“電撃上昇相場”再始動へ、国策背景に動き出す「電線地中化」関連株 <株探トップ特集>
―理想買いから現実買いのステージに、国交省が電柱撤去を推進する新制度設立―
防災、景観保護などの観点から、かつて株式市場でも超新星のごとく輝きを放った「電線地中化(無電柱化)」関連株だが、その後は注目度も低下し、もはや忘れられた存在となっていた。しかし、ここにきて政府による電線地中化本格推進の動きが伝わり、これを受けて関連株の一角が急動意するなど、その急騰習性は「どっこい生きている」といった感じだ。地中化の歩みの遅さが、関連株をリング外に押しやっていたが、本格展開が始まりそうな気配で、再びスポットライトを浴びる可能性もありそうだ。理想買いから現実買いのステージへ、電線地中化関連のいまを追った。
●かつての「小池関連」はいま
2016年の夏、激しい東京都知事選挙の末に小池百合子都知事が誕生した。この選挙戦で、小池候補(当時)が減災などの観点から電線地中化の推進を掲げたことで、株式市場では電線株やイトーヨーギョー <5287> [東証2]をはじめとする共同溝などを手がける関連株に一気に注目が集まることになった。更に、翌年の都議選では、その後紆余曲折をみせることになる都民ファーストの会の代表に小池都知事が就任し、同会の政策で「無電柱化推進に向け、区市町村道への財政支援、技術革新によるコスト縮減で総合的な取り組みを推進」としたことから再び電線地中化関連株にスポットライトが当たる。当時、株価面で頭角を現した一つが沖電線(18年3月上場廃止、4月に沖電気工業 <6703> の完全子会社となる)だった。電線地中化では、電線も高付加価値品への代替が見込まれ収益機会が膨らむとの思惑が株価を後押し、加えて都議選が上昇加速の追い風となったことは記憶に新しい。それ以来、電線地中化=小池関連株というイメージが長くつきまとうことになる。しかし、電線地中化工事の遅れなどが伝わるなか、テーマ株としての注目度も低下、小池関連株というイメージも次第に払拭されていくことになった。
それから約2年、電線地中化関連株は影の薄い存在になっていた。しかし、ここにきて政府の本格的な電線地中化に向けての方針が伝わると株価も急動意、投資家の熱い眼差しが再び向けられることになった。理想買いから、そろり現実買いへのステップアップの時が近づいてきている。暗闇の”地中”から、満を持して陽光を浴びる活躍の舞台が待っている。
●新制度報道でイトーヨーギョー急動意
5月27日、国交省が災害時の物資輸送に重要な道路を対象として、電柱撤去を推進するための新たな制度を設けることが報じられ、この流れに乗って電線地中化関連の一角に短期資金が流入した。この報道を受けて、同日にはイトーヨーギョーが一時ストップ高と急伸、ベルテクスコーポレーション <5290> [東証2]も大幅高となり、関連銘柄の”地中化感応度”がいまだ高いことを印象付けることになった。
特に共同溝などを手掛けるイトーヨーギョーは、6月に入って株価は上げ足を速め、初旬には600円台半ばだった株価が900円目前に迫るなど、商い薄とはいえ注目度の高さを見せつけている。電線地中化に向けては、1キロで5億円を超えるといわれる工事費が課題となっており、経費の削減が求められている。こうしたなか、同社は通信ケーブル、電力ケーブルを小型ボックス内に配線することで、施工と管路材のコストを削減する小型ボックス活用方式を手掛けており注目度が高い。また、7月24~26日に開催される「第5回無電柱化推進展」にも出展予定で、狭小空間でも無電柱化を実現する「S.D.BOX」、歩道のない生活道路や通学路で無電柱化を実現する「D.D.BOX Neo」、歩道のある幹線道路などで無電柱化を実現する「D.D.BOX Pleon」を展示する。株価は、急動意のあと調整し700円台中盤でもみ合う展開だ。
●ベルテクスは高値圏を舞う
共同溝といえば、イトーヨーギョーと並びゼニス羽田ホールディングスを思い起こす投資家も多いはず。同社は昨年10月に「ホクコン」と経営統合し「ベルテクスコーポレーション」となり飛躍を目指す。5月中旬に1000円水準だった株価は、電線地中化推進の動きを受けて下値を着実に切り上げている。前週末の21日には、終値こそ小幅安となったが1558円まで買われ新値更新、きょうも高値圏で頑強展開を続けている。
また、タイガースポリマー <4231> も面白い存在だ。同社の地中埋設用ケーブル防護管「タイレックス」は長尺で曲げやすく、電線管布設の省力化・工期短縮を図れるという。出来高も薄く株価もいまひとつ冴えないが、テーマ性もあり目を配っておきたい。その他では、電線工事大手で電線地中化も行う協和エクシオ <1951> にも注目。同社はNTTグループからの受注も多く、通信分野で5Gのインフラ整備が今後進展するなか恩恵を受ける公算が大きい。電線地中化に加え5Gと、旬な切り口の多さが魅力だ。
●古河電工は角型エフレックスで攻勢
当然のことながら、電線関連にも注目が集まる。地中化では、高付加価値品への代替に加え膨大な新規需要の拡大が予想されることから、ここにも活躍のステージが広がっている。古河電気工業 <5801> 、フジクラ <5803> 、古河電工グループで情報・通信ケーブルを扱う東京特殊電線 <5807> といった、いわゆる”電線御三家”にも改めて注目したい。
そのなか古河電工は昨年、地中埋設用ケーブル保護管「エフレックス」シリーズの新たなラインアップとして、「角型エフレックス」5サイズの販売を開始し攻勢をかけている。角型エフレックスは軽量性を継承しつつ、よりコンパクトな配管断面を実現し、掘削量削減、施工費低減を実現する優れものだ。会社側では、電線地中化の進展について「期待感はある。商機を逃すことなく『角型エフレックス』などで貢献していきたい」と話す。同社は18日、昭和電線ホールディングス <5805> と建設・電販市場向け汎用電線事業で業務提携したと発表しており、今後のシナジーにも期待感が高まっている。株価は、5月14日につけた年初来安値2498円を底に上昇波動に乗る。6月19日には直近高値3165円まで買われ、現在は3000円近辺で推移している。
●丸一鋼管は照明ポールに波及効果
電線地中化関連株の主役は、上記のように共同溝や電線そのものだが、主役が輝くなか人気が波及しそうなのが照明ポールメーカーだ。電柱は照明柱としての役割を持っている場合も多く、その姿を徐々に消すなか照明ポールの設置も重要になってくる。ある業界関係者は「ほぼ受注生産で、正直なところ現時点では大きな数字の変化は見られない。ただ、ここからのニーズ拡大には期待している」と言う。
こうしたなか注目したいのが、主に屋外で使用される鋼製ポールを製造・販売を行う丸一鋼管 <5463> だ。同社は、「道路用」、公園・駅前広場や高速道路のサービスエリアなどに使用される「施設用」、道路の交差点で信号や標識も一緒になった「多目的柱」、競技場・港湾施設などで使用される「照明鉄塔」など、幅広いニーズに合わせた製品を手掛けている。株価は底を這う展開で現在は2800円水準で推移。主役の電線地中化が天高く舞えば、波及効果が期待される照明ポール関連も踊り出すかもしれない。
6月11日、政府は「国土強靱化年次計画2019」を公表した。そのなかで「防災・安全交付金(無電柱化推進計画支援事業)の創設及びPFI手法を活用した無電柱化のための国庫債務負担行為の拡充」をするとし、無電柱化を推進する地方自治体に交付金を支給する方針だ。いよいよ本格的に動き出しそうな電線地中化、その需要は膨大でそして息の長いテーマとなる。
株探ニュース