山内俊哉氏【下げ止まった日経平均、相場反転の可能性は】(2) <相場観特集>
―覆いかぶさる世界景気減速懸念、マーケットの行先―
週明けの東京株式市場は日経平均株価が5日ぶり反発に転じた。前週末までの4営業日続落で800円近い下げをみせていたこともあって、値ごろ感からの押し目買いを誘発したが、反騰力は弱く今のところ自律反発の域を出ていない。世界的な景気減速懸念が投資家心理を冷やしているが、ここからマーケットは一段と下値を試すのか、それとも立ち直って再び上値指向を取り戻すのか。1ドル=111円台を割り込むなど足もと円高に振れている為替動向も気になるところだ。今回は、株式市場の第一線で活躍する証券関係者2人と為替のスペシャリスト1人に今後の見通しを聞いた。
●「緩やかな円高基調も下値底堅い展開、英国の混迷続く」
山内俊哉氏(上田ハーロー 執行役員)
足もとで米国や日本の株価は弱含みで推移しているほか、3月下旬が有力視されていた米中首脳会談の開催に不透明感が強まるなか、ドル円相場 の方向性はどちらかというと円高基調にある。ただ、この数年の3月のドル円相場の値幅はあっても2円程度であまり動かないことが多い。今年も同様の展開となる可能性はあると思う。
米国に加え国内の景気に不透明感が出つつあるが、ドル円に関しては、米国などがハト派姿勢に傾きつつあるなか、日銀も金融緩和方向のトーンの発言が強まることも予想される。このため、ドル円の下値も抑えられる展開となりやすい。
先週末8日に発表された米2月雇用統計は、非農業部門雇用者数が市場予想を下回ったが、賃金の上昇率などは堅調だった。今月の米連邦公開市場委員会(FOMC)では、金融政策は現状維持だろうが、ドット・チャートによる政策金利見直しがどの程度下方にシフトされるかがポイントだ。
いずれにせよ、当面は米中首脳会談がいつ開催され、その結果を確かめないと方向感は出にくいと思う。
こうしたなか、今後1ヵ月程度のドル円相場は緩やかな円高基調のなか、109円50~112円50銭のレンジを見込んでいる。
ユーロは対ドルでは1ユーロ=1.0950~1.1370ドル、対円では1ユーロ=121円50~126円30銭を見込む。いずれもユーロは弱含みだろう。
英国のユーロ圏離脱の3月29日の期限が近づいているが、基本的には「合意なき離脱」は避けられ、離脱期限は延期されるとみている。この場合、英ポンドがユーロに与える影響は限定的だろう。ただ、目先的に離脱期限を延期しても、その後の展開は見えない。英国の混迷は続くと見ざるを得ない。
(聞き手・岡里英幸)
<プロフィール>(やまうち・としや)
上田ハーロー、執行役員・マーケット企画部長。1985年 商品先物会社入社。コンプライアンス、企画・調査などを経て1998年4月の「外為法」改正をうけ外国為替証拠金取引の立ち上げを行う。2005年7月 上田ハーロー入社。前職の経験を生かし、個人投資家の視点でブログなどへ各種情報の発信やセミナー講師に従事。日経CNBC「朝エクスプレス」為替電話リポートに出演のほか、金融情報サイトなどへの情報提供などでも活躍している。
株探ニュース