米国株式市場見通し:米経済指標に注目
先週は、カナダ中央銀行や欧州中央銀行(ECB)が政策方針を様子見姿勢に転換させたほか、経済協力開発機構(OECD)が世界経済見通しを再び下方修正するなど、世界経済減速への懸念が広がりつつある。地区連銀経済報告(ベージュブック)では、世界経済の減速や関税によるコスト増加、米中交渉の長期化が米製造業への負担となっていることが指摘された。雇用統計も低調な内容となったが、足元では2月ISM非製造業景況指数や12月新築住宅販売件数が予想を上振れており、今後の経済指標で景気動向を見極めたいとの思惑が強まるだろう。
英国では、12日に欧州連合(EU)離脱修正案の採決が下院で実施される。否決された場合、13日に合意なき離脱を支持するかどうかの採決が実施されるが、不支持となれば、14日までにEU離脱の延期について三度目の採決が行われる予定だ。採決では離脱修正案が否決され、合意なき離脱の不支持・離脱延期の支持に繋がると予想するが、EU加盟国の反対にあうことは確実で混乱を深めそうだ。EU離脱の是非を問う二度目の国民投票が実施されるとの見方もあり、今後の動向を注視したい。
経済指標では、1月小売売上高(11日)、2月消費者物価指数(12日)、2月生産者物価指数(PPI)(13日)、2月輸入物価指数(14日)、1月新築住宅販売件数(14日)、3月NY連銀製造業景気指数(15日)、2月鉱工業生産(15日)などの発表が予定されている。消費者物価指数では、米中貿易摩擦の長期化を受けて企業による価格転嫁の兆候を確認できるかが注目される。足元の雇用情勢に対して物価上昇が緩慢であると判断されれば、市場の反応は限定的となるだろう。
個別銘柄では、スポーツ用品小売のディックス・スポーティング・グッズ(12日)、ディスカウントストアのダラー・ゼネラル(14日)、半導体のブロードコム(14日)、
ソフトウェアのオラクル(14日)、グラフィックソフトのアドビ・システムズ(14日)などの決算発表が予定されている。アドビは、昨年10月に企業向けマーケティングを手掛けるマルケトを47.5億ドルで買収しており、決算では統合費用が業績の重しになることは織り込み済みだろう。マルケトとの統合による事業成長見通しに注目したい。
(Horiko Capital Management LLC)
《FA》
提供:フィスコ