サウジアラビアはなぜ減産ができるのか?~もっと知りたい商品先物取引

市況
2019年5月14日 16時55分

みなさんこんにちは!フィスコマーケットレポーターの高井ひろえです。今回は原油相場を見ていく上で欠かせない存在、サウジアラビアの原油減産について説明していきたいと思います。そもそもサウジアラビアの減産は1国だけの問題ではなく、世界最大のカルテルと呼ばれるOPEC(石油輸出国機構)、そしてOPECに属さないロシアをはじめとする産油国が調整して世界全体の原油の生産量を減らすことを目的としています。仕組みとしては各国に減産枠を設定し、市場に流通する原油量を調整することで原油価格の引き上げを目指します。なお、サウジアラビアは1日あたり原油の生産量が世界2位の原油大国です(2017年)。そして原油の協調減産に参加しているOPEC加盟11か国のうちの1つでもあります。特にサウジアラビアは生産量が多く原油価格に与える影響も大きいので、同国がどの程度減産を推し進めるかはいつも注目されています。

■サウジアラビア、なぜ減産できているの?

そんなサウジアラビアですが、減産をすることによるデメリットも大きいです。生産量を減らせばその分だけ米国にシェアを奪われてしまいますし、外貨獲得の機会を逃すことになるからです。そのため減産の決断をするのは容易ではないはずなのですが、なぜ推し進めることができているのでしょうか?

■発電用に使う原油を減らし、輸出にまわしていた!

この疑問に答える1つの回答として、「なるべくたくさんの原油を輸出しようと調整している」ということが挙げられます。つまり生産した原油をなるべく国内で使わず、海外に輸出することで外貨を獲得しようとしているのです。原油を国内で使ったとしても外貨は獲得できません。そのため、サウジアラビアでは特に発電用の原油利用を極端に減らしています。サウジアラビアは2018年、発電設備で平均日量40万バレルの原油を直接燃焼させて発電を行っていましたが、2009年以来で最も少ない量となっています(出所:Joint Organizations Data Initiative)。原油のかわりに天然ガスや重油、他のエネルギー源を使うことによって、原油による発電を意図的に減らそうとしているのです。一方で、とてもタイミングの良いことに船舶の燃料として使われる高硫黄重油は、環境規制を受けるため需要が減少する見通しです。そのため重油の需要が減少し、サウジアラビアは安い価格で発電用の重油を調達することができる見込みです。

「減産を決定した」というような結果だけを見るととても簡単に減産に踏み切っているように見えますが、実行できている裏側にはこのような事情があったのですね。

フィスコマーケットレポーター 高井ひろえ

《HT》

提供:フィスコ

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