富田隆弥の【CHART CLUB】 「戻り鈍い日本株」

市況
2019年6月15日 10時00分

◆6月になり戻りに転じた株式市場だが、日本株の戻りが鈍い。4月高値から6月序盤安値までの下げに対してNYダウは77%、ナスダックは70%戻したのに対し、 日経平均株価の戻りは46%にとどまる。為替(ドル円)の戻りは21%(107.82円→108.80円)とさらに鈍く、「円安」の鈍さが日本株の足かせになっているとも言える。

◆では「円安」を鈍らせている背景は何か。考えられる要因は、(1)同時株安、地政学リスクに伴う「リスク回避」、(2)投機筋ポジションの「円」買い戻し、の二つだろう。

◆米国株の戻りは堅調に映るが、世界のマネーが集中する「FANG+指数(注)」を見ると、6月の戻りは37%にとどまる。さらに厳しいのは中国・上海株で、4月から6月にかけ14%近く下落し(3288→2822ポイント)、いまなお2900ポイント近辺でもたついており、チャートは戻りに転じてもいない。

◆こうした状況ではリスク回避も否めず、関心が高まる今月28日の大阪G20サミットに合わせた「米中首脳会談」までは動けないということか。

◆為替市場(ドル円)の投機筋ポジションでは、「円売り」がいまなお4万4000枚(6月4日現在)滞留する。5月の10万枚台から円売りポジションを減らしているものの、さらなる買い戻しの余地があり、それが円安進行を阻む可能性がある。

◆このほか、日本株の戻りを鈍らせる要因には、10月からの消費税引き上げもあるが、目先的には6月14日の「メジャーSQ」が意識された点も挙げられる。3月のSQ値が2万1348円で、それを6月SQ前に日経平均先物が意識した可能性もある。その意味では、SQ明けとなる17日以降の相場が一つ焦点になろう。

◆最後に注目すべきは、やはりチャートだ。日経平均株価(13日終値2万1032円)の日足は25日移動平均線(2万1039円)水準に戻したものの、一目均衡表遅行線の「雲」上(2万1349円)や5月20日高値2万1430円に届かず、移動平均線の75日線(2万1449円)や200日線(2万1703円)のまだ下方にある。これでは「好転」には程遠く、チャートはまだ「下げ基調」と判断される。

◆年金買いや売り方の買い戻しなどで日経平均株価が上昇しても、個別株で動くのは一部の値がさ株や主力株のみ。騰落レシオ(13日96%)は100%を回復できず、信用買い残の評価損率は-15%台が続くなど、個別株の多くは厳しい状況にある。日経平均株価が米国並みに大きく戻すなら個別株にも買いの勢いが出てくるだろうが、チャートはまだそれを期待できる状況になく、「セル・イン・メイ(5月に株を売れ)」の過程と言える。個別株は短期売買に徹し、本格的な買いは時を待ちたい。

注)「FANG+」:米国のIT大手4社のフェイスブック、アマゾン・ドット・コム、ネットフリックス、グーグル(アルファベット)の「FANG」4社に、アップル、アリババ集団、バイドゥ、エヌビディア、テスラ、ツイッターの6社を加えた10社を指す呼称。

(6月13日 記、毎週土曜日10時に更新

情報提供:富田隆弥のチャートクラブ

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