“定額制”に商機あり、「サブスクリプション関連」最前線を走る株 <株探トップ特集>

特集
2019年1月24日 19時30分

―加速し始めた定額課金のビジネスモデル、導入支援企業などの収益機会拡大へ―

シェアリングサービスの普及などで「所有」から「利用」の流れが加速するなか、急速に増え始めているのが、サブスクリプション(定額制)サービスだ。以前は音楽聴き放題の「スポティファイ」や、動画見放題の「ネットフリックス」など、コンテンツ配信の分野での活用が中心だったが、2018年11月にトヨタ自動車 <7203> が愛車サブスクリプションサービス「KINTO」を19年から開始する予定と発表するなど国内製造業でも導入が広がっている。「サブスクリプション化できない業種はない」(中堅証券)との見方もあることから、今後更に普及が進み、関連銘柄のビジネスチャンスも増えそうだ。

●導入のメリット

サブスクリプションとは、一定の料金を払うことで、期間中に何度でもサービスが受けられる形態のこと。利用する側にとっては大規模な初期投資が不要でサービスの導入が容易になるほか、提供側のデータ分析により、自分に合ったサービスが受けられるというメリットがある。

一方、提供する企業側にとっては、定額の利用料による安定収入が見込め、その資金を投資に回すことができるほか、顧客との関係を直接構築できるので、購買履歴を確認し、マーケティングに活用できるなどのメリットがある。また、利用者に大規模な初期投資が不要になることで、顧客基盤の拡大が図れるのも強みといえる。

代表的な成功事例としては、米アドビシステムズ(カリフォルニア州)がある。同社では、12年に月額課金制のクリエイティブクラウドのサービスを開始し、従来の売り切りから月額課金にビジネスモデルを転換。これが成功して売上高は近年2ケタ成長を続けており、現在では収入の多くが製品販売からサブスクリプションにシフトしている。米マイクロソフトの「Microsoft Office 365」もアドビの成功に刺激を受けたといえよう。

●個人向けサブスクリプションに注目

一方、国内でもコンテンツ配信や企業向けビジネスソフトウェアを中心にサブスクリプションサービスが普及しているが、成長余力が大きいのは個人向けサービスだ。

ユーザベース <3966> [東証M]が提供する「NewsPicks」は“経済を、もっとおもしろく”をコンセプトとした経済情報に特化したソーシャル経済メディアで20~30代のビジネスパーソンや就活生がターゲット。18年9月末時点の有料会員数は8万1839人で、17年12月期末時点から約2万5000人増と順調に拡大しており、それに伴い売上高も急成長している。

また、マネーフォワード <3994> [東証M]が提供する家計簿アプリ「マネーフォワード ME」は、利用者数700万人を突破。家計簿アプリ利用者の約4人に1人は同アプリを利用するなど最大手に成長した。課金ユーザー数も16万5000人(18年11月末時点)を数え、17年11月時点の12万人強から順調に増加している。

●ハードウェアも増加中

これまでデジタルの分野で定着してきたサブスクリプションだが、トヨタの「KINTO」発表に前後してハードウェアの分野でもクローズアップされている。

トヨタと同じ自動車分野ではIDOM <7599> が16年8月から定額制のクルマ乗り換え放題サービス「NOREL」を提供。自社で保有する在庫から車両を提供していたが、18年10月からはBMW日本法人と連携し、BMWやMINIの新車を貸し出している。

また、家電業界ではパナソニック <6752> が、18年2月にテレビの定額利用サービスを試験的にスタートさせたが、20年をメドにこれをキッチン家電やAV機器などに広げる方針という。同社ではこれまでにも単身赴任の個人や法人向けなどに家電のレンタルサービスを行ってきたが、サブスクリプションを利用することで幅広い家庭を対象とするのが狙い。家電業界は中韓勢の台頭で日本勢の劣勢が目立つが、顧客のつなぎとめ効果が期待されている。

●ファッションにも普及

ファッション業界では、レナウン <3606> がビジネスウェアを定額でレンタルできる「着ルダケ」サービスを展開している。衣装の提供から手入れ、保管、衣替え引き取りまでを一連のサービスとして提供するサービスで、新たに開発した専用ブランドで展開している。また、アドベンチャー <6030> [東証M]は18年11月、enish <3667> からファッションレンタルサービス「EDIST.CLOSET」事業を譲り受けた。同サービスは、プロのスタイリストが監修した最旬のコーディネートをセットで提供するもので、オフィスからカジュアルまで豊富なコーデを楽しめるのが特徴だ。

更にオフィスのハードに関しては、リコー <7752> が今月下旬から、クラウドのプラットフォームと組み合わせた「RICOH Intelligent WorkCore」の提供を開始した。機器そのものを買い替えなくても、本体の性能を最新のものにアップデートできるほか、複数のアプリを組み合わせることで機能の拡充を図ることができる。導入企業は初期投資を抑えることができるので、中堅・中小企業のデジタル化のサポートにもつながると期待されている。同じく複合機では、キヤノン <7751> が18年12月から月3200枚まで定額でプリントできるサービスを展開。セイコーエプソン <6724> も同様のサービスを手掛けており、両社とも着実に導入実績を伸ばしている。

●サブスクリプションを支援

これらは、サブスクリプションにより業績向上を目指す例だが、一方でサブスクリプションの導入を支援する企業のビジネスチャンスも広がっている。

テモナ <3985> [東証M]は、サブスクリプションコマースに特化したクラウド型通販システム「たまごリピートNext」を18年4月に提供開始した。同システムは、同社主力の「たまごリピート」の後継サービスで、「たまごリピート」が年商1~10億円規模の中位層をターゲットとしていたのに対して、年商10億円以上の上位層の顧客と、既存の消耗品に加えて食品・雑貨・アパレルといった商材を扱う市場までをサービス対象としているのが特徴。サービス提供開始から18年9月末までの約5ヵ月間で47件の申し込みがあったという。

また同社は、富士山マガジンサービス <3138> [東証M]や他のサブスクリプションサービスを展開する企業と18年12月、日本サブスクリプションビジネス振興会を設立。中小・中堅企業のサブスクリプション導入を後押ししている点も注目だ。

更に、忘れてはならないのが、ビープラッツ <4381> [東証M]だ。同社は、“サブスクリプションをすべてのビジネスに”を事業ミッションとし、企業向けにサブスクリプションビジネスのためのプラットフォーム「Bplats(ビープラッツ)」を開発・提供している。同システムはバックオフィス機能、ストア・フロント機能、商流構築機能などを有し、あらゆるサブスクリプションモデルに対応できるのが特徴で、コニカミノルタ <4902> が今年4月から展開する新サービス「Workplace Hub プラットフォーム」のハイブリッド型従量課金基盤にも採用されている。

ビープラッツに関しては18年8月、大株主でリース大手の東京センチュリー <8439> が同社株を追加取得し、議決権ベースで約22%とした。サブスクリプション型ビジネスへの取り組みを進展・強化することを目的としていることから、今後の事業展開を加速させるとの期待もある。

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