為替週間見通し:ドルは底堅い展開か、米中合意期待で円売り継続も
【先週の概況】
■ドル強含み、米中貿易協議進展への期待高まる
先週のドル・円は強含み。中国の国家統計局が発表した3月製造業PMIと民間機関調査の3月財新製造業PMIは経済活動の拡大・縮小の境目である50を回復したことや、米中貿易協議のさらなる進展が期待されたことがドル・円相場を下支えした。世界経済の減速懸念はある程度緩和されたことから、リスク回避目的のドル売りポジションの解消にともなうドル買いも観測された。英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)が「米中は通商巡り最終合意に近づいている」と報じたことや、トランプ米大統領が4週間程度で中国との交渉をまとめ、合意を目指す考えを示したこともドル買い・円売りを促したようだ。
5日のニューヨーク外為市場でドル・円は一時111円58銭まで下落後、111円82銭まで反発。この日発表された3月米雇用統計で非農業部門雇用者数は、市場予想を上回る伸びを記録したことから、ドル買いが優勢となった。トランプ米大統領が「米連邦準備制度理事会(FRB)は利下げや量的緩和(QE)を講じるべき」との見解を示したため、ドルは111円台後半で上げ渋ったが、111円70銭でこの週の取引を終えた。ドル・円の取引レンジ:110円80銭-111円82銭。
【今週の見通し】
■ドルは底堅い展開か、米中合意期待で円売り継続も
今週のドル・円は底堅い展開か。世界的な景気減速への懸念は多少和らいでおり、目先的にリスク回避的なドル売り・円買いはやや縮小する見込み。米連邦準備制度理事会(FRB)の慎重姿勢が示されても、リスク選好的な円売りがただちに縮小する可能性は低いと予想される。
直近発表の中国関連の経済指標はまずまず良好だったことから、同国の景気減速懸念は後退しており、ドル・円相場はドル高方向に振れやすい見通し。今週は中国の3月消費者物価指数(CPI)と3月生産者物価指数(PPI)、3月貿易収支が発表される。これらの経済指標が市場予想を大きく下回ることがなければ、リスク選好的なドル買い・円売りは継続する見込み。また、先週から再開された閣僚級の米中貿易協議で、トランプ政権は最終的な合意を模索しており、期待感による円売りも見込まれる。
3月の米雇用統計内容は改善したが、最近発表された米国の経済指標は強弱まちまちであり、10日発表予定の3月消費者物価指数でインフレ率が鈍化した場合、金利先高観のさらなる後退が予想される。同日は米連邦公開市場委員会(FOMC)の議事要旨(3月開催分)も公表される。金利引き上げについてFOMCメンバーから慎重な意見が多く出ていた場合、年内利上げなしの可能性は高まり、リスク選好的なドル買いが増える可能性は低いと思われる。
【米・3月消費者物価コア指数(CPI)】(10日発表予定)
10日発表の3月消費者物価コア指数(コアCPI)は前年比+2.1%と予想されており、物価上昇率は2月実績と同水準になる公算。米金融当局はハト派的な政策スタンスを示しており、想定通りならドル買いは限定的となろう。
【米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨】(10日公表予定)
10日(日本時間11日午前3時)公表予定の連邦公開市場委員会(FOMC)の議事要旨(3月19-20日)は、ハト派姿勢の度合いが注目される。金利引き上げについて極めて慎重であることが判明した場合、長期金利は低下し、ドル売りを誘発しよう。
予想レンジ:110円50銭-113円00銭
《FA》
提供:フィスコ