馬渕治好氏【日経平均2万1000円回復! 相場は変わったか?】(1) <相場観特集>
―6月相場は好調、米国株の戻り足急でリスクオン再び―
週明け10日の東京市場は日経平均株価が続伸。米国株が急速に切り返しに転じていることを受け、リスク選好の流れが波及している。5月相場は調整色の強い展開を強いられたが、6月相場は一転して買い戻しのタームに入ったようにも見える。もっとも外部環境を見る限り、株価が買われる必然性が担保されているとはいえず、投資家としても気迷う場面だ。ここからの相場展開や物色の方向性について、相場の機微に通じたベテラン市場関係者に意見を聞いた。
●「全般は高値圏で下値リスク警戒局面に」
馬渕治好氏(ブーケ・ド・フルーレット 代表)
東京株式市場は、ここ米国株市場が戻り足を強めたことに連動する形で上値を指向しているが、現在は既に目先の高値圏にあり大勢トレンドがここから一段の上昇に向かうとは考えにくい。向こう1ヵ月程度の相場を前提とした場合、上値は2万1000円台前半で頭打ちとなり、下値については依然として2万円大台割れのリスクをはらむと考えている。
日経平均株価は上昇しているが市場参加者の減少は顕著であり、これは日々の出来高にも映し出されている。ひとことで言えば物色意欲の乏しい相場で、実需買いの動きとは離れた先物主導の値動きに終始している。目先は米国のメキシコに対する追加関税見送りが買いの根拠に挙げられているが、これは足もとの不安材料が一つ緩和されただけに過ぎず、継続的に全体相場を浮揚させるような材料ではない。もう一つの買い材料である米国の利下げ観測についても、裏を返せば米景気の失速を示唆するものであり、これを“いいとこ取り”で好材料視するのは危うさを感じる。おそらく、米国市場も自律反発の域を出ていない。
特に今回、FRBの利下げ観測を引き出したのは、発表された5月の米雇用統計で非農業部門の雇用者数が市場コンセンサスを大きく下回ったことだ。これまで米国経済は「個人消費が強いから大丈夫」というのが強気派の主張だったが、今回の統計はその個人消費の強さに対し懐疑を生じさせる背景として十分であり、利下げ思惑がイコール中期的株高の根拠となるほど話は簡単ではない。
では、日本国内はどうか。これまで延期されるとの見方も根強く残っていた秋の消費税引き上げは実施される方向がほぼ固まり、これが全体相場にとっては重荷となる。外国人投資家の日本株売り姿勢が継続しているが、消費増税延期の可能性がほぼついえたことはリセッションのリスクを高め、今後も日本株を買う拠りどころが失われることにもつながる。以上の背景から、今は下値リスクに身構えるべき局面といえる。
(聞き手・中村潤一)
<プロフィール>(まぶち・はるよし)
1981年東京大学理学部数学科卒、1988年米MIT修士課程修了。米国CFA(証券アナリスト)。マスコミ出演は多数。最新の書籍は「投資の鉄人」(共著、日本経済新聞出版社)。日本経済新聞夕刊のコラム「十字路」の執筆陣のひとり。
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