新天皇即位・改元、夏の参院選、10月の消費税率引き上げなど株式市場に影響を与える可能性のあるイベントが予定されている。こうしたなかで、今年の日経平均はPER、PBRなど株価指標面から判断して、2万円前後での値固めから、年内には2万3000~2万4000円を目指す推移を想定している。物色対象としては、足元の急激な円高進行などに伴って、実体以上に売り込まれた半導体関連など一部ハイテク株の反発トレンドの過程で、適切なタイミングを捉えての投資が有効となりそうだ。また、中長期的には花王 <4452> 、リクルートホールディングス <6098> 、ヤマトホールディングス <9064> といった安定成長の期待できる内需系の優良銘柄に注目したい。
(聞き手・冨田康夫)
<プロフィール>(たかはし・はるき)
1977年岡山大学法文学部卒業・第一証券入社。1999年第一証券エクイティ部長兼投資運用部長、2005年三菱UFJ証券エクイティ部長、2011年三木証券投資情報部長。
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株探ニュース