来週の相場で注目すべき3つのポイント:日米首脳会談共同記者会見、中国PMI、米1-3月期GDP改定値
■株式相場見通し
予想レンジ:上限21500-下限20750円
来週の日経平均は引き続き21000円レベルでの攻防が展開されそうだ。米中貿易摩擦の長期化が懸念されるなかで、米国による中国の通信機器大手・華為技術(ファーウェイ)排除の動きが相場の悪材料として作用している。政治レベルの貿易協議と異なり、ファーウェイ問題は半導体企業などにより直接的な収益への影響を与えてくることが警戒されている。さらに、欧米の景況感悪化、原油相場の大幅下落、メイ英首相辞任などの欧州政治リスク、日米貿易交渉の本格化と懸念材料が相次いでおり、日経平均の上値を一段と重くしている。テクニカル的に見ても、日経平均は75日移動平均線が上値を抑え込み、24日にかけて2日連続で5日移動平均線を割り込んだことで、下振れリスクを警戒する形となっている。こうしたことから、日経平均の積極的な上値追いへの期待値は低いと言える。また、地合いが良くないだけに、30日の米1-3月期GDP改定値、31日の中国5月製造業PMIの発表についても神経質な反応を示す可能性があることから注意が必要だ。一方で、24日に見られたように日経平均は21000円割れ水準では押し目買いを呼び込んで下値の堅さも意識されている。中国の上海総合指数も一段安で3000ポイントを割り込んだ5月6日以降は2900ポイントを挟んだ往来相場を展開して下げ渋っており、支援材料の1つとなっている。
物色的には、29日の実質6月相場入りにより心理面でムードが変わることが期待される。6月は3月決算企業の株主総会の開催月にあたり、会社側からポジティブなニュースが出やすい月でもあることから、個別株物色が盛り上がりやすい傾向がある。このほか、約1カ月ぶり、令和第1号の新規上場(IPO)銘柄としてバルテス<4442>がマザーズに上場することが物色を刺激しそうだ。5月のIPOはこの1社だが、24日発表分までで6月は11銘柄が上場する予定となっている。中小型株の刺激材料となりそうだ。
主な国内経済関連スケジュールは、28日に4月企業向けサービス価格指数、トランプ米大統領帰国、29日に黒田東彦日銀総裁発言、31日に4月失業率・有効求人倍率、4月鉱工業生産、4月商業販売統計、4月新設住宅着工戸数が予定されている。一方、米国など海外経済関連スケジュールでは、27日に米国がメモリアルデー、英国がバンクホリデーでそれぞれ休場。28日に米3月FHFA住宅価格指数、30日に米1-3月期GDP改定値、31日に中国5月製造業PMI、米4月個人所得・個人支出などの発表が予定されている。このほか、トピックスとしては6月1日に中国が米国からの600億ドル相当の輸入品に対する追加関税を最大25%に引き上げる。
■為替市場見通し
来週のドル・円は上げ渋る展開か。欧州議会選の結果や英国政局の流動化を背景に、欧州通貨との比較でドル選好地合いが続く見通し。ただ、通商問題などを巡って米中の対立は続いており、早い時期に妥協点を見出すことは難しいとみられていることから、一部で利下げ観測がくすぶっており、積極的なドル買いは手控えられそうだ。英国、欧州の政治不安が高まっていることは円買い材料となる可能性がある。
メイ英首相は24日、6月7日に党首を辞任すると表明した。次期英首相は欧州連合(EU)からの離脱に対しメイ氏より強硬な路線をとる可能性が高いとみられており、英国は「合意なき離脱」を選択する可能性がある。英議会で合意なき離脱の方針は一度否決されているが、新首相が「合意なき離脱」に突き進む可能性は残されている。この場合、欧州通貨に対する円買いが強まる可能性があり、ドル・円の取引でも円買いが優勢となりそうだ。また、23-26日の欧州議会選で右派勢力が拡大すればユーロ圏の維持が困難との見方が高まりそうだ。欧州の政治不安を意識して欧州通貨に対するドル買いが優勢となる可能性があるが、クロス円取引では円買いが増えるとみられており、この影響でドル・円は上げ渋る可能性がある。
なお、トランプ米政権は中国のファーウェイの取り扱いをめぐり規制を一部緩和したものの、監視カメラで世界シェア首位の中国企業(杭州海康威視数字技術)への禁輸措置を検討していることから、米中対立への懸念は払しょくされていない。新たな制裁措置が導入された場合、リスク回避的なドル売り・円買いは増える可能性があり、ドルの反発を抑えることが予想される。
■来週の注目スケジュール
5月27日(月):中国工業利益、日米首脳会談共同記者会見、米英市場休場など
5月28日(火):国内企業向けサービス価格指数、スイスGDP、米FHFA住宅価格指数、欧首脳会議など
5月29日(水):独失業率、カナダ中銀が政策金利発表など
5月30日(木):対外・対内証券投資、米GDP改定値、米中古住宅販売成約指数など
5月31日(金):国内有効求人倍率、中国PMI、印GDP、米個人所得など
6月1日(土):中国が米国からの輸入品600億ドル相当への関税率を引き上げ
《SK》
提供:フィスコ