伊藤智洋が読む「日米株式市場、転機を迎えるか?年後半相場の行方」
●NYダウ、21日の高値が本年の最高値か
6月20日のFOMC(連邦公開市場委員会)は、「今回は金利据え置きだが、不確実性の増大などに対応するため、年内に最大0.5%ポイントの利下げが実施される可能性がある」という内容でした。
6月初めのパウエル議長の利下げ発言以降、 NYダウは一気に上げ幅を拡大しました。今回、緩和方針を再確認したことで、20日のNYダウは今年4月につけた戻り高値2万6695ドルを突破しています。
1年間が全体で陰線引けする年(年初よりも年末の値位置が低い年)は、5月までに年間の最高値をつけて、下降を開始する傾向があります。
上昇する理由があって、強気の年にあらわれる値動きとなったため、今後も、株価は上値を試す流れを継続するのではないかと考えたくなる場面です。しかし、FRB(連邦準備制度理事会)の政策変更により、本年が1年を通じて強気だと考えるのは時期尚早です。
トランプ大統領の就任後、減税、歳出拡大、規制緩和などの政策が十分に効力を発揮し、株価を大幅に押し上げてきました。
19年度は、その効力が最大限に生かされている状況です。景気減速の兆しがあるものの、目先、好調さを維持している状況だからこそ、FRBの緩和方針への変更が目先的に市場参加者の積極性を後押ししているのだと考えられます。
20年度は財政面での材料が出尽くし、金融政策も今回の方針変更により、もうやれることがあまりありません。
株価は、現在よりも先の価値が高いと判断できるからこそ上昇します。現在の株価は、すでに先の価値を織り込んでいるのですから、先にある状況が現状継続なら、その市場には現在の高値以上を積極的に狙う買いが入りにくくなります。
投機の対象となっている銘柄は、上下どちらでもよいので一定期間に一定の値幅の動きを作り出す必要があります。上方向へ積極的になりにくい状況が明確なら、当然、株価は上げ幅を期待できる値位置まで下げることになります。
NYダウには、押し目をつけた後の動きとして、戻り高値付近まで一気に上げる傾向があります。戻り高値付近では、その後の価格が上昇するか否かにかかわらず、いったん調整局面(横ばいのジグザグか、下値を試す)へ入ります。
NYダウには、その年の材料が出尽くして、翌年度の政策が意識されることで、7~9月が上げにくい傾向があります。
昨年は、10月に年間の最高値を更新した後、12月に大幅安を経過して、年初の値位置よりも大きく下げて引けています。
16年以降、これまで以上に強い上昇の流れを経過して、一気に史上最高値を更新してきたため、現在は値動きが激しく、例年の目安がおおまかに意識されている程度になってしまっている状況だと推測できます。
6月20日に年間の最高値を更新した動きも、通常なら年末へ向けて強気継続と判断したくなる場面ですが、4月の高値付近が意識されているという程度に見ておいた方が無難だと考えられます。
現在は、当面の上値の限界に位置して、上げにくい時期へ入るので、年末へ向けて堅調に推移する場合でも、7~9月はいったん下値を試す流れになって、上げられる値幅を作る下げ場面があらわれると考えられます。
また、現時点では、本年が年末へ向けて大きく下げる年になる可能性を残しています。反転下降を開始すれば、下げやすい時期に下げ幅を大幅に拡大することは十分に想定の範囲内となります。
21日は足型で上ヒゲの長い陰線をつけて、上値を抑えられています。戻り高値をつける場面でよくみられる足型です。
前述したことを考慮すると、21日の高値(またはその付近)は、本年の最高値になる可能性を考えておく必要があります。
●日経平均、関門となるか21日の「弱気の抱き線」
日経平均株価は、21日の足型で弱気の抱き線という反転下降サインをつけています。
本年が年末へ向けて、1月4日につけた本年の最安値19241円を割れる動きになるなら、(NYダウの値位置と合わせて推測すると)21日の高値は、本年中、超えられない壁になるかもしれません。
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